二百三十五生目 騎士
目の前にいるコーシンを尾の1撃で地に伏させた。
「ば、バカな……そんな力が……」
そのまま気絶したらしい。
行動力を節約して動いたから結構スレスレ。
魔法分最初に確保しておいて良かった。
「ニーダレス! こっちを頼む!」
ロイドが私の方をちらりと見つつ別方向に銃を放つ。
もう2体のコーシンだ。
コーシンは機敏に反応し銃弾を避ける。
互いにそこそこの傷は入っているもののリーダーに大きな打点を入れられずソードマンは毒が完全に回る前にと積極的に斬り込んでいる。
武力向上の曲はより力が込められ放たれる銃弾は毎度コーシンたちの攻め好機を潰している。
銃弾という関係上前衛が離れた瞬間しか放て無いが逆にそれが連携になっているらしい。
「このままでは……」
「……もうひとりが来る」
「倒されたのか。愚かな」
かなり苦しそうな声。
正直時間稼ぎとしても早かっただらうしね。
というわけでそろそろトドメだ。
「魔法放て!」
火魔法"フレイムピラー"っ。
ロイドの掛け声に合わせ前衛が引き炎の柱が彼らの足元から突如膨れ上がる。
炎はあっという間に跳んだコーシンたちを飲み込み……
上へ逃れようとしてももはや意味無し。
全て燃え尽くす。
やがて火が収まって落ちてきて……
「ガアア……!」
「なん……だと……」
討伐完了だ。
「あっつ……! なんつー炎だ」
「うおお、鎧から熱が!」
近くにいた面々も熱のあおりを受けてはいるが無事そうだ。
全員生きているしあとは治療を……
「よし、敵は片付いた。ニーダレス、ソードマンさんの治療を――」
「待った。行動力を節約したい。治療にはこいつを使う」
リーダーがそう言って取り出した小袋には粉末が。
あれは代表的な解毒剤だろう。
見た目と違い魔力操作により解毒が促されるために毒の種類を多くは問わないのだとか。
「うう、戦いが終わったら気持ち悪く……」
「飲め、水と同時にだ。粉だけだとむせる」
「うん……」
水瓶と粉袋を渡され一気飲み。
かなり苦そうな顔をしたけれどなんとか飲み干し……
身体から光が溢れ出す。
解毒作用が正常に働いたのだ。
ちなみに副作用と言ってもいいが必ずと言っていいほどに利尿作用がある。
解毒したゴミを処理して出さなきゃいけないからね……
そのためにも水をしっかり飲むことが推薦されていた。
そのことをソードマンさんたちも把握しているらしく水瓶から水をしっかり摂取。
「よし……各々、致命打につながる傷はないか? 私は殴られはしたがこの程度傷にも入らん」
「オレはおかげさまで、他は?」
「ワタクシも隠れていましたからね」
「ボクも、今の傷くらいです」
「ワニャ」
同じく何かヤバい傷があったりはしない。
ロイドが石を持って私に向けると私が収納される。
もはや慣れたものだ。
「それならば、良し。適当に戦利品をむしって進もう」
むしるという言い方は悪いけれど彼らのトゲなんかは貴重な冒険者の収入になるからね……
その後も何度か交戦はしてその都度必要に応じ回復を挟む。
もちろん行動力節約のために休憩もしつつ……
もともと私には回復役ではなく遊撃役を任されていた影響で私がやることはとにかく相手を殴ること。
回復もせず補助も吟遊詩人さんだよりでなんだか新鮮だ。
罠もいくつか見ているが序盤の遺跡で見たものが巧妙化しているだけで誰かが見つけられ壊したり避けたりできた。
「リーダー、その鎧ってこの場を移動するのは困難じゃない……? ボクも鎧の重さや難しさは少しわかる……」
「うん? ああ、この鎧か?」
リーダーの鎧は冒険者としての活動履歴にしてはよく使い込まれている。
さらにいえばその鎧をずっと着込みながら移動している。
お世辞にも軽そうとか涼しそうとか思えないが声色ひとつ変えずここまで歩いてきていた。
「オレ、そんなに着込んだら速攻でバテるぜ」
「ははは、それもそうだろう。そう言えばまだ色々と話していなかったな。私は2足の草鞋を履いていてな、現役で騎士を務めさせてもらっている。まだ雑兵上がりだがな」
「「ええっ!?」」
騎士……! どおりで。
正式な訓練を受けているのならば色々納得だ。
鎧を着込んでいても尽きない体力は訓練と技術の成果か。
「まあ、みなも知っての通り、正直昨今は騎士が表立って活躍する機会はなくてだな、悪党狩りと自主訓練程度では腕が鍛えられん。故にこうして冒険者業も行っているわけだ」
「ははあ……立派な心持ちなことで」
「茶化すな詩人、こう見えてもどっちが副業かハッキリしない程度には、冒険者業に力を注いでいる。どうやら身にあっていたらしい」
「ああ、そのハンマーもすごい威力だしな」
ものすごく重そうだもんなあ装備……




