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二百十三生目 現在

 ローズクオーツの転生前の過去がわかった。

 壮絶というか……本人の幸せが良かったというか……


「わたくしは、今広い世界を知識がある状態で、昔の私を見たらそれは確かに境遇的にはあまり良くなかったかもしれません。けど幸せなのは確かでした。無知さや狭さ、幼さゆえではありますが、それでも幸せだったと胸を張って言えますし……今、さらに幸せになっただけです!」

「なる程……強いね」


 クオーツは自身の胸を叩く。

 自分の自信が強くあるんだろうね。

 生き様がどうであれ誇りを持っていてある意味理想的だ。


「最強のハートに最強のソウル、そして最強のボディですから!」

「……そういえばなんで敬語を?」

「こちらのほうが響きがキレイだからですね。それに、ローズ様へは本当にこう見えても敬意や尊敬を持ちたいと思っているんです。こんなにすごい身体を作ってわたくしを、偶然とはいえ転生してくれたというのもありますが、わたくしが引き継いだ知識にはたしかに現実だとはわかっているのですが大量のとんでもない冒険譚たちがあって、純粋にすごすぎるなって……」


 そうか……私の経験はクオーツの中にも息づくから……

 クオーツの目がどんどん遠くを見つめていく。

 憧れとか喜びではなくなんというか見た他者の記憶があまりにあんまりだったからされた顔な気がする。


 な……なんでだ!

 そこまで果てしない何かを感じなくても!?


「ふ、ふつうになんとか生きているだけなんだけれどなあ」

「あそこまでの激動を送る相手を、こんな身近に感じてしまったら、もうどう考えてもわたくしは幸せだとしか思えません……」

「どうして……」


 他者の記憶を持つというのがどういう感覚なのかは私にはわからないが……

 どうも他者の記憶は強く感じるらしい。

 隣の芝生は青く見えるようなものなのだろうか。


 そう……あの顔は私と同じような目には絶対合いたくないと強く思っている目。

 作ったゴーレムだからかなんだか気持ちが手にとるようにわかる。

 おかしいなあ……

 

「さ、ひと通り毛づくろいを終わりましたよ」

「うん、ありがとう。なんだか途中からそれどころじゃあなくなったけれど……」

「いえ、わたくしもちょうど話せて良かったです!」


 たしかに我が家へ来たのはこの話周りをしたかったのかな。

 どうでもよさげな雰囲気は出しつつも……

 きっと誰かに共有して不安を和らげたかったのだろう。


「それにしてもこれは……」


 私から取れた毛の量は……凄まじかった。

 丁寧にやってもらえばこんなに集まるのかというほど。

 固めた状態ではないが今の段階だと私の大きさくらいの山がある。

「こういうゴミ山も、わたくしにおまかせ!」

「うん、毛髪処分袋にお願いできるかな」

「もちろんっ」


 ルンルン気分でクオーツは毛を持ち上げ……

 そのまま袋に詰め込んだ。

 実は量のある毛髪に関しては必ずまとめて捨てる必要がある。


 このゴミは希少な魔物素材として回収される。

 魔物によるのだが……

 私みたいに耐性があると毛が燃えなかったりする。


 これらの品々は正当な取引や加工をされて相場内の取引とされる。

 当然ココ……アノニマルースは異様に魔物素材が集まりやすいため関係各所があつまり市場崩壊につながらぬようにコントロールをしていてくれている。

 魔物たちが不利にならぬようにあっちこっちでニンゲンや担当魔物たちが走り回って今の制度が出来ていてかなり助かる。


 税面でも有利でおかげさま……皇国からひどい突上げをもらったことはない。

 いや……互いにそんなことにならぬように誰かが必至に抑えていてくれているということだ。

 結果的に今ニンゲンたちの流入が多すぎる問題なんかも起きている。


 ほか都市より過ごしやすいとする者が少なくなっているからだ。

 うれしい悲鳴というやつだね。

 まあその分私に橋渡し役としてめちゃくちゃ書類来るんだけれどね!


「この後、キミはどうする?」

「え? そうですね、まずこの家を清掃して、洗い物をしてから……」

「いやいや、そういう短期的なことじゃあなくて……」


 クオーツはわからないといった様子で首をかしげる。

 クオーツは少なくとも前世がニンゲンで……

 私に造られたとは言え自由だ。


「というと?」

「キミは私がたまたま造ったとはいえ前世はニンゲンだ。ここに縛られる必要はないよ。前も言ったけれど、私をそんなに深く造った相手だとも思わずに、自由にしていていいからね」

「え……」


 クオーツは何か驚いたかのように固まり……

 そして何か考え込むようにふわりふわりと移動して……

 そのまま壁にぶつかった。


「あいてっ」

「クオーツ……?」

「どうしましょう……捨てられちゃうだなんて……!」

「違うよ!?」


 いきなり何を言い出すのだ。

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