二百二生目 壁画
魔王ことフォウそしてドラーグと共にカフェでだんらん……ではなく話をしにきた。
フォウが取り出した薄い箱に情報があるらしい。
「失われたもの、ですか?」
「職を司る神様なんかがなぜかいなくなっちゃったというところまではわかったんだよね」
[そこからもう少し深く理解することになる]
フォウはその薄い箱……
誤解を恐れずに言うならばアルミ類の金属でできたプラスチックを組み合わせて真ん中を開ける精密機械に見えるそれ。
前世の記憶がかすめるものだ。
しかしそのあとは私の予想を裏切った。
箱は半分に割れてさらに薄くなったあと……
箱としてくの字に止められ……
[非対象からの不可視化オン。コレで周囲からは見られない]
箱から周囲に魔力のようなものが走る。
そしてこの狭い範囲に結界がうまれる。
内側から見た外側はまるでガラスを張り合わせたようでところどころ曲がっている。
「えっ、いきなりここが見えなくなってびっくりしませんか!?」
[大丈夫だ。外から見てみると良い]
ドラーグガそっと席から離れる。
私も"鷹目"で外から見てみよう。
すると……何も異常がない。
そう。
私とドラーグとフォウがいる。
あの箱だけが見えない。
「これは……すごい魔法ですね……!」
[さあ、展開しよう]
ドラーグが戻ってきたところで再開。
フォウは箱の中から何かを掴むような動作をして……
引っ張り上げる。
すると箱の内側から不思議に光の波が溢れ出てきた!
それは帯のようにしっかりと形を持ちこの丸テーブルでそれぞれの前を通りフォウのところまでぐるりと一周する。
これは……前世ではまったくしらないものだな!
光が安定するとそれがモニタのように稼働し始める。
画面としていくつもの情報……ただしまったく読解できない何かが載っている。
いくつかの画像もある。
これは……旧き神々たちの断片的かつ不鮮明な絵だろうか。
「す、すごい! これって情報を映し出す道具ですか!? アノニマルースで量産できたら……!」
[残念ながらそれはできない。第1に自分はこのテクノロジーを理解してはいない。使えるから、使っているのみだ。そして第2にこれは特定の相手、つまり自分にしか反応がない。トドメに技術推移的にまだこの世界は遠く、研究したとしても再現性の確保はほぼ不可能だ]
「ざ、残念です……」
とりあえず駄目っぽいのはよく伝わった。
実際に私達が画面に触れても反応がない。
創造主特権みたいなものか。
[それでは、この世界に起きたらしいことを話そう。ここに表示されているのは、世界を裏側から見た場合の情報束だ。3次元的なこの世界を5次元あたりから解釈し圧縮し濃縮した情報の束だ]
見た目的には意味のなさないデタラメにこどもが様々な色彩で描いたなにかだ。
高次元から描いた3次元……という解釈でいいのだろうか。
情報量の違いからこんなことが起こりうるのかな。
「えっ、えっと……?」
「多分、大丈夫。誰もわからないから……」
[そう。自分にもこれではさっぱりわからない。しかし少しずつ解析することはできる。必要情報にあたりをつけ、少しずつたどっている。それがこちらの画像たちだ]
画像は不鮮明で欠けていてしかし立体的に把握できる。
どこかの壁画やら……
文書が映し出されていた。
まさしく3次元を切り抜いてきたかのような画像には度肝を抜かれる。
ドラーグも同じだったらしく驚いて口をぽかんとしていた。
「これ、これがさっきのよくわからないものから……?」
[そう、やはり限度はあるからそこまで高い再現性はないが、そこまではなんとかなった。これらの情報の中に、これだ]
フォウが提示したデータは1つの大きな壁画。
まるで永世残そうとする意思を感じるような。
あまりに深く頑強そうな山そのものに刻んでいる。
「これ、現地に行けば直接見られる……?」
[残念ながら、時を進めてみればわかる]
フォウが操作するとどうやら恐ろしい早さで画像内の時間が進んでいるらしい。
とある時間で山自体が崩落し映像は途絶える。
改めて壁画の時間まで戻った。
「なるほど……本物は既に紛失してしまったんですね」
「それじゃあ、コレに書いてあることは何かわかるの?」
[少しずつ解析を進めている。しかし大まかな内容は把握できた。現在、神というのはいくつかの分類にわかれていて、それが今回の話に関連しそうだということだ]
新たな画像が現れる。
図式のようだ。
フォウが作ったのかな。
「だいぶ……話のつながりがわからないですね。あ、食べながら聴いてます」
[ぜひそうしていてくれ]
この図……見たとおりなら少し話が視えてきた。




