二百二十八生目 組合
召喚獣として分神により戦う日々。
そして。
「ロイドさん、本日付であなたに遺跡探査の許可が降りました」
「やったっ……!」
ロイドがぐっど拳を固め脚に力をためる。
冒険者稼業としての本番が始まったのだ。
私は色々とんでしまったためこういう手順は踏んでいないんだけれどね。
今解禁された遺跡探査というのは冒険者たちに許諾されたたくさんの遺跡たちを調べられるというものらしい。
特に遺跡への依頼があると割と冒険者たちが食いつきやすい。
迷宮と違って外界にあるため安全圏に逃げやすいのと比較的安全な内部になっている。
ただし人工の罠や時折危険な未探索区域が見つかりどちらが危険かは完全には言い切れない。
まあ遺跡ってどうしても探索済み区域が多くなりがちで儲け具合が低いのもある。
ただロイドが探した依頼は……
「これは……遺跡危険区域? 緊急探索?」
あれは……少し行った先にある遺跡で新たな区域が見つかったらしい。
迷宮ほどではないけれど魔物が住み着いたり仕掛けの関係で何か時空がおかしくなるときがある。
今回みたいに完全な新しい場所がたまたま見つかることがある。
依頼の難易度も低いらしく私達が行くのにちょうど良い。
難易度が低いと当然報酬は低めでわざわざ高ランクの者が取ってしまうことはほとんどない。
というか高ランクだとそんなことせず迷宮にこもる準備をしだす。
「これ、受けるぜ」
「ああー……わかりましたけれど、これはかなり気をつけたほうがよろしいですよ?」
「……そうなのか?」
明らかに困った顔をギルド員さんが見せる。
そう言えばあの掲示……
貼られた日よりも少し過ぎていたような。
「すでに何人か送り出してはいますが、毎度数を減らしています。みな様々な恐ろしい目にあっているそうで、少なくとも単独探索はオススメしておりません……」
「だとしたら、チームを組まなきゃが……」
基本冒険者たちはチームを組む。
ロイドはそこらへんでの狩りをしていたためわざわざ組むことが無い。
ただここからか本格的な戦いになる。
冒険者として多くのものと組む練習は必須だろう。
ロイドがいったん受付を離れて机までフラフラ歩いて行き……
周りを見渡す。
すでに何名もの冒険者たちが各々の輪を作って作戦を詰めている。
ロイドはそのうちの1チームに近づいた。
「やっぱこのメンバーで遺跡突入は――」
「ですが我々には――」
「いやいや、そこまで頼られても僕は――」
「失礼、ここのチームはあの遺跡探査でよろしいかな?」
ロイドが声をかけたことで議論が止む。
突然の来訪者に一瞬怪訝な視線が投げかけられるが……
すぐに合点がいったらしい。
「……そうだ、私達は今、緊急調査が要されている遺跡への冒険をしようとしているのだが、見てのとおりでな」
リーダーらしき女性が肩をすくめる。
武具は何も身につけていないが今は外しているのだろうか。
「3人では、という話でしたよね? 4人なら、どうでしょうか?」
いかにもうさんくさそうな背が小さく小太りな男。
ヒゲを触る手付きまで怪しいがそれとは対称的に口調が穏やか。
着込み方を見るに魔法がメインなのだろうか。
「良かった、コレで僕の負担がだいぶ減るや……」
男装の麗人と言えるようなキリッとしたただずまいと顔つきに反してやや弱腰の女性。
鞘に収まっている長剣は持ち主にふさわしくスラリと長くそして美しさがある。
悪く言えば全員冒険者としての泥臭さがまだまだ少なく感じられた。
「おい、まだチーム加入を求めてかはわかっていないんだ、早とちりしすぎだ」
「それもそうかぁ……」
「ほほほ、そもそも互いの力量がどの程度釣り合っているかをみなければ、共に行動するも何もなくなってしまいますよ」
「ま、そういうこったな。じゃあ互いの話をしようか」
そこから簡単に互いの情報を交換した。
リーダーさんは前衛攻め盾タイプ。
ヒゲさんは後衛補助魔法タイプ。
そして男装麗人さんは……
「この剣には、封印された力があって一時的に高度な技術を解放して使えます。正直格上すら倒しうるのですが……代わりに僕へ負担がかかるんです。なので、僕だけだとあまりにも負担が大きすぎて……」
「すごいんだよ、キレイな顔して、スパンと1発っ」
「アレを見せられて頼りにするなというのは酷というものですよ」
「アハハ……」
「そこまでなのか……」
ロイドもみんなの反応を見て驚いている。
すごい信頼感だ。
「それでアンタは?」
「俺は……[虐殺]を倒した」
明らかにその場がどよめいた。
虐殺の2つ名が倒されたことは有名だ。
近隣への被害が抑えられたのも良かったと言われている。
冒険初級者の集まりではそれはもう今のはとんでもない発言だろう。




