二百三十二生目 遺跡
もはや誰も手入れしない庭はついには建物を草花で飲み込んで。
それでも飽き足らず1つの2つと隣まで飲み込んで行き。
そうして最後は町を飲み込んでここは遺跡と呼ばれようになった。
昔の町は特に高い外壁に密集した土地という形が多いため月日が経つと様々な経年劣化によりまるで1つの建造物みたいになる。
まともな調査を阻む空間になり……
現代では考えられないような高能力な品や歴史的価値のある物品がまだまだある。
そして今回は新たに見つかった場所の探索だ。
「意外に中はキレイだな」
「それもそうだ。入り口付近はすでに先駆者たちが散々踏み入っているからな」
「ここらへんにめぼしいものは何もありませんからね、どんどん進みましょうか」
遺跡の中は今まで見たどの雰囲気とも違う建物だった。
確かに一見すると単なる古臭さを感じるけれど根が張り草が覆って色々突き抜けた跡があってもまるでその堅牢さを崩そうとはしていない。
ぶっちゃけ現代のロイド達がいる町の建物たちのがなんとなく不安にさせる造りだ。
小石すら蹴り飛ばされ通り道が完全に確保されているここらへんでつまずく理由もなく……
魔物の気配があるまでどんどんと進むこととなった。
しばらく進んでいくとちょっとした廊下らしき場所についた。
他と同じようにロイドたちが進もうときて吟遊詩人さんが何かを見つけ歩みを止める。
あれは……看板?
「おや、これは……」
「何だ? 看板が設置されているのか。草の中に埋もれていたな」
リーダーが適当に草をかき分けて看板を掘り出す。
書いてあることは……
[危険 罠の設置 この先復活性落下穴あり。回避のために斥候役が先行し、仕掛け解除のスイッチを押せば、約1分落下しない]
書いてある文面と署名からしてどうやら冒険者ギルド公式文のようだ。
信頼度は高いだろう。
「なるほど、斥候はこのチームで言うと……」
「ワタクシですかね? できなくはないと言ったところなのですが」
うーん少し不安だ。
吟遊詩人さんは確かにこのメンツで圧倒的に要領がいい。
食事だって作れる。
しかし見た目からして小太りかつ武装が貧弱。
ぶっちゃけ代用斥候ではない。
代わりがいないから全身鎧やら剣1本持ちやら大きな銃持ちよりはなんとなくできそうというだけ。
それなら……
私はロイドに気づくように石を揺らす。
ベルトについているため振動にはすぐ気づいたようだ。
石を手に取り私を出す。
「なんだ? 呼んだみたいだが」
「マウ」
"絶対感知"や"見透す眼"はないけれど音やにおいで十二分わかる。
ロイドの返事を聞く前にとっとこ駆け出す。
壁は土や草そして根があるため別に今の能力でも楽に駆けられる。
コツはちゃんとトゲをだして刺すこと。
落とし穴は床を踏まなきゃ良いのだ。
「えっ」
「なんと、壁を!」
「召喚獣ならたしかに、最悪の事態になっても死者は出ないから自ら行くとは……」
「おーい、大丈夫そうかー!?」
ロイドが腕を振るってこちらに呼びかけてくる。
ちゃんと安全な場所に着地したあと尾を振って返した。
スイッチはこの草むらの中にあるものか。
ガチャリと鳴るまで一部せり出した壁を押し込む。
するとどこからともなく重々しい音が響いてまるで鍵がかかるかのような音も続く。
どうやら仕掛けが止まったらしい。
「……よし。今の音はどうやら罠解除らしい。床の感覚が変わった」
「すごい!」
「いやはや助かりましたよ、これで安心して渡れますね」
「いやまあオレが言うのもなんだが……ニーダレスなんでも出来るな」
ロイドがニコニコとしている。
ハイ。器用貧乏の自覚はあります。
その後も私が少しずつ斥候をしつつ進んでいく。
今回の目的が目的だから基本的に魔物は見かけても相手にしない。
疲れるが行動力消費は薄い全力逃走もやったりして……
やっと目的の地点までたどり着く。
ここは他と違って明らかに鬱蒼とした草木が生い茂っていた。
入り口をリーダーがチェックしなければメンバーは誰も気づかずに通り過ぎてしまいかねないほど。
「ここから先は気をつけて進むぞ。先程のような警告看板も置かれてなどはいない」
「どのタイミングで罠があるかわからないのが危険ですね……召喚獣は出し続けることはできないのですよね?」
「ああ。それだけでオレが疲れてしまう。さすがに効率が悪いだろう。石は持っていつでも出せるようにはしておく」
「静かに行きましょう、なんだか魔の気配が濃くなりました……」
私の石をロイドが持つ。
各々武器に手をかけて警戒心を高めながら進み……
ゆっくりと鬱蒼としてあるき辛い場所を移動していく。
うん……さっそく来たな。
「うわっ!?」
突然何かが空から飛来してきてソードマンの頭をカスる。
いい反応だ。




