百九十一生目 導弾
実は市街地戦が苦手だ。
広範囲魔法を放とうとすれば当然市街に影響が及ぶし……
得意のイバラは大きくしならせてこその威力。
どっかにぶつかる市街地では高く上空から放つくらい。
それなのにそこそこの相手が正面にいて別の角度では私を袋叩きにしようとしているカエリラスたち。
しかも何体かは切り札の変身を持っている。
私は正面の相手に無傷で立ち回りたい。
ならば誰かが背後の相手をしなくてはならない。
『というわけで、頼める?』
『ご主人様からの依頼……! ゴーレム冥利につきます!』
『了解。バトルモードスタート』
建物の影で文字通り呼吸の音すら立てていなかった2体。
それが突如とびだしてきて驚かない相手はいなかった。
「な、ゴーレム!?」
「しまった伏兵か」
「カッケー!!」
少しおかしい声が混じっていたけれどそれはともかく。
私に襲いかかる脚はやはり止まった。
さらに……
「一斉射出開始」
「え」
ノーツが身構えるとその独特なパーツたちがうまいことずれて……
その隙間から小型ミサイルが一斉放出された。
それを見た瞬間私の声が漏れたことに関してはあらゆる相手に理解してほしい。
「「えっ」」
良かった。
みんな理解してもらえた。
「やべえ矢みてえのがくる!?」
「落ち着けきっと魔法だ!」
「弾は遅い、アッシなら斬る!」
あらゆる方向にばらまかれた広範囲爆撃ミサイル。
それは見た目フラフラしていて速度はないんだけれど……
斬るという発想はミサイルを知らないゆえ。
ミサイルたちは私を飛び越えカエリラスたちに降り注ごうとしている。
1名が前に出て自慢らしい刀に手をかけ……
振り抜くっ。
見事にミサイルへ刃が入る。
ただし刃がミサイルの真っ二つにすることはなかった。
なぜなら刃が入った瞬間に。
「えっ」
「「どわあぁ〜!!」」
大爆発。
連鎖的に他のミサイルも巻き込まれみんな吹き飛ぶ。
これは……火魔力を感じる。
さすがに純粋な科学力の品ではなかったか。
威力はみんなギャグみたいに黒焦げになっているけれど。
おかしいな……ゴーレムたちは低レベルのはずなんだけれど……
「お……お……!」
「おおおおっ!! 死ぬかと思ったっ」
「めちゃくちゃ音も派手だしビビったけれど、まだ動けるぜ」
ああ〜。
さすがに火力不足か。
全員ピンピンしている。
「傷が入ったっ、俺も強くなるぜー!」
10名ほどここにいる雑兵全員と1名のデカイゴーレムっぽいのが丸焦げに。
ゴーレムっぽいのは寡黙だし今のも平然と耐えている。
アイツだけ他より強さは上だからな……
さらには1名ここに変身可能なやつがいたらしい。
4足の獣魔物だ。
ほんとなんでも変身可能なのね!
全身が変化してゆき毛皮のコートがどんどん厚くなる。
一部層が喜びそうなコート具合。
鱗みたいな鎧もところどころつき片目が覆われもう片目も保護される。
変身はこの外見片目だけになるのが特長なのか。
――その間に無音かつ無気配でクオーツがそばにいた。
いつの間にクオーツが変身獣魔物の前に!
こっちはこっちで目の前の相手に集中しているから気づかなかった。
「くっ、どこみてっ、ガッ!」
相手が攻め込んで来たので首にチョーカーと化していたゼロエネミーを解き放った。
不意の剣出現に対応しきれず身体が大きく切り裂かれるカエリラス兵。
ただ後ろに飛ばされただけで足で踏ん張って耐えた。
身体の鎧はしっかり硬いらしい……
まあこちらとしてもアレで倒す気はない。
「っく……! 1撃が重い……剣がそんなところに、だが、今の俺ならっ」
一方クオーツ。
変身後の叫びをしようとして目の前に来ていた敵……クオーツに気がついたらしい。
構え直す。
「ハハハ、雑魚が来たぜ! やっちまおうぜ!」
「「おおーっ!」」
「む……ご主人様から賜ったボディを見て、失礼なの」
確かにクオーツは見た目すごく小さそうだし弱そう。
ただ思い出してほしい。
クオーツは……純正テテフフライト産だ。
「そーれっ」
腕を振るう。
それだけで光を帯びつつ瞬間的に凄まじく巨大化した。
目の前で見ていたら錯覚か何かにしか見えないだろう。
その出先は平らで……
腕や手に突然直接殴られた3匹。
もちろん変身獣も含む。
平らかつ宝石イコール斬撃。
天然の刃が彼らを襲いまとめて切り裂かれる。
「ぐあっ……!?」
「今、なに……」
「えーい!」
さらにそのまま地に叩きつける。
わあエグい。




