二百二十五生目 近接
虐殺のマンドラという炎の獣が跳び上がって回転しながら炎を纏いつつ撒き散らす。
マンドラは私の針ごと折るつもりで前足を伸ばし爪を出す。
あれを直接もらうのは本当にまずい。
本当ならこの炎でまともに視認もできないからこその１撃なのだろう。
しかし私は平気。
ちゃんとピンポイントは避けつつ……
針をマンドラの身体に沿わすように置く。
勢いで何本も折れながらも刺さっていく。
着地してマンドラは走り抜けた。
本当はキメたはずの１撃だっただろうが。
「どうだ、この炎な、ら……っ？ ぐあああっ！？」
炎が消え私のかわりにマンドラがうめく。
結構危なかった。
私の身体を構成する光が少し散る。
完全に避けきることはできずあくまで針で受けた形になる。
痛みはないが嫌な感覚がする。
おそらくは多少生命力が減った。
とりあえず光魔法"シールド"が発動し私とロイドを膜のような光が一瞬覆って消える。
これで緩衝できるはずだ。
「おっ、助かる。アチチ……」
「クソッ、クソが、認めねえ、お前は絶対殺す、絶対殺す！」
うわあ凄い怒って地団駄踏んでる。
針は自然に光と消えてそのせいで出血が促された。
なんとか素早く走りつつ相手の気を引きながら狙いを定めさせないようにする。
ロイドは銃弾を放ちマンドラは炎を噴出。
その炎によって弾丸がそれてマンドラの頬をかすめるのみにおわってしまった。
レバー操作をしている間に私はマンドラの懐に入り込む。
「バウッ」
「いけっ、ニーダレス！」
「うおらああっ！」
マンドラのほうが根本的には早いため素早く反応し炎の爪を振り下ろしてくる。
あくまで炎に固執するのは無効化されたと認めたくないためか炎特化型だからか。
どちらにせよ私が懐に飛び込んでいるのだから避けるのは困難。
なので最近ちゃんと学んでいることを。
攻撃をいなす！
振り下ろされた爪撃に合わせ爪と針を正確な位置から挿入し振り下ろされる地点を誘導。
さらにインパクト位置をズラして結果的に地面へ向けて攻撃をさせる。
攻撃の誘導ッ。
「ガウゥゥ」
「うおおおおおぉーー！」
それを相手の動きに合わせ連続で行う。
動きはまるでペアダンス。
ダンシングクローだ！
「うぐっ！？」
「ガッ」
よし。
まだ覚えたてで防ぎきれてはいないからあちこち傷がついたけれど。
でも平気だ。
小手先ではどうしようもないと判断し関節から出る炎がより強力に。
何か武技を出すな？
「オラアッ！」
熱された爪で身体を大きく上へ飛びながら背中宙返り……つまりサマーソルトキック！
勢いが強すぎて防げないが……大振りだ。
横へ転がってスレスレ爪は避ける。
炎が大量に来るが効かないので関係ない。
"連重撃"オン。
爪で"波衝斬"。
剣で斬撃を飛ばす武技だが爪でも出来るっ。
マンドラに斬撃が地面に走りつつ飛び……
私に向かってマンドラの尾が飛んできた！
しまった尾の先に小さな刃があるから真っ直ぐ来たこれが首を狙っている！
直後の急所突きを見るかと思ったら。
わずかに尾の動きが乱れズレた。
銃弾がロイドから放たれていた。
当たった先は腕か足か。
いずれにせよ大した打撃にはならないだろうが正確な動きが求められるこの動きは大きくそれてしまう。
尾の先にある刃は私の身体を斬りつけるだけに終わり"波衝斬"が深く入る。
私の爪３本の大きな斬撃はスキの大きなその身体を大きく切り裂いて血を噴き出す。
"連重撃"により２重ヒット。
「アッ！？」
「畳み掛けるんだ！」
「マウッ」
大きく後退させられたマンドラに距離を詰める。
ロイドはあえて動かず行動力をぶん投げてきた。
この感じ……ロイドの行動力残りを大半もらったな。
「くっ、行けっ、連続で攻め続けて討伐するんだっ……」
ロイドは思わずひざをつく。
無茶して……けれど助かる。
魔法を唱えつつやれるだけ連続攻撃だ。
まず倒れ込んだところに飛びかかって首元に食らいつく。
そのまま数度喰らい暴れたところで後ろへ跳ぶ。
こっちのほうがちいさいから相手の暴れに当たってやるほど優しくはない。
そのまま起き上がったところに低く跳んで頭突き。
相手が少し怯んだら尾を鞭のようにしならせ１撃。
強烈な後ろ蹴りして……
さすがに反撃してきたところで武技"影避け"っ。
マンドラが影相手に爪を振るい空振ったところをカウンター気味に顎へ爪と拳を振り上げる。
もうだいぶマンドラは疲れているだろうが３連続で切り裂いて……
相手の顔や頭に爪跡を残していく。
