百九十八生目 頭隠
「ヴヴヴアァ!! ないぃ……! 隠していたのにぃ……!」
「敵機体の錯乱を検知」
『突っ込みましょう!』
敵ゴーレムは樹木にあった悪魔の目が丸裸になって両腕で木を抱えている。
当然スキだらけだ。
聖魔法"レストンス"が打ち込めないのでどかしてほしい。
その想いを汲み取ったのかノーツが突撃する。
足裏のローラーを使った動きは巨体に似合わない速さ。
そのまま大ぶりで拳を叩き込んだ。
「ヴッ!」
だがそれを見て機敏に反応した。
腕で拳を防いだのだ。
少し押し出されるが足で踏ん張る。
そしてお返しといわんばかりに近寄ってから足で蹴り込んだ。
『ええっ!?』
「敵機体戦闘続行可能」
その振りは強烈だった。
もともとこの巨大を支えるための脚は相手へと向けられた途端破壊兵器になる。
ただ普通のゴーレムだとバランスが崩壊しかねないが……
そこは変身したゴーレム。
ちゃんと着地まで踏ん張った。
一方蹴られた側のノーツは悲惨だった。
突然の猛攻にあの巨体が浮いたのだ。
そして背中から着地し滑るようにとばされる。
もう今さらだし気にしないでおこうとは思ったが今ので完全に数十メートルに及ぶ鋪道がめくれあがり完全に駄目になった。
未だに建物が粉砕されていないだけマシといえる。
敵ゴーレムは明らかにこちらを意識している。
まあ吹き飛ばしたからね……
「お前えぇ、強いなぁ! 隠してたなあぁ……っ」
「うわっとっ」
私の方に視線を向けられれば建物の近くにいるわけにはいかない。
当たり前だが大きなゴーレムで強化されている彼ならば蹴って建物を壊せる。
仕方なく躍り出るしかないわけだ。
とうぜん踏みつぶししようと躍起になって襲ってくる。
踏みつけの余波や地面の揺れもちゃんと避けないとあっという間に地面にのめり込むこととなる。
踏みつけのたびにうまくジャンプしつつスキをうかがう。
「避けるなあぁ!」
『ご主人様に何をするのっ!』
クオーツが叫びながらノーツを操作し突撃。
今度のは完全なる突進。
当たり前だが搭乗者には多大な負荷がかかる行動だ。
それを指し示すかのように敵ゴーレムとノーツが互いに転がっていく。
よし……今のうちに空へ!
背から翼状の針を展開し空へと飛び立つ。
空から飛来すればあっという間に相手の頭上を取れる。
ただこうすることで完全に敵は目の前に集中しだすわけで。
かなり傷が増えているノーツに負担がかかってしまう。
すぐに決めないと!
「いい加減腕を退けてッ」
空から狙おうにも隠しているまま。
信じられないがノーツと足でやりあっている……
あんなゴツゴツゴーレムなのに。
あの全身にある枝葉や根がそこまでこのゴーレムを支えているのか。
今まで変身してきたタイプはみな変身前と同じ行動をとってきた。
つまり歩きから車になったのに毎時で時速10キロメートルくらいで走っているのとそう大差ない。
おそらくみんなもらってからそう時間がたっていないのだろう。
あのゴーレムは好戦的でかつ戦いがやや長丁場になっているため色々学んでいっているらしい。
これ以上成長されると困る。
ゼロエネミーが大剣に変化し突撃していく。
私はとりあえず攻撃魔法やイバラを当てて防ぎきれなくしよう。
「ヴヴヴーッ! あっちこっちから、しつこいぞおぉっ!」
「敵機体の活動量増加。精度の低下を検知」
『ならば……! そこっ』
蹴り上げてそのまま踏み込み横薙ぎのキックを打ち込む。
建物の壁が派手に崩れながらノーツへと向かい……
ノーツは両腕でしっかり防いでから拳のナックルで連続で打ち込んでいく。
ノーツ側は徐々に技の精度がマシていくのに敵ゴーレムは精度をどんどん欠いている。
まあそれもそうで今絶賛私が上で攻撃しているからね。
嫌がって腕で払っているもののそれに当たってやる義理はないわけで。
大剣ゼロエネミーはその重さや質量を使い弾かれることなく確実に腕へ傷を刻む。
じつはぶったぎれるかなと思っていたのだがあの根が予想以上に粘る。
並の鋼鉄より断然斬りにくい。
攻撃魔法を空から降らせるが基本的に周囲に迷惑がかからず燃えたりしないものしか選べない。
岩を落としたり足元から土槍を生やしたり。
結構耐える……
イバラ攻撃は大上段の振り下ろしに限る。
武技"猫舌打ち"で相手のガード性能を下げて……と。
先ごと分かれ結び目がその先に出来ている。
当然トゲは生やしたまま。
それが勢いよく振り下ろされているので敵ゴーレムの腕は致命打には全く届かないが見るからにズタズタだ。
あときっかけの1撃……
そう思っていた時にノーツの足払いが炸裂した。




