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二百四生目 枠組

 休眠した神々。

 それは自ら消滅を選んだ者たち。

 フォウによると星の大いなる流れ……私が死ぬと行くあの場所に近い気がするそこに自身を溶かし一体化するのだとか。

 蒼竜によると神ではなく生き物に生まれ変わって時代の勝ち馬に乗りたいだけとどこかくさして言った。


「生き物になることが……勝ちなんですか?」

「そう、世に芽吹く生き物というものはとても素晴らしい。たまに勘違いされるけれど神というのは生き物の上位互換じゃない。世界の循環による横のつながりでしかないからねっ」


 なぜ解説するだけでキメ顔をしているのか。

 もはやツッコミしきれないので全員スルーをした。

 今大事なのは……


[話を戻そう。休眠層の神たちは様々な理由で自らを放棄している。先程の理由以外にも世界の総力を破壊跡から回復させるものや、さらなる生命たちの発展を望んで身を投じた者もいるそうだ。神というのはその能力が高ければ高いほど生命とは一線を画するほどに高い。また単なる生命とは違い、自身の命を子孫につなぐ本能はたいていない。故に自身の消滅や現存に興味が薄いものも多い。つまりそこまで休眠層に入ることは深い意味がいるわけでないと覚えておいてくれ]


 簡単に言えば休眠層に神が行くのはよくあることと。

 まあ今休眠していない神がガツガツ飲み食いしているのを見ているわけだが。



「なるほど……あ、そういえば誰かに消されるほどのダメージを与えられた神様はどうなるんですか? この休眠層ですか?」

[それは、難しい質問だ。神と状況によって異なるのだ。次元の狭間に封じ込められたり、まったく同じ神に知識だけをもって記憶を無くし転生したりするが、休眠層のように神の力、その概念すら消し飛ばすのは非常に困難だ。魔王が消された時勇者の刃によって復活するまで世界と断ち切られても、キミたち魔物が誰に観測されることもなく、己の存在を確立したのと同じように]

「魔王というのは、魔物が存在するのに必要なのですか?」

[そうだ。魔物とは魔王の概念だ。魔王が休眠層に入れば、この世界の魔物は全て夢のように消える]


 フォウが自信げにそう語る。

 ……って待って!?

 とんでもないこと言ってない!?


「そ、それって魔王が完全消滅したら、この世界の魔物は全部死ぬってこと!?」

[それが少し今は事情が違う。勇者の剣だ。あの剣は魔王から神秘を切り離した。自分すら理解しきれない上位からの一振り。概念は秘匿されず、世界に撒かれた。言い方を変えればもう自立をしている。つまり突然ある日消える心配はしなくても良い]

「よ、良かった……」


 いきなり目の前の相手がこちらの命綱を握っていることになっていたのかと思った。

 けれど今の言い方なら心配はなさそうだ。

 ただ……


「あ、魔物は消えてなくても、もしかしたらもう消えている何かが、この休眠層にたくさんあるかもしれないということですか?」

[概念をわざわざ切り離して休眠層入りしなければそうなる。そしてこれは、失われた職の力量に関しても同じことが言える。そう推測している]

「ああ、もう彼らは魔王の死と共に休眠を……」

「そういうのはあるのかもしれないね。彼らは、生き物たちが生き抜くために力を分けていたっぽいからね、正直過干渉で、それで魔王の時代が過ぎたらどこに矛先が向かうのかぐらい、自覚はしていたんだろう。この星の生物たちに過剰な力を加えなくとも、みんなたくましく生き抜いてくれているのに」


 蒼竜は相変わらず生物好きだな……

 ただその好きの方向は保護とかではないようだが。

 なんというか……まるで蟻の巣を観察しているかのような……


 蒼竜とふと目があったとき。

 なぜか底知れぬ恐怖を感じた。


 しかしその感覚は一瞬のみですぐに霧散する。

 い……今のは……?


[なるほど蒼竜は知り合いだったか。彼らの末路は知っているだろうか]

「いや、しらないし興味もなかったね。ただ、この図に当てはめるなら、まさしく休眠したのだろうよ」


 蒼竜はすました顔をしている。

 本当に興味の方向性が極端だなあ……


「とりあえず、フォウが探ってくれたおかげで、その神々たちがもう休眠層に入ってしまったのはわかった……つまり現代に概念を蘇らせるのは絶望的なんだね……」


 うーん。

 期待させられて肩透かしだったなあ。

 仕方ない。やはり鍛錬は地道にするしか――


[というわけでもない。昔あった概念が完全消滅するというのは難しい。枠組みそのものは残っていることがほとんどだ]


 ――なんだって!?

 その話になると事情が変わってくる。

 もしかしたら復活させられるかもしれないのか。


[もちろん、世界に概念を取り戻すきっかけと、その仕組は目下調べているのだが、なにせ、各々違うのだろうから]


 そ……そうか……肝心のそこがわからないとなあ。

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