二百三十三生目 毒刃
空から何かが飛来してソードマンがギリギリよけた。
早速前方に影が回り込む。
「これは、トゲ?」
「敵襲っ、来るぞ!」
全員武器を取り出し目の前の魔物に注目する。
敵はまるで森の中に潜む暗殺者のような姿をしていた。
全身を覆う毛皮は大きく毛が伸びて顔もフードみたいに覆い隠す。
背からなびく長い毛と胸に生えるトゲがちらつく。
低い姿勢で前足を浮かし手のようにしてトゲをちぎる。
そのままみがまえていた。
"観察"だ!
[コーシン Lv.18 異常化攻撃:とくになし 危険行動:連続毒針]
[コーシン 木々の間を巧みに駆けて獲物をこっそりと撃つ。毒に倒れた獲物を森の闇に引き込みトドメを刺す]
おー毒だ。
私には効かないけれど。
みんなには危険だ。
話せないのがもどかしいし書いている時間はない。
「よし、出てくるんだ! ニーダレス!」
「マウッ」
私が石から喚び出され形を成して大地へ降りる。
よし。
ソードマンさんはトゲが掠った頬の部分をなんだか気にしている。
毒に気がついたか……?
「行くぞ魔物ども!」
姿はうまく見えないようにされているがどうやら山猫に近い魔物らしい。
少なくとも正面に1……背後上空に1。
リーダーは真正面に突っ込んで行く。
投げられたトゲを腕の鎧を振って弾き……
正面衝突しそうになった時に一気に後ろへ跳ぶ。
なるほど直接対決が苦手なタイプ。
ハンマーの振りかぶりを途中で止めて深追いせずリーダーは隊列に戻る。
ほぼ同時期にさらなる上空からトゲが投げられる。
私やロイドそれにソードマンやら吟遊詩人と雨のように降るトゲが襲いかかる。
「おおお、演奏している余裕が!」
「なんだかこのトゲ、違和感が……」
「くそっ、上かっ? 守ってくれニーダレス!」
吟遊詩人が踊るように避けつつ木々の間に隠れソードマンが華麗に長剣によって弾く。
ロイドに降るトゲは私が土魔法"ストーンウォール"壁を作りそこの影に隠れてもらった。
ロイドは銃を持ち空の方へ目を向ける。
私は影の中で赤く輝く瞳を見つけた。
あんなに同化しているとは……
「ガウッ」
「ニーダレス、あそこか!?」
私が首を向けた先にロイドが銃を向ける。
敵のコーシンも殺気を感じたのかすぐにその場から跳ぶ。
ただそのおかげで同化していた姿が見えた。
「今から演奏を! スウゥー……」
「あそこだ、撃ち落として!」
「おらっ!」
ロイドが放った弾丸はわずかな偏差射撃により銃弾がカスる。
衝撃によって木々の間を落ちて……
派手な音を立てて着地した。
「ちいっ……」
初めて喋りらしき喋りをした……
もちろん皆には何を言ったのかは聞こえていないだろうけれど今のはものがものだからなんとなく伝わっただろう。
正面の相手はトゲを連続で投げるもののリーダーが的確にはたき落としている。
正直鎧相手には打点がない。
「ハハハッ、どうした、遠距離ではお前の勝ち目はないぞ!」
「飛び道具1……何らかの強化1……前衛2と遊撃1……」
冷静にこちらを見極めている。
連続でのトゲは1番脅威だからこそ何かを仕掛けるかもしれないか。
すると突如後ろへ向いて逃げ出した。
落ちた相手も同じ方向へと地上を駆けていく。
「待て!」
「離れて何かを仕掛けるつもりかな……魔法を用意されるかも」
「この鬱蒼とした場所で再度隠れられるのは、避けたいところですね」
「行くぞ!」
これは不安だ。
明らかに誘われているが戦闘の興奮でみんな気づかない。
みんなが駆ける先頭へ私が走る。
相手の速度が明らかに遅い……
もっと跳ぶように移動していたはずだ。
余裕で追えてしまう。
だからこそやはり言える。
コレは罠だ。
どこだ……どこから仕掛ける?
進んでいく間にどんどん深みにたどり着いてくる。
これは……くるな。
露骨に足場が悪くなり全員必死についてきている。
私は急に止まってリーダーたちに停止を促す。
「召喚獣が止まった!」
リーダーが気づき腕で後続を制する。
その間に私はあえて前方に駆け……
あったピンと張ったロープ!
そう明らかに人工物。
忘れてはいけないここは遺跡で……
彼らのテリトリーだ。
「マウ」
「よし、奴らの企みを破壊するんだ!」
ロイドから行動力が送られた。
まずは爪でロープを切り裂き……
真正面から飛んでくる石柱。
ロープに縛り付けられていたものだ。
回避能力を駆使して真横に避けたあとにここにあるトラバサミを避ける。
スイッチに素早く前足出攻撃すれば大丈夫。
さらに同時発動する矢筒たちが矢をこちらに放ち……
捕まってなければ単純な罠だから普通に跳んで避ける。