百八十五生目 小柄
ハックがホルヴィロスに現状解説した。
「――かくかくしかじかというわけなんだ」
「いやー、それはすごく良いことだね! ローズが更に魅力的になるための手伝いならば、私も惜しまないし倉庫の肥やしはどんどん使うべきだよ!」
「ええ……」
まずい。
ホルヴィロスまで目を輝かせはじめた。
止める係がいない!
数的不利で私が反対しきれるわけもなく。
折れるしかないか……
「ほら、また身代わり人形あるからねえ」
「わかった、やるよ……やるよ!」
「それでこそローズだね!」
テテフフからもらった貴重品……
こんな扱いでいいのだろうか。
もはや祈る気持ちで魔力を作り始める。
「よし……よし行こう……集中を……」
またイバラをそこらへんに伸ばしておく。
身体を固定して脱力。
よし……やるぞ。
荒ぶる魔力をよりねりあげて放つんだ。
土魔法"ゴーレム"は複雑な設計図はない。
そのかわり今ハックが用意しているように魔法陣などはあるけれど。
使える素材は1つのみ。
純粋な力のやり取りになる。
私自身の内側にある創造の力を形にするんだ。
どういう形になるかどういうモノになるかは想像がつかないが……
私自身の内側にあるもの全部ぶつけるつもりでやるんだ!
「お姉ちゃん! いくよ!」
「やああぁーッ!」
「いっけえ、ローズ! ローズ!」
後方のホルヴィロス応援がやや騒がしいけれど……
ハックが私の魔力をただしく導くように整える。
いける……さっきの感覚を思い出すんだ。
魔力は流動的……魔法で形に整え……
それをテテフフライトに固める。
定着して……命を吹き込む。
「今だ!」
「ひっぱれーっ」
ハックの掛け声と共に私が魔力のイメージで引っ張り上げる。
土魔法"ゴーレム"がただしく発動した感覚。
ただ……重い!
力を使っているわけではないので感覚的な話だが……
このテテフフライト内から形を引っ張り上げるという作業が著しく重く感じる。
もっと力を……!
「わっ、すごいパワーで、こんなに大きなテテフフライトが光を……!?」
「すごいやお姉ちゃん……単純な魔法な分、こんなにわかりやすく結果が! いけ、お姉ちゃん!」
「ま、まって、なんでローズから封印しているはずの神――」
集中……あらゆる感覚を塞ぎ……魔力だけに一極化。
視えた。
研ぎ澄まされた魔感が捉える真。
テテフフライトの輝きがどんどんと強くなり……
虹色にきらめいたかと思うと。
……中から抜き出されるようにナニカの形が浮き出る。
そのまま私に引っ張られるようにその塊はテテフフライトの中から抜き出て……
まるでねり飴のように見える。
不思議に柔らかそうなその感触は完全に抜き取られるとより顕著になり。
まるで決まっていたかのように形が変化しだす。
その姿は単一のモノで出来ているとは思えないほどに複雑に色づいていき……
やがて変化がおさまる。
それはまさしく人型に近い。
しかし特徴的に上半身のみで下半身側はなく剥き出しのテテフフライトが複雑に結晶化していた。
そのせいもあって全体的に小型。
肉体は全体的にテテフフライトの色味を残しているため淡く透き通るような宝石風味。
しかし身体の中心ほど色見が落ち逆に腕や頭頂部は向こうが見えるそうになるほどの色合い。
そのため思ったよりもしっかりと存在感があった。
顔もあり宝石がまるで髪の毛や飾りにも見える。
瞳はブリリアントのように光を乱反射していた。
知性が定着し落ち着いたのか瞬きをしてゆっくり自分の腕を確かめる。
手は平らなだけで……いや!?
魔力がほとばしりひねるような力が入ったかと思ったら繊細な五指が生み出された!?
私のあの失敗したときの力がこんなふうに……
握って開いてそのあとまた平らな手に戻る。
自由に手の先を変えられるようだ……
本当にねり飴みたいに見えてくる。
「ええと……こう? これで、つたわっていますか?」
なんだか拙いような作りかけなような声が響く。
目の前のゴーレムからだろう。
私達は互いに顔をあわせうなずく。
お互いとても興奮していた。
これは……成功だ!
「もちろん、聞こえているよ!」
「よかたです。今調整ちうです」
「すごい……このゴーレムは自分や他者に対してちゃんと疑問を抱けるんだ……お姉ちゃんすごいゴーレムを……」
ハックが何やらつぶやいているが今目の前の……声は女性的なゴーレムはすごい存在らしい。
やはりテテフフライトで作られたのが良かったのか。
何度か彼女は調声するとしっくり着たらしく笑顔を見せる。
「こんにちは、わたくし、今造られたのですよね? ご主人様方、わたくしの名前はありますか?」
「名前……名前かあ」
種族名じゃなくて……ということだよね。