二百一生目 調査
こんばんは私です。
先日多少暗い影が落ちることがあったものの……
それはもうよしとしよう。
よくないけれど解決は今不可能。
みんなを信じて待つしか無い。
それで本日だが……
魔王……もといフォウの元に来ていた。
正確にはフォウに呼び出されてフォウと共にカフェに来ていた。
アノニマルースにもオシャレなカフェが建っていて配給食でもアイスおやつでもなくオシャレに飲料と軽食を楽しみながら歓談が出来ると話題。
そこでフォウは目の前に飲料やお菓子を並べて待っていた。
フォウは口がなく摂食が出来ない。
しかし込められた想いを摂取しているらしい。
話を聞いたときいわゆる俗説の幽霊みたいだな……と思ったのは秘密だ。
「おまたせ。ふう……早くから座ってたんだね」
「わあ、おいしそうですね!」
[凄く美味だよ。世界の指す味はわからずとも、味が美味という概念は味わえる。自分は満足した]
私が連れてきたのはドラーグだ。
1%の姿で大きさは私の頭より少しある程度か。
パタパタと羽ばたいている翼がキュートなくらいに小さい。
「あれ、のこりひとりの方は……?」
「いや、まあ……どうせ遅れるだろうから先に始めておこう」
[それでいいなら問題はない]
フォウがその暗がりに浮かぶ光る目を細める。
しぐさからまるでためいきのようだ。
フォウが早いのはともかくとして私ははぼ時間通り。
しかしもうひとりは来ない。
別にそんな時間にカリカリする必要も無いし始めていいんだけれど……
それはそれとしてドラーグ以外は彼が遅れることはなんとなく把握していた。
それどころか来るかすら怪しい。
あれはそういうやつだからね……
さてと。
[先程から気にはなっていたのだが。その荷はなんだ?]
「ん? ああ、単に負荷だよ。スキマの時間もちゃんと肉体を鍛えておきたいし」
私は身体にまとわせていたおもりをまとめて外していく。
ちょっと古典的だが日常の移動にこういうのを使って鍛えるのは案外効果的だ。
なにより肉体を常に意識させるのはふだんの何気ない行動に私の戦う感覚が加わり体力的な底上げにもつながる。
一気に肉体を酷使しつつ休む時になったら一気に休む。
もっと鍛え上げねば来たるべき時に何もできない、
それでは困るからね。
そこはともかくとして。
私達は席につく。
気をきかせていてくれたようでフォウと同じものがつぎつぎ運ばれてきた。
こういう味覚系統で最近ちゃんと確立されたものがある。
それは私みたいな野生時に肉を食らうタイプは特に甘味を感じにくいということ。
代わりに肉の甘みなんかは遥かに味わいやすい。
そういう系統を成分的に理解して食事に還元することをちゃんとやっている。
フクロウみたいなトランスをしているニンゲンの少年バローくんは元気に今日も研究しているが……
研究員が増えてきたことで多種多様なことに手を出せるのだとか。
アイス研究作成もそのうちのひとつ。
目の前に来た紅茶な香りはとても芳醇。
口に含むと繊細な花の香りを広がる。
一気に癒やしの空間になった。
こちらの焼き菓子はパンデカスティーリャとかなんとか言った……
そういわゆるカステラだ。
ちなみにこの世界での呼名は全く違う。
もともと地名からきているせいだろう。
色も黄や黒じゃなく赤と白で最初何かと思った。
原材料も当然違って魔法やらスキルやら駆使するのに……
最終的に味わいが今舌の上で再現されている。
再現というのもおかしい話か。
コレはこの世界の立派なおかしだ。
しかし行き着く先は同じだったというだけで。
ふんわりしっとりした生地に私の舌でも感じられる甘み。
これは単なる甘みの香りを足しているたわけではなくさっき言った肉食的甘みを擬似的に糖類の甘みに近づけさせたものだ。
作る側は大変だが選べると喜ばれる。
「ふわあぁ……すごく素敵な味わい……アイスも良いけれどこっちも捨てがたい……!」
[カステラ・オン・アイスもある]
「すっごい!」
「おっと、忘れない内に本題に入らないと」
舌鼓うつのもいいけれど本題を忘れてはいけない。
それを聞いてフォウはかばんから何かを取り出す。
……四角く薄い箱を取り出した。
「そういえば僕、詳しいことは知らされずにカフェに行くからとしか聞いてないんですよね。それはなんなのですか?」
今日のメンツであまりに不安だと思って急遽ドラーグを呼んだのだ。
ドラーグを選んだ理由も……のちのちある。
[今回はこちらが調査した過去から現代の変異そして失われたものについて、わかったことを話そう]
魔王が独自のルートで調べてくれていた職の神に関することが少しだけ分かったらしいのだ。




