二百十四生目 転生
ナゼか私がクオーツを捨てることになっていた。
「なーんだ、そういうことですか! 驚かさないでくださいよ!」
「かなりの曲解だったと思うけれど……まあいいや」
なんとかなだめた。
なんで自由にしてくれってのが廃棄になってしまうのか……
もうちょっと前世がニンゲンだという自覚を持ってもらいたい。
ゴーレム側に引っ張られすぎている気がする。
「とりあえず、私はローズ様のおそばを離れるつもりは毛頭ありませんから! 誰が好き好んでこんな良環境から抜け出すと思うんですか!」
「そ、そう?」
「それに……あの褒めてもらう快感を知ってしまったら、下手に離れようだなんて思いませんよ!!」
めちゃくちゃ強調して言われた。
ゴーレムは生物ではないので本能的欲求が違うとは聞いていた。
仕事をしたり褒めてもらったりするのが喜びの元なのだとか。
「褒めたりするんだったら、それこそいくらでも……」
「えっ!? 本当!?」
「いや本当に、この前の1件と良い、いまのといい、とても助かってるよ、ありがとう。わざわざ私についてきてくれるのも、ありがたいよ」
クオーツは一度身体が大きく縮ませてから……
一気に放たれあっちこっちへ吹っ飛んでいく。
うわ危ない!
「ひいやあああぁぁー!!」
歓喜の叫び。
それをしながらすごい勢いで飛び回り……
やがて空気の抜けた風船じみたうごきで落ちてきた。
凄い喜びようだ……
なんだか褒めがいがあるなあ。
「お、落ち着いた?」
「ありがひょうごじゃいやひゅ〜〜」
不安になるようなくらい倒れ込んで変な声を出しているけれど本当に大丈夫なのだろうか。
なんか簡単に相手を支配できる道具を手にしてしまったような……
そんな罪悪感がある。
果たして今後乱用しても肉体に影響がないのだろうか。
いやあるわけないんだけれど。
それはともかくとして。
「ゴーレムの家……どうしようかな……」
「え? この家ではだめなのですか? または外とか」
「いやあ、さすがに手狭になってきちゃうのと、ノーツは入ることすら出来ないからね……外は基本的に論外かな」
「ああ……ノーツ……外も駄目なんですか」
クオーツもノーツも根はゴーレムで間違いない。
時折の修復休憩を除けば1日中稼働できる。
まだできたばかりなのでそのまま動かしていたのだがクオーツが転生者と聞いてもっと早めに考えておいたほうが良かったと今思い直している。
前の感覚があると新しい感覚に振り回されるのだ。
それを知っている私だからこそ早めに対処したい。
ハックにゴーレム宿舎について聞いてみるかな……
「うん……気軽に生み出してみたけれど、もっとちゃんと意識のある存在を生み出してみることを考えたほうがよかったかな……」
「いやあ、知識の中のローズ様、わたくしたちを生み出す際全力でしたよ? だからこそ意識のあるわたくしたちが生まれたんでしょうし!」
「まあ……なんというか、覚悟が足りなかったなあって」
確かに作ることには全力を出した。
しかし命を創り出すことという認識は薄かった。
それこそ普段ハックが作る魂なきゴーレムをイメージしていたから。
彼らにハキハキとした意識を感じたときうれしかったが今になって罪悪感に近いものを感じだした。
なるほど私にはどこまでも創造系魔法が向いていない。
そういうコントロールが出来るようにならなきゃなあ。
「まあ深刻に考える必要はありませんよ! なにせわたくしこうして無事に転生しましたし!」
「ああそうそう、なんで転生をしたのだと思う? 転生者に聞いてみたかったんだ」
「うーん……そもそもわたくし、転生してから転生なんて概念を知りましたし。死んだら審判の時まで眠り続けるのではなかったのですか?」
この様子だと何も知らなさそうだな……
転生や転移の信仰や知識差は調べた限りなかった。
多分記録に残っているだけでそれだけ差があるので記録に残らない累積だなんてきっと大量にある。
同時にその事実は特定された転生転移を意味しないのだろう。
だとしたら転生転移の原因とは何なのか……
それを突き止めるのが大きな目標だ。
それは不幸な者を生み出さないことにもつながるかもしれない。
不幸な転移者はこの世界にも不幸を生み出しかねない。
カエリラスの首魁とも言える魔王復活させようとしたアイツもその不幸な転移者だった。
「私も転生したきっかけとかまるでわからないから、何か色々思い出せたら教えてほしい」
「ええわかりましたっ。ただわたくしはローズ様と違って意図的に過去の知識をピンポイントで引き出せないので、あまり期待はしないでくださいねー」
「まあ私もわからないから……」
転生者は増えれど事態は進展せず……