百八十三生目 機体
ハックが私のゴーレムづくり魔法のためにめちゃくちゃふんだんに品を用意してくれた。
プロの目利きなので間違いはないが……
これ明らかにタダで貰っていい範囲超えている。
「ここが動力系統を通す部分で、魔力循環の他にエネルギー確保が必要だから……」
「な、なるほど……」
さっきから設計図の説明をハックから受けているけれど恐ろしく高度だ!
私はこれについていけるのだろうか。 というか……
「――ここが思考を司る重要機関になっていて……」
「なんだか、設計図よりも数段上の素材が使われていない……?」
「お姉ちゃんの力を見るに、このぐらいが丁度いいからねぇ!」
いい笑顔で答えられた。
私のことをなんかの化け物だとでも思っているのだろうか。
ものづくりに関しては圧倒的にハックのほうが上なはずなんだけれど。
このまま任せていいのだろうか……
いやむしろもう若干取り返しのつかない段階まできているというか。
とても良いテンポで準備されていて私の前には私も加わったゴーレム作成用重魔法陣が完成している。
やるっきゃない。
ハックのやる気に私も乗る。
こうなったらやりきってどうにかしてこの素材たちを無駄にしないようやらないと!
私が普通の土ではまともなゴーレム製作が出来なかったのは私の力に素材が耐えられなかったから……
だからこれならば私の力をちゃんと出せる。
私の出力が不安になればなるほど器用さが落ちてしまう。
「なんとなく分かってきた。そろそろ……やる?」
「僕がサポートするから、お姉ちゃんは全力で作り上げることに集中してね!」
「わかった!」
そう言われたらやるしかない。
ならば私がやることはひとつ。
力を出し切るために!
私はイバラを身体から伸ばす。
地面に複数本伸ばして挿し込む。
しっかりと固定。
普通は動けなくなるからやらない全身固定モード。
私がこれをやるとハックは一瞬困惑したけれど意図を汲んでくれたらしい。
「うん」
ハックは私の前に立ってから振り返る。
ちょうど魔法陣と同時に見られる位置だ。
互いにうなずき準備完了。
"同調化"を使いハックと思考を共有する。
やることは……!
「それじゃあ、最後の材料をお願い!」
「よし……そうれ!」
私はイバラを1本伸ばし……
イバラトゲをそっと腕に刺しこむ。
先だけの痛みを耐え……
抜き取れば一滴の黄色血。
そのイバラを伸ばしてゴーレム魔法陣で自切。
そう。
最後の素材は自分!
さあ生まれよ機兵!
地魔法"ゲートキーパー"!
「支えるっ」
ハックが困難な調整をやってくれているので私は集中して魔法を放つ。
光が前へと放たれ魔法陣を動かしていく。
そうして素材たちと共鳴し……
ひとつひとつ素材たちが本来の力を発揮するカタチへと練り変わりあげられていく。
バラバラでくっつく様子のないもの同士だったが各パーツに変わる事で次々連結していく。
素材同士融合し中に溶け合って……
高額なインゴット化した金属たちをふんだんに用い外側パーツが作られ……
やがてひとつになる。
宝石もハマって魔力を帯び輝く。
むむむ……これは吸われる……!
凄まじいエネルギーの要求具合。
もっと寄越せとささやかれる。
ならば全力で!
精度……魔力……魔法式……全てに力を注ぐ。
だからイバラに身体を任せて脱力する。
自身の内に活性化させた魔力を完全に活かし切るには肉体にかまっている場合ではない。
精神と魂に全集中。
いけぇ!
「うわあっ!? お姉ちゃん、この力って確か神の……わっ!?」
ハックが何か言っているが今脳内にそれへ割く余裕がない。
神の何かとか言っていた気がするけれど私は今神力を封印しているし……
その間にも全身がつぎつぎ出来上がっていく。
目まで出来上がれば完成形だ。
「はあ……はあ……どう……?」
このゴーレム……自爆をし……
「「わっ!?」」
謎の異音で震えだした!?
やっぱり力が暴走気味なんじゃ……
そう思った次の時全身のスキマから排煙がされる。
濃い魔力の煙……
かわりにゴーレムの震えは止まった。
まさか過剰分抜いたのか……意図的に!
むしろ過剰じゃなくして自身の駆動系隅々まで魔力を行き渡らせたのか。
全身がゆらめくように光を纏う。
不可思議な構造だ……
その身体は巨躯だった。
身体の中央はちいさなひとりいってしまえそうなくらい。
実際に開閉扉もついている。
なん……なんだこのゴーレムは!?




