二百五生目 馬鹿
肝心の職レベル概念復活方法はわからずじまいだった。
ただ希望は見えた。
現状発展どころか世界が緩やかに停滞気味だから概念の復活は望まれるかもしれない。
ただそれが広く入るとどこまで凶悪さが広がってしまうかがわからないんだよね……
「それで、このためだけに僕らを呼んで話をしようとしたわけじゃないだろう?」
そうだった。
あくまでフォウの報告は話題のひとつ。
蒼竜にも用がある。
もちろん同時に呼んだのは今さっきみたいに補足や詳細を聞けたらというのも含まれる。
私は空魔法"ストレージ"を発動し亜空間から2冊の本を取り出す。
1冊は分厚く頑丈そうでなおかつチェーンが巻かれその上から札が貼られたひと目見ていわくつきだとわかる本。
逆にもう1冊は特長もなくタイトルもないのにまるで糊付けされたかのように開けない本。
どちらも知識の神ライブラから譲ってもらったものだ。
そして祖骨もだす。
今の姿はまるで骨型のガムくらいしかサイズがないけれど実際はもっと大きな黒い肋骨らしき部位。
詳しいことはわからない。
「これは?」
「知識の神から渡されたんだ。コレを蒼竜に渡してと」
「あー……ああっ」
蒼竜は顎に手を当てて思考し……
やがて思い至ったのかハッとして本をうけとる。
さすがに興味がないと言えば嘘になるな……
「結局、それはなんなの? それに、その本どうやっても壊せないし、本の封印は解いてはいけないらしいけれど」
「ああ、何も聞かされてない? まあ僕も神づてに頼んだだけでその神のこともわからないし、そこまで詳しい話は伝わっていないかな」
そう軽く話しつつ……
まるでビニールでも裂くかのように札を切り裂いていく。
「えっ!?」
私はてっきりどこかに保管したりするのかと思っていたから当然のように破く。
さらにチェーンを何かの金属で出来ているだろうに爪が鋭く伸びたかと思うとザクザクと切り裂いた。
何か魔法の力を感じる……
あっさりと金属が断ち切れチェーンは崩壊する。
そうして本に手をかけて……
「え、その本って開けて大丈夫なんですか……?」
「かなり危ないそうな……?」
「大丈夫、最悪でもまあ、死ぬだけだから」
[神特有の感覚に周囲を巻き込むな]
フォウがごもっともなツッコミと共に何があってもいいように立ち上がる。
私達も慌てて立ち上がり。
本が開かれる。
突如本から大量の黒煙があがる。
しかもそれに対して目で追えているのは蒼竜や私それに魔王のみ。
ドラーグはアワアワとしながらも黒煙に気づく様子は無く周囲のカフェスペースにいる者たちもなにひとつ気づかない。
この黒煙から感じられる感覚……まさか神力の塊!?
身体の芯が冷えて震える。
この神力量私より上……!
『ブァハハハ!! 馬鹿なニンゲンめ!! 我の封印をときおってからに!! 下手に力を持って頭の足りない貴様のようなものを待っていたぞ!!』
これは……念話!?
う……動けない。
黒煙から赤く輝く目が現れ天から一気に蒼竜へと襲いかかる!
『その身体、寄越せええぇ!!』
「はいはい、思ったよりもしょぼくなってこんなところに潜んでたんだね、キミ」
『アアッ!?』
しかし蒼竜が指を鳴らすと黒煙の動きがピタリと止まる。
まるで……竜に上からわしづかみされたかのように。
身をよじることすらできずに。
「ま、もう僕すら認識できず戦う相手を見極められないのなら、素直に世界から引退しなよ」
『お、お前、いや、あ、貴方様は、そ――』
「駒は駒らしく、散るときは散ってくれないと」
『――うアアアァッ!!』
黒煙に何か裂け目のようなものが走ったかと思うと凄まじい叫び。
そしてまるでいたのが嘘かのように消えた……
「あ、あの、何かあったんですか……?」
「あれ? 聴こえなかった?」
「ええ、何も……」
「そ、そうなんだ」
念話も聞こえてなかったんだドラーグ……
一体今のはなんなのか。
駒と聞こえた気がしたが私は先程の蒼竜が1つも声色をぶらすことなくやり遂げたことに。
なぜか言いようのない恐怖を感じて固まっていた。
[流石に説明が欲しいな。巻き込まれた形にはなる]
「はぁー、まあ良いけど。まさかあそこまでバカだったとは思っていなかったし」
蒼竜はフォウからのジト目にため息で返す。
ただ説明はしてくれるらしい。
「今のは言うなれば僕の昔こき使っていたしょうもない神さ……ああ、ドラーグくんは見えなかったと思うけれど、神のなれはてを絞りきったカスみたいなのがこの本に潜んでいて、僕を乗っ取ろうとしたんだ、誰かもわからずにね」
「だから、粉砕したと……」
「えっ!? あ、もう倒したのですか? それは安心ですね」
しかし浮いた顔をしているのはドラーグと蒼竜のみ。
今の言葉に引っかからないのはそれなりに事情を知っていなければね。




