二百三十四生目 接戦
敵のコーシンたちが誘い込んだ先にある人工罠を破壊。
まだ気配があるな……
さらに少し移動したところにある罠へ火魔法"フレイムボール"っ。
あとのほうで魔法感知やら熱感知やらの魔法が次々発動し連鎖的に罠が壊れていく。
よしよし……目ぼしいものは自壊したかな。
なんだか爆発音も聴こえるがどんな罠に引き込もうとしたのだ。
「ちょ、な……どんだけだよ!」
「この罠に足を踏み入れていたら、全滅でした……」
「奴らめ、許さん!」
「いましたよ、ココで仕留めましょう!」
吟遊詩人さんが激しい曲調を吹き私達は力が湧いてくる。
コーシンの数は2……いや3。
おそらくここが相手の最終決戦地。
罠をめちゃくちゃに破壊されイラつきが抑えられないという顔をしている。
つまり私にめちゃくちゃ敵愾心たまっていると……
「殺す」
3体の腕が振るわれる。
たくさんのトゲが一気に飛来してきた。
これはさすがに数が多い……!
「フンッ」
リーダーが割り込んでトゲをその身に受ける。
殆どのトゲは鎧に弾かれ一部のトゲも深くなく鎧の可動部分に挟まっただけ。
いわゆる受け方というのがあるんだろうね。
かなり嫌そうな顔をコーシンたちがした。
周囲に散らばりこちらを囲もうとすれば対抗してさらにコーシンたちをこちらが追いかける。
3体と5体なのでこのようになるのはある意味必然だ。
「だめか……」
「どうする」
「そろそろアイツに通るはずだ」
む……もしかして。
ソードマンさんをちらりと見たら急激に顔色が悪化し戦えそうではあるが苦しそうな表情を見せた。
毒が回ったか。
「くうっ、あの棘、毒が盛られています……!」
「何、大丈夫か!?」
「ええ今は……先に倒さなくては何度治してもまたわずかに触れただけで毒をもらってしまいます」
ソードマンさんの生命力が目に見えて減っていっている。
ただ時間的猶予はまだある。
出来得る限り素早く状況を終わらせる必要がある。
最大の攻撃はほぼ封じたようなものだ。
先程からトゲを投げつけて来るがみんな一層警戒して大幅に避けたり確実に弾くためまるで意味がない。
そこまでして時間的有利を作ろうとしても2対1で迫られどちらかが踏み込む。
浅いながらもコーシンたちの傷は無視できる範囲では無くなっていた。
「どうする……」
「なれば、我らも覚悟を決めるまで」
「御意」
3体散っていたのが今度はまとまった。
私達もコーシンの前に並ぶ。
会話的に得意なアウトレンジを捨ててインファイトに切り替えるのか。
今までとは違ってトゲをたくさん前足にはさみ持ち同時に攻め込んでくる。
投げるのではなく腕を後ろに回しながらの急接近。
「仕掛けてくるぞ!」
「ニーダレス、攻撃魔法の準備をしつつ接近戦に応えろ!」
「ナウナウ!」
この状況ならあの魔法だな……
近くで殴り込むコーシンに一気に接近。
リーダーより前に出て正面1体の敵愾心を急速に高めた。
相手が腕を振るう直前でブレーキをかけ止まってから横に跳ぶ。
つられてその1体も跳び……
「他はこっちだ!」
リーダーたちが他2体に合流してぶつかる。
むこうは前衛数が同じで総数は勝っているので放置で大丈夫。
だから私は……
「舐められたものだな」
「ガウッ」
こちらにリーダーが来ないと踏んで私にはトゲを投げつける。
そのまま急速接近。
私はトゲをあえてスレスレに避ける。
トゲが私の身体をいくつかカスっていく。
普通なら猛毒ものだが……
私にはこのぐらいならば効かない。
さっき"観察"したときに毒の脅威なかったし。
「馬鹿め……それほど喰らえば……何……? なぜ平然と動いている?」
「ワウワウ」
まあ毒が効かない方だからね。
ただこの状態だとおそらく少し強いと駄目だけれど。
この相手くらいなら平気。
そんなこと言っている間に最接近。
素早い頭突きからの右前足。
やはり元々インファイトが得意では無いらしくキレイに攻撃が入る。
「ぐっ!? なんなんだ、その力は……!」
腕を振り回し鋭いトゲを爪代わりにして振り回すが光の使い方がやはり甘い。
飛翔用に光の調整がしてあってなんというか今から攻撃しますよーっと宣言しているのに等しい帯び方している。
もっと接近時は爆発的にになおかつリーチを伸ばすようにきらめかせなくては。
後ろに避けたあとに最接近しつつ両前足で爪を振るい胸のトゲを避けて裂く。
さらにその場で縦回転跳びし針を出しながら回ってトドメに尾の大上段!
「ウガッ!?」
ガリガリと針が引裂き強烈な筋肉の塊を頭に食らうわけで。
相手は大きく床へと倒された。