二百二十九生目 小鬼
ロイドが自己紹介をしている。
そしていきなり2つ名魔物を倒したことを明かした。
「ぎ、[虐殺]を!?」
「上位冒険者たちが狩ったのかと思っていたのですが……!」
「何人でだい……?」
「お、落ち着いてくれ」
3人共に詰められてロイドは慌てて手で制する。
なんとか落ち着かせてひと息つけて。
「ごめん、あの[虐殺]は僕らじゃ敵わないかもしれないほどにつよかったと聞き及んでいたから……まさか討伐隊のひとりが僕らくらいのランクだっただなんて」
「まあ……あんまり信じては貰えないかもだけどよ、討伐に向かったのはふたり。オレと……コイツだ」
「ふたり……? それにその石は何なのだろうか?」
リーダーさんが首をかしげるのも無理はない。
ロイドが見せたのはよく言ってきれいな石でしかない。
まあ私の閉じ込められた石なんだが。
「ほほう、アレは封魂石ですな」
「知っているのか」
「少しだけ……召喚術師が召喚獣を喚び出すのに使う石だというのは」
「そうだ。コレはソードマンさんが持つ封印剣のようにオレがたまたま喚び出せたとびっきりの相棒が詰まっている。オレ自身はそうでもないが、コイツは[虐殺]とタメをはる実力がある」
あれは結構相性で勝っていたからなあ……
そんな気はしらず周りからは歓声が上がった。
どうしようか弱点の水中があったりしたら……
「もし、そこまで凄いやつらが参加してくれるっていうのなら、ウチラは歓迎するよ」
「もちろん、こっちもひとりでは遺跡にいけなくて困ってたんだ」
「交渉成立ですな」
なんとか話がまとまったようだ。
男装麗人のソードマンもこくこくと頷いている。
さあ依頼を受けよう……
遺跡までは1日をかけての移動となった。
それまでは出来得る限り騎鳥車……つまりカルクックという大型の馬みたいな役割を果たす魔物が引く車で進んだ。
人数が多い移動はこっちのほうがレンタル代はお得だし疲れにくい。
たまに出てくる魔物を追い払うのだけが大事な役割だ。
「そっちへ行ったぞ!」
「まかせてっ」
ガシャガシャと音を立てて走る全身鎧姿のニンゲン。
それこそはリーダーそのものだった。
追い立てている魔物は偶然出会って戦闘態勢に入ったまるで老人のような子供。
しかしその手には粗悪ながらナイフが握られており目は人というより獣の大きな色彩になっている。
とうぜんニンゲンではない。
ゴブリンと呼ばれる魔物だ。
2足で必死に駆けるゴブリンは1体だけではない。
5体もいたためかなり大変。
だが待ち受けるソードマンは静かに剣を構える。
鞘から出した剣は光に照らされて刀身が白く輝く。
何かの紋様が描かれていて確かに単なるロングソードではない。
輝きをたくわえたまま……
光と共に駆け出す。
数歩でゴブリンと邂逅し……
剣を振るう。
それは剣の長身を生かしたまるで流れる様な太刀筋。
横に振り抜かれたそれは……
身構えたゴブリンのナイフごと捉える。
僅かな時が振り抜かれた刃に残され。
ナイフは真っ二つになった。
そのまま大きく斬り裂かれて吹き飛ぶ。
「ケエェー!?」
「あ、アイツ強いっ」
他のゴブリンたちが気づいてももうすでに連続切りの体勢。
2体目に振り下ろされた刃は今度こそゴブリンがナイフで受け止める。
ナイフごと斬る全力の斬撃後なので先程よりは威力が落ちるものの多少でしかない。
まともな鍔迫り合いはさせてもらえず流れるようにさらなる振り下ろしが入りゴブリンは交代するのみだ。
さらに遠くから笛の音が聞こえる。
ヒゲさんの杖は……横笛だった。
戦いが始まってからしゃべることすらなく横笛を必死に吹き続けている。
時折笛の証である石の部分が光るためちゃんとこれも魔法なのがわかった。
先程のソードマンによる力はこの歌によりもたらせれているのだ。
ソードマンの剣による技術はまだ未解放。
ここで使っていたら体力がもったいない。
だがとうぜん残り3体が手持ちぶたさになり……
囲んでソードマンを襲うことに決めたらしく動き出す……
ところに銃弾が1体身体を貫く。
「ケヒィ!?」
「忘れてもらっちゃ困るぜ」
煙が上がるライフル銃を構えるのはロイド。
というかロイドはアイアンサイト……つまり最初からついているのぞきこみ穴から変える気はないのだろうか。
ライフル銃の飛距離がまったく活かせない位置からしか当てられないのだが。
飛び道具と見て残り2体にも動揺が走る。
向こうは別に軍事訓練は受けていない。
さらにいえば下手にかしこい。
だから先に潰す方を決めてこちらに走り込んできた。




