百九十六生目 合体
敵ゴーレムの頭を蹴り飛ばしバランスが崩れ倒れた。
まだぜんぜん倒せてはいない。
むしろ……
「わあ……! ご主人様すごい! あの巨体が浮くだなんて!」
「製造者ローズの瞬間的上昇蹴力、計測限界をオーバー。映像保存完了、自動研究プログラム開始」
「みんな、気を緩めないで!」
その時敵ゴーレムが頭を抑えつつも立ち上がる。
一応建物が無い方に蹴っ飛ばしておいてよかった。
動きにかなり重みがあるから壊されていたかもしれない。
「えっ、まだまだなのっ?」
「敵稼働率低下。製造者ローズの蹴りは効果的と判定」
「ヴヴヴ……傷ぅ……つけたなあぁ……!」
敵ゴーレムが不敵な笑みを浮かべたあと光に包まれる。
やはり変身個体だ!
ノーツが撃ち込みクオーツが腕を振るう……が。
「無効」「キャッ」
どちらも弾かれる。
変身中は想像だにしないエネルギーのうごめきがあり私も手出しができないのだ。
やがてどちらかといえば不格好といった様子の敵ゴーレムは姿を変え終える。
それは植物。
そう今まで無機物で構成されていたのにいきなり有機物を全身にまとったのだ。
自身に生えさせるように樹木が立派に伸びていた。
根や枝は敵ゴーレムの身体に入り込み血管のように張り巡らされている。
根は土を掴むとよく言われているがまさにその通りな光景だ。
いろんなところが葉で覆われていてあの不格好なゴーレムがなんだか神聖気味に見えて不思議だ。
「ヴヴヴ……! すげえ力だあぁ……!」
「対象の戦闘能力飛躍上昇を確認」
「つ……強そう……!」
実際私の比較も[強い]になった。
つまりこっちのゴーレムたちにとって遥かに格上。
援軍も呼んでいるから無理する必要は無い。
「ふたりとも下がって! こいつはすごく強くて、強化魔法をかけている今でもキミたちでは危ない!」
「で、でも……」
「製造者の敵脅威度判定は正確です。しかし、撤退の提案は保留」
「どうして?」
素直に引いてくれると思ったノーツが断らないにせよ保留判断をした。
これは意外だった。
思わず尾も持ち上がる。
「クオーツ、アレをやりましょう」
「えっ!? でもアレはもっと多くの注目を集めている時にお披露目するんじゃあ……」
「製造者の足枷になります」
ノーツの有無を言わさないしっかりとした言葉にクオーツは少し怯む。
しかしそれで何かが決まったのか目をキリリとしめた。
敵ゴーレムはニタニタしながら肩を回す。
「くるのか? こないのか? ヴヴヴ……!」
「やりましょう、ノーツ! ご主人さまの魔法で強くなっていても、かなりの強敵……協力しなければ、勝ち目はない……!」
「了解。姉妹機合体プログラム開始」
「一体何を……合体!?」
別々に作っただけなのに少し前情報交換しただけで何か仕掛けができているらしい。
ふたりは息していないが息を合わせたようにうなずき……
クオーツが跳んだ。
正確にはずっと飛んでいるが低空飛行だったのが一気に高い飛行になる。
それへ合わせるようにノーツの身体が大きく開く。
もともと開閉出来るのは知っていたが中もやはり機械だ。
そこへと縦回転しながら入り込むクオーツ。
ピタリと中に収まれば扉はすぐに閉まった。
「「合体」」
ノーツの中にクオーツが入り込んだだけに見えるが……
しかし急激にエネルギーが高まってゆき光がノーツの内から溢れ出してくる。
それに気づいたのか気づいてないのか敵ゴーレムも歩き出した。
「こねーなら、こっちから行くぞおぉ!」
光を纏い根の張った拳が真っ直ぐ突きつけられる。
見事なほどに吸い込まれるようなストレート。
そらはノーツの身体を殴りつけ……
「ヴ?」
……吹き飛ばしていたはずなのに。
ノーツの手のひらはあろうことかその拳を受け止めていた。
つまり見切ってかつ防ぎ切る。
本来なら受け止めたところで吹き飛ばされる力量差。
それが敵ゴーレムもおかしく感じたらしい。
確かにパワーを互いに込めているだろうけれど敵ゴーレムの腕がそこから引き抜けないというのも異常事態。
『行きますよ!』
「格闘プログラムオン」
クオーツの声が拡声器かなにかでノーツから発せられる。
それと共に拳を離し立ち上がって腕を構える。
相手は拳を離された衝撃で少し後ろにたたらを踏むがすぐ立て直した。
ノーツは拳に銃と同じ要領で武器を造る。
拳の追加装甲……ナックルだ。
クオーツと同じ色をしているのは偶然ではないだろう。
そして全身のスキマから蒸気を排出する。
単なる蒸気ではなく強いエネルギーを含んでいる。
そして今の蒸気で外表含む隅々までエネルギーが行き渡り全身が滑らかな光で覆われた。




