表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
死世界の住人は生きているか
1275/2401

百七十八生目 習得

 銀竜の引退した者である祖銀。

 縁あって彼女から教えを受けている。

 彼女……?


 性別はともかくとして祖銀の教えは確実に本物だと実感できた。

 私の全身に着ているイメージがそれぞれ正確にできる……

 ひとつひとつどう着るかも覚えている。


 その感覚を具現化して服をかばんや異空間から引っ張るらしい。

 言われたり見たりはしたもののまだそこまで至っていない。


 また前の服に慣れたと思ったら新たな服がわいてでてくる。

 私は自力着せ替え人形になりながら最終的にどんな服にでも対応できるようにしなければならない。


「さあ、ここまであんなに優秀に来たあなたならできるはず」

「そ、そうは言われても……!」

「もっと基礎を思い出して」


 ここに来る過程で何も危険なくまっすぐ祖銀の元へ訪れたのははじめてらしい。

 それで驚かれるのは良いが……

 うーん……ここまでの道のり……基礎……


 ああそうか。

 もっと"魔感"を働かせる。

 視覚に囚われず……


 嗅覚や聴覚そして触覚を働かせる。

 目を閉じて集中。

 視えた……服たちのカタチ。


 単なる見た目じゃない。

 服にはカタチがあるんだ。

 想像以上に複雑に。


 編まれた繊維1つ1つ。

 織り込まれた魔力1つ1つ。

 私が見えているようで見えていなかったもの。


 私がふだん世話になっている服屋さんを思い出す。

 服屋さんが視えている世界って……

 こんな感じなのかな。


「着られましたね」

「……えっ? あっ!」


 集中していたらいつの間にか私の身体に服をまとっていた。

 まるでそこにいるのが当たり前のように。

 私自身は服を身体に溶かし込みふだんは見えなくしているが……


 まるでそれだ。

 今私はこの服に対して違和感がない。


「今、私……?」

「もちろんまだ、ただ服を着れただけですよ。さっきまで服に着させてもらっていたのですから、その自覚ができたのが、進歩です」

「なるほど……!」


 ただ服を着るだけでここまで重労働になるとは。

 私の服への認識が甘かったということか。

 ならばもっと力を込めてやるしかないだろう。















「よくやりましたね。さらに自分の家で完成まで仕上げると良いでしょう」

「はぁ、はぁ……わかりました……!」


 もはやどれだけの間複数の服を着替えていたのかわからない。

 私は地面に倒れ込み荒く息をつく。

 瞬間的に着替える魔法の基礎をなんとか身につけたぞ……!


 けれどまだ出来はしない。

 知識として身につけた。

 服のことで頭がいっぱいでしばらくの間離れなさそう……


 疲れはとにかく服にさく感覚の多さのせい。

 最終的に今の私ならば服がどれであれ全て身体になじませる作業ができそう。

 魔術展開の仕方は身につけたからもう少しだ。


「これほど短期間の間にひととおり身につけるとは……ワタクシも教えがいがありました。単なる獣神と一線を画しますね」

「獣神……? あ、はい、ありがとうございます」


 祖銀からひと息つくためにかコップを手渡された。

 中のにおいはお茶かな。

 単なるお茶じゃなくて魔力が込められて私の精神を癒やす成分が含まれている。


 ほっとひと息。

 あったかい成分が身体の隅々まで行き渡る。


「深い意味はありませんよ。あなたのように獣の神のことを言います。ただ、獣の神は他よりも比較的大自然に近い思考をしています。高い思考力より自然と一体化することを優先していて融通が効かないというか……つまりはまあ、賢さの方向性が違うのです」


 うんまあなんとなく遠回しに言いたいことは伝わった。

 つまりは本能のまま生きている感じと。

 ちょっと知り合い神たちの顔が浮かんだけれどとりあえず置いておく。


「私の場合、少し事情が特別ですから」

「その特異な魂に関連することでしょうか? 若干変わり種ですよね」

「あ、わかるんですね……ええ、まあ少し」

「深く聞く気はないのですが、奇特な運命のようですね」


 やはり彼らクラスになるとみえるものが違うのだろう。

 私が魂単位で違うことを見抜いた。

 結構あれこれあってこの世界に魂が馴染み変質しただろうにまだバレるのはちょっと笑ってしまいそうになるが。


 私は軽い笑いでごまかしつつお茶を飲む。

 お茶はどこまでも温かった。











「僅かな間でしたが、有意義で充実した時間でした」

「いえ、こちらもよくお世話になりました。しばらくは旅の方を続けられるんですか?」

「ええ」

「その間にぜひ、アノニマルースにもお立ち寄りください」

「もちろん」


 私と祖銀は習得作業を続ける間雑談を挟んだりして……

 なんやかんや仲良くなっていた。

 どこか通じ合うところがあったのか蒼竜よりもよっぽど心通った気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] (前話と...) (内容...) (かぶってますよ...) [一言] そういや服にも意思みたいなのあったっけ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ