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百二十六生目 転移

 おはよーございます、夜です。

 ニンゲンで言う昼夜逆転だけれども、別に私達にとってはこの時間からの活動はそこまでおかしくはない。

 まあ冬の間は夜活動は最悪凍え死ぬけれど。


 ここは春なので問題なく行動開始。

 数度の戦闘をこなす。

 魔物たちはそこそこの頻度で襲ってくるが致命的な怪我を負った味方はいないしドラーグも泣かなくなった。


 まだ切り替えがうまくいかずに重さを引きずっているが平原の魔物たちと話して何かを掴んできた様子。

 見守っていよう。


 ドラーグは実戦で私たちに混じって戦えるようになってきた。

 根本的な戦力差はあるものの互いに邪魔せずフォローし合える動きだ。

 訓練どおり身体を動かしつつも頭が働き出した証でもある。


 ドラーグの真骨頂はその賢さ。

 ドラゴンらしく賢い頭は一時的なパニックは起こしやすいが頼りになる。

 私達の動きを見て助けになるように動けるわけだ。


 実戦はドラーグの経験にも貢献しているようで複数回の戦闘でレベルが10から14まで上がった。

 頭を使って戦う分経験を糧にしやすいらしい。

 その大量の経験は一部私にも流れ込む。


 "率いる者"のおかげでこっちまでレベルが上がっていくのはありがたい。

 ドラーグほどじゃあないけどね。


 ニンゲンの作った道を通ればここまで魔物に襲われないのだろうが……今度はニンゲンに襲われる可能性が跳ね上がる。

 それは避けたい。

 うっかり高レベル冒険者たちとはちあわせたら次の瞬間うっかり瀕死に追い込まれる可能性がある。





 そうこうして走り続けやっとこさ池へと辿り着いた。

 やはり先に少数で来て正解だったよ。

 私が池を見た瞬間にログに文字が出る。


[ファストトラベル:ヤンバー池 追加]


 これでここまでワープしてこられる。

 何回にもわければあの集団も運べるはずだ。


「少し早いけれど到着したし、ここで休もう」

「わかりました」

「やったー! 着いたー! 休みだー!!」


 池は澄んでいてほどよく草が浮いており場所を選べば水が飲めそうだった。

 ハートペアからも学んだことだがここに草もなく魚もおらず一切濁りのない水、だったら絶対飲んではいけない。

 それは隠れた巨大スライムだったり水底に獲物狙いがいたりそもそも毒だったりとロクなことがないからだ。


 幸い魔物ではない小魚がいる程度。

 少し遠い位置に魔物もいるようだが敵意がない。

 ここに来る魔物なんてみんな水目当てだから、といったところか。


 簡易キャンプとは言うもののニンゲンにそう簡単には見つからない場所を見つけて持ち運んでいる炭か使えそうな木材を集め着火する程度。

 食事時になれば土器を置いて調理。

 最近の調理はもっぱらアヅキがやっている。





 私は休みつつスキルの練習。

 "変装"はもう四六時中やっている。

 それでわかったことがいくつかある。


 まず第1に"変装"で変わっている間は窮屈さを感じる。

 普段と違うカタチはなんというか異常に着込んでいるような圧迫感すらある。

 全身鎧とかキグルミとか多分こんな感じだ。


 慣れはあるが締め付けられているのは変わりない。

 息苦しさがあるからこれで常に変わるのはなかなか苦しい。


 その2は神経。

 指先の感覚を得て動かすには見た目の変化だけでは意味が無かった。

 神経だ。

 やりすぎなんじゃという程にこの変化させた指先に神経を伸ばさなくてはいけない。


 見えないので想像しつつ体内にある神経をどんどん伸ばす。

 行動力をいつもより多く注いで熱中する。

 そうして僅かな時間だけだが……


 ピクリと、指先が動く。

 しなやかに曲がり物を掴んで感触が返ってくるほどの繊細さ。

 そうして練習用の匙を掴んで……


「あっ」


 震えて落ちてしまった。

 みるみるいつもの前足へと戻っていく。

 惜しかった、あと少しで成功したのに。


 私は別にニンゲンへとなりたいわけじゃない。

 私は私の出来ることみんなやりたいだけだ。

 そうして文化的な生活をおくり楽しく過ごす。

 私なりの生きるって、きっとそういうことだ。


 練習は"変装"だけじゃない。

 "進化"もだ。

 今までは3つの魔力を組み合わせていたが魔法も増えたし4つに挑戦しようと思う。

 そうすればミリハリとはまた違う姿に進化出来るだろう。

 根拠はない。


 というわけで唱える。

 土、光、火の魔法を唱えてキャンセルして魔力ストック。

 ここまでは簡単。


 あと覚えているのは地、空、聖。

 とりあえず地だ。

 地魔法は唱えるのにも時間がかかるから2、3分で強く魔力を感じたので詠唱をキャンセルして地魔力獲得。


 この4つの魔力を混ぜて……

 ……ッ!?

 なんだこの反発力!


 水と油をまぜて豚骨を作る感じから氷と固形油脂を混ぜて豚骨を作る感じになった。

 難易度が跳ね上がった。


 くぅー、出来ないと悔しい。

 ただ絶対無理なわけじゃあない。

 練習あるのみだ。


 さて。

 私も練習ばかりしているわけにもいかない。

 行く所に行かねば。


「ドラーグ、ちょっと出かけてくるから留守頼んだよー」

「あ、分かりましたローズ様」


 すっかりだらけていたドラーグにそう告げて魔法を使う。

 空魔法"ファストトラベル"。

 行く先は森の迷宮入り口。


 2分程で唱え終わる。

 身体がふわりと浮かび青い魔力の輝きに包まれる。

 全身が青い輝きとなると身体が固まって手先足先から光の粒子と成って空へと飛び霧散した。


「うわ、え? どうなって!? ローズ様!?」


 そういえばドラーグの前で使うのは初めてだったなー。

 この時身体は動かせないがなぜか粒子になったはずの身体の感覚はある。

 光となり霧散する前までなら見えるし聞こえる。

 まあアヅキは知っているから大丈夫だろう。


 全身光となった私の視界に飛び込むのは青白い光。

 高速で背後へ流れて行く。

 音やにおいはしないが問題は大してない。

 そうして2秒ほどで陸へ降りたった。


「うー……ん! 到着!」


 身体が固められるせいか動かせるようになるとつい伸びをしたくなる。

 尾の先まで良く伸びて気持ちがいい。

 さて森の迷宮そのものには用は無いからみんなの元へ行こう。





「ただいまー」

「おかえりなさいませ」

「あら? どうしたのかしら」


 カムラさんとユウレンだ。

 他にも多くの魔物たちがいる。


「魔法を使って帰ってきたから、魔法を使って池まで送るよ」

「……そんな事出来るの?」

「出来るみたい」


 疑心暗鬼なユウレンだったがやってみせるほうが早い。

 ただ私もみんなを運ぶなら気合入れねば。

 3種の魔力を作り出して混ぜて身体に纏わせ……


 進化! 出来ないけれど!

 姿は変わらずとも魔力がこの状態なら体に満ちている。

 魔法をアレンジして強化するのも楽だ。


「それじゃあそれぞれどこかの身体触ってー」


 魔物やユウレンたちに輪になってもらって左右それぞれ何処かに触ってもらった。

 この状態なら運搬が楽でおそらく30匹までいける。

 その輪の中に私も加わってと。


 魔法を唱えるがそのさいに強化。

 もちろんその内容は繋がるみんなごと飛ばすためにワープの力を増す。

 唱え終われば数秒のうちに繋がる魔物たちが光の粒子となって空へと消えた。





 ホイ到着。

 池のほとりでみんな輪になったまま再構築された。

 誰かと誰かが一緒になったキメラになったりそこらへんにある石や岩と同化したりはしていない。


 まあ心配はしていなかったが無事成功だ。

 みな一様に景色が変わって驚愕している。

 特にユウレンがかなり驚いていた。


「どういうこと……? この数を同時に?」

「ね、出来たでしょ?」

「できたも何も……どういうことよ!? あなたこれとんでもないことって自覚ある?」

「え、そこまで?」


 もちろん、ない。

 まあ"無尽蔵の活力"がないと行動力不足して大変だろうねとは思う。

 ちなみにスキルレベルが上がって6になりました。


「はぁ〜、転移をする魔法自体かなり希少で、それを使える人もかなりエネルギーを使うからこんな大人数動かさないわよ」

「そ、そうなんだ。……ええと、これからまた向こうへ行ってすぐに残りを運んで来るつもりなんだけれど……」

「あんたの行動力(エネルギー)どうなっているのよ……」


 まあグングン回復したりかなり効率よく使えてはいるのは確かだけれど、なんというかかなり凄いらしいのは分かった。

 まあ、それなら利用しない手はない。

 というわけでユウレンと適当に言葉を交わしつつワープした。


「妹ー! 今度は俺たち!」

「僕もー!」

「いくよー」


 というわけでインカとハックをワープ。


「スゴイ!? どこここ!?」

「一瞬で場所が変わった! 俺も使いたいー」


 "率いる者"のレベル的にまだ貸し出せないのだ。

 ワープして森へ。

 さて次は……


「ローズさん! 見てましたよ! スゴいですね、私もお願いしますー」

「はいよーケンハリマバス出発!」


 たぬ吉たちを運搬。


「ど、ドキドキしました……

 一瞬でどれほど移動したのでしょうか?」

「だいたい夜だけ動いて2日くらいのとこ」

「ええ、すごい!? 気付いてない間に2日経ってないですよね!?

 そういえばさっきのバスとは……?」


 経ってないので大丈夫です。

 バスはノリ。

 ノリは大事だから。

 またワープ。

 残りは……


「その妙ちくりんな魔法で俺も移動するのか?」

「痛くないからへーきへーき」

「嫌というわけではないのだが……光になる前の俺と光になった後の俺はちゃんと同じなんだよな?」


 同じだから大丈夫。

 なんとなく哲学的な問いに入りそうな気配もあったがニンゲンではないからか大丈夫だった。

 ワープして池につくと叫びだしていた。


「おおおぉ!! これは頑強な巣窟に乗り込む時に便利そうだな!!」

「残念ながら行ったところじゃないと駄目なんだ」

「ふむ、それでも上手いこと戦いに活かす方法は多くありそうだな。引き寄せていきなり外部から転移、襲うとかな」


 ダメだこの熊、戦いしか頭にない!

 そのシチュエーションを活かす時が来ない事を祈るよ!


 そんなこんなでなんとか残りの魔物たちもワープを終えた。

 さすがにちょっと疲れたよ。

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