百七十一生目 崩壊
空魔法"ディザミネイション"。
それは対象の空間ごと拡大させ……
一気に戻す
膨張。
その表現が1番ただしい。
空間ごと歪み魚眼レンズで覗いた以上に膨らんでいく。
そうしてパンパンに膨らんだ後……
一気に収縮して元に戻る。
見た目はヘンテコなだけだがエゲツない魔法だと思う。
自分の肉体が無理やり膨らませられたらというのを想像するのが1番分かりやすい……
もちろん空間ダメージのため本当に体がブクブクに膨らむわけではないが……
もろい相手ならばこれで破裂死するだろう。
更にその後勢いをつけた収縮で細胞は圧縮されるわけで……凄まじいプレスされるのと同じだ。
全身がボロボロになるほどの攻撃を受け球体は全身から体液を吹き出す。
いや闇のオーラと混じっててわかりづらいんだけれど。
さらに謎の震えを起こしだした。
「わっ!?」
凄まじい勢いで光の衝撃が飛んできた!
私は勢いのまま吹き飛ばされる。
こういうの結構痛いんだけれどね……!
なんとか空中受身をとって体勢を立て直す。
球体は……まだ無事か!
体液が止まっている。
ただ生命力の減少が著しい。
あと1回大きい打撃を与えられれば……
そうこう思いつつ接近している間に神力がチャージ完了。
だがまた空から暗い球が降り注ぎ……
大剣ゼロエネミーが吹き飛んだ影響で私の方に腕が伸びていてきている。
このままでは大打撃を避けられない。
神力を……神力塊に変化完了。
自分の中に生まれたこの塊を利用する。
"大地の神域"を使う。
「世界を塗り替える!」
暗闇の世界。
それが私の降りて踏みしめたところから。
色づく。
地面に大地が広がり……
地面が息づく。
荒々しい陸地はこの場を支配する!
暗闇の中へ確かに私の神域が現れた。
ゆっくりと降りた黒い球たちだが……
できるか私……自己神域の管理。
「おさえて……なくなれっ」
黒の球が……一部軽く爆発して不発におわった。
さらに発動した黒の球たちも力が抑えられている。
それは私が駆けてより大地の力が強まり近づいたその先から。
次々黒い球が避けていく!
まあ私が意識的に避けさせているんだけれども!
大地の力で黒い珠の魔力を相殺または押しのけているんだ。
そして!
この距離から武技"地魔牙砕"!
とにかく駆けるんだ……急いで!
"地魔牙砕"は大地のエネルギーを全身に満たしながら走る。
周囲は濃い大地のパワー。
つまり私の中に走れば走るほど力がみなぎる!
私の足元から踏めば踏むほど次々土の光が盛り上がる。
それほどまでに強烈なパワーとなった今こそが全力を出せる1発!
けど……このままだと腕たちが邪魔だ!
「ゼロエネミー!」
大剣ゼロエネミーが私の目の前に瞬時に飛んできて……
腕を切り払う!
私はわずかにできた隙間を縫うように駆ける。
でもまた新たに腕が生えてくる。
しかし私自身は限界まで動きを変えてはならない。
ギリギリ……足運びだけで!
「ッ!」
私がスレスレで避け爪が顔をかすめる。
黄色い血が飛び更に来る腕の爪は頭を下げて避ける。
「アグッ」
耳が斬れた……!
大丈夫まだいける。
これで脚が緩むほどの傷はない……!
牙に大地の力まとわせ……
飛びかかる。
邪気すらも今の私なら貫くのだから!
爪と牙が巨大な土の光をまとう。
もはや敵の闇の光とかち合う!
この大地の場ならば私のほうが……
「ガアッ!!」
打ち勝つ!
砕けた闇の光たちを押しのけ……
1撃。
球を完全に破壊するという意志で切り裂き噛み砕く。
肉たちを大きく割いて……
中の骨まで届くように!
そのまま貫通する。
そうして私は体を反転させ……
球から離れるように着地。
直後に球が激しくうごめく。
中からなにかに押しのけられるかのように。
今の攻撃でそそがれた爆発的なエネルギーに耐えきれなくなったのだ。
そうして歩いて離れれば……
カツマゼ球は崩壊する。
カツマゼの構成していた肉体たちがみなバラバラにほどけていく。
彼らはやっと……解放されたのだ。
肉体が全部崩れていく間に部屋の景色が戻っていく。
元の部屋だ。
私の神域も解除し……
待った!? イヤリングがないぞ!?
このまま戻したら生命力を霊的瘴気に持っていかれちゃう。
そうか……さっきの耳への攻撃で同時に切り落とされたのか。
どこだー。
イヤリング探さないと。