新章 隠された古代の存在 百八十一生目 匙投
筋トレ。
柔軟。
打ち込み。
単純ながらそれらを改めて集中しちゃんと行う。
特にニンゲンたちの効率のよいやり方などもうまく取り入れる。
前世の記憶も探ったりしてね。
ひたすら鍛えるのをなんとなくやらずに行うのはしんどい。
考え集中し様々なことを同時にこなす。
より実践的に。
次は走り込みだ!
おもりをつけてアノニマルース1周!
こんにちは私です。
あれからもまた多くの依頼をこなしつつ鍛え上げを繰り返している。
幸い前のカツマゼみたいなことは今の所起こってはいない。
そしてなんやかんやと私が土魔法または地魔法に頼りまた贔屓目にみて優れているのは私が土の加護を種族的に持っているからだ。
黄色い血がその証。
私の能力的にとても土と相性がいい。
が。
今私はすごい問題に直面していた。
土魔法と地魔法なのだが……
[ゴーレム 土でできた無機物生物を造りだす]
[ゲートキーパー 岩石などの複数物から無機物生物を造り出す]
この2つのなんてことのない魔法。
ぜんっぜんできない。
恐ろしく下手くそ。
私は果たしてハックとの3つ子であり姉なのかと疑うレベル。
どうしてこんなにも出来ないのかと疑うレベル。
ということで。
「コツなんかを教えて!」
「お姉ちゃん!? そんなかしこまらなくとも!」
ニンゲンで言うところの頭下げをした。
ハックに対してだ。
そのあとなんやかんやさっくり承諾してくれたので……
ハックの家から少し離れたところにきた。
「それで、ゴーレム作りができないってどういう……」
「ちょっと見てて欲しいんだ」
私はハックと同じ向きになおり集中する。
土魔法"ゴーレム"は例えば土だけでゴーレムを作れる魔法。
地魔法"ゲートキーパー"は複数素材前提でゴーレムを作り上げる大技。
ハックを見ているかぎりどちらが有利ということはなく完全に用途が違う。
"ゴーレム"は早くできて素材が単純な分用意も簡単でひとつのことに対して強く対応できる。
スケルトンはこの"ゴーレム"の亜種。
対して"ゲートキーパー"はじっくり作り上げ材料も事前に調べ上げて……
規定品だったりオリジナル品だったり作り込み。
複雑な行為をしやすくするゴーレムだ。
スケルトンのリーダーたちがこちらにあたる。
「まずは単純な"ゴーレム"」
唱えれば魔力が地面に集い土が盛り上がっていく。
「お姉ちゃんいっけえ!」
地面が完全に盛り上がったところに魔力が走りゴリゴリと形が作られていく。
「おっ、いけそ――」
そして形は何か全身をねじれ巻いたニンゲンらしき物質。
さらにはちぎれ飛びバラバラに砕け散った。
「――え?」
「ね、変なんだよ……私はこんな風には制御していないのに」
正直昔からハックの得意分野だったゴーレム関係はそこまで気にしなくていいやと魔法チェックだけして終わっていた。
今あらためていろんな方向性を増やすことを求められ手を伸ばしてみたら……
めちゃくちゃ才能がなかった。
ふつうに人型ドールを作って立たせたかっただけなのに自壊したのだ。
ハックも目を丸くしている。
今から心が重いが地魔法"ゲートキーパー"もためそう。
規定の品……今回は初心者にオススメと書かれていたミニキーパーライトを作る。
素材はお手頃な木材片に土そして土魔力石片。
レシピどおりに構成を考え魔法を唱え操っていく。
欠片が浮かんで木片が細かく骨組み観たくくっついていく。
そうして土が肉付けしてゆき……
「こ、こんどのは!」
ぬいぐるみサイズのそれは凄まじい勢いで膨らんで。
「お姉ちゃん?」
自爆した。
「お姉ちゃん!?」
さっきまでゴーレムになりかけていた素材たちがあたり一面に広がる……
どうして……
思わず私もハックも脱力する。
「……せんせー、ハックせんせー、これこれ何がだめなんてすか、どう基礎をやり直したら……?」
「あー、いやー……これは……」
多数の教え子を持つハックする呆然として答えに詰まる。
ハックすら駄目だったら本当に打つ手なしなんだけれども……
やはりあれか……魔法を抜いた純粋な家庭陶芸から始めないとだめなのか。
「僕ではどうにもできないかも……」
「ええっ!? そういわず、どうにか出来ないっ?」
若干ハックがさじを投げている。
これはまずい。
ハックすら教えられなかったら私はどうすれば良いんだ。
私もかなり困惑しているがハックの慌てたにおいがすごい。
ふだん感情のにおいなんてある程度操作できるから許容量をオーバーしているとみえる……
どうしようこれ。
「いや、これなんというか……お姉ちゃんのパワーがおかしいんだよ?」
……えっ?




