百八十九生目 悪魔
敵はカエリラスだった!
とはいえ前までのエリート感はまるでなし。
明らかに残党だった。
カエリラス自体はいわゆる『暗躍する世界組織』という面が強くあらゆる角度から世界を混迷に陥れ自分たちの利益を得ようとしている。
利益も様々で分かりやすく金から魔王崇拝それに元の世界へ戻るための手段としても……
組織としての高い理念や結束力があるわけではなく世界中で呼び名もかわり作戦や行動がまるで違う。
それなのに少し前この世界を壊滅手前まで追い込みかけた作戦を全体で押し進めれたという存在。
ある意味悪党の悪党による悪党のための組織……
それが彼ら。
ここ10年単位は魔王復活を旗印に活動していたからすっかりそのための組織みたいな認識だが根は違う。
もっと複雑且つ厄介だ。
ただ……その目論見は私達が破った。
そして魔王復活作戦で押し進めていた者たちはあっさりと他の面々から手のひらを返され……
横のつながりが弱い多重組織らしく切り捨てられた野盗まがいが今目の前に……
もちろんどのような作戦があってここで暴れにきたかわからないから油断はできないんだけれど。
なんだかあの巨大組織との対立で激しく生き残りをかけていたころを思うと……
遥かに滑落した姿に無情な時の流れを覚える。
『敵対組織カエリラスと認定』
『攻撃許可をー!』
『ちょ、ちょっとまってね』
私の方に製作者特権念話でゴーレムたちの声が脳内に響く。
初陣の気配にウズウズしているらしい……
ざっと観た感じ背後にいる巨大なゴーレム的な魔物以外練習相手にもならない。
ただそれは私基準。
一般的な魔物には脅威だ。
それに数がとにかくキツイ。
物量は戦闘において正義だからね。
とは言えこっちの軍より下だ。
制圧となれば100程度の数簡単に抑えられるだろう。
だからこそ……この襲撃は謎だ。
中途半端に大きい。
「お前達、何が目的だ! カエリラスを名乗るということは、絶対に逃さないぞっ」
「目的? わかりきったこと! こっからは作戦も何もねえ! 目には目を、歯には歯を! 俺たちがやられた恨み、全部返して暴れるのみよっ、そんで笑いながら帰ったらあ!」
慣用句の誤用だ!
ちなみに彼が言ったのは皇国慣用句『剣には剣を、魔には魔を』で意味合いが同じなため同じ誤用を脳内変換した。
というかそんなめちゃくちゃアホっぽい中身で大丈夫なのか。
もうヤケになって大丈夫じゃないのか。
ただとにかく謎の自信が満ち溢れている。
警戒するにこしたことは……
『ローズさん大変です! 最初の方で暴動を起こした相手が……例の変身を使いました!』
『なんだって!?』
『向かわせた軽武装の軍員たちは抑えきれません……ただちに本格出動します』
仲のいい軍団員の子ひとりが念話で情報を投げてくれた。
遠くで爆発音がする……
「おーおー、向こうでおっぱじめたようだな、俺たちもいくぜーっ!」
「「うおおおおー!!」」
凄まじい叫びと共に今度こそ正面衝突か。
一気に迫ってくる!
「お、お姉ちゃん……」
「ハックはたくさん戦える誰かを呼んで戦えないみんなを保護して!」
「わ、わかったっ」
『敵対行動を視認。バトルモードスタンバイ』
『あー、ちょっとだけ待ってて!』
ハックには下がってもらいこっちの秘密兵器はやる気はともかく待機してもらう。
まず私が様子を見よう。
実際どのくらいやるのか……
まっすぐ向かってくる敵達がだんだんスローに感じられる。
私が集中しだしてドライが肉体操作を切り替えたゆえだ。
補助魔法は来る途中にかけ終えている。
2回その場で軽くステップを踏んで――
「き、消えっ」
――跳んだ。
本当に彼らの強さはこのぐらいなのか?
誰も目で追えていない。
おかしい……違和感がつきまとう。
とにかく変身される前に……
上空から思いっきり蹴り込む!
急速なケリは光をつけ恐ろしい速度で突っ込む。
それは見事目の前でイキリ倒していたニンゲンの頭部に当たり……
思いっきり吹き飛ぶ。
そのままジグザグに敵の合間をくぐり抜け1発1発蹴り込んで行く。
なお針と爪と足の"連重撃"による重ねる攻撃。
私のこと誰も見ていない……
ちゃんと戦闘方法を学んで理解したことがある。
敵の視線感覚だ。
正確には視線そのものを感知しているわけではない。
こちらへの集中具合。
気の配り方……正確には察知している具合。
視界に入っていてにおいや音が届いていてもそれを認識しているかどうか。
今までなんとなくやってきたそれらが具体化して認識し……
その間をスルスルと抜けられる。
うわ……こんなに楽にできたことなのか!




