百六十九生目 祖骨
骨棒を破壊した……と思ったら。
そこから急に神力を感じた。
嘘……今までなんの前兆もなく感じたのに。
まさかカツマゼに取り込まれた神がいたの!?
骨棒はその合わさった骨たちが
崩れていく。
カツマゼ自体が闇系統の魔力を持つということで骨棒が深く闇魔力を纏っているのは気にしていなかったが……
今その姿が顕になった。
「骨から……神の武器が!?」
それを骨と呼ぶには禍々しすぎる。
武器と呼ぶには生々しすぎる。
それは深い闇のオーラを纏ったまるで剥ぎ取ったばかりの肋骨のうち1本。
まっすぐに伸び先が鋭く伸びた骨。
しかしひどくネジ曲がっている。
いわゆるねじれ角みたいなまがりかたではなく……
根や中心から曲がっている。
こんな骨ありうるのか……
細かく見ると骨には何かしら解読ができない紋様たちが刻まれていて……
ありえない話だが……
まるでまだ生きているかのよう。
単なる白骨じゃない分生々しくて痛々しい。
そして骨自体がにじみ出るような黒色。
今にも零れ落ちそうな墨色。
血の錆びきった色にも似ている。
私はそれを見た瞬間。
もはや思考よりも早く龍鱗の飾りに前足を伸ばし……
胸の宝石に当てた。
「神力解放ッ!」
私の胸宝石から強い光が放たれ……
体に不可思議な力が宿る。
神力を呼び出し……
骨から邪悪な波動が放たれた。
「グアッ!?」
凄まじい力で吹き飛ばされる。
なんなんだ……!
もしや今の神力のこもった凶悪な1撃!?
だとしたら助かった。
生命力減少はほとんどなく当然生きている。
私が前の反省を活かせてなかったら死んでいた。
そして今の邪悪な波動で……
カツマゼ虫たちが一斉に肉の中へ戻る。
さらにはカツマゼ体が動き……
カツマゼ体の肉体が大きく変わる。
あの骨にまとわりつこうとしている?
"観察"!
[祖の骨 混沌の中から生物が生み出されるさいに、媒介にされた骨とされる。しかし骨というよりも無機物なため岩に近い]
偽装されたっぽい文面……
やはり神域のモノか。
そうしている間にも肉は形をつくってゆき……
肉たちは完全に祖の肋骨を覆い尽くす。
それは今まで少なくとも生き物としての形を保っていたものすら違う。
腕と足がパズルのように組まれた球体。
球体がそらに浮かび私を見下ろす。
今までは開いていた顔の目も口も閉じていて……
先程までとはわけが違うと無言のうちに答えている。
これを落とすには……
『……若き、祖の力持つものよ』
「ウッ!? この念話は……!」
私の頭の中に念話が!?
これは……目の前のにある祖の骨?
知らないはずなのに知っている私という体の基盤にあるような言葉。
『……見極めよう。牙を掲げよ』
祖の骨から放たれたのだろう闇のオーラが球体を包む。
球体からしたたるかのように墨のような闇光が発生して……
轟音と共に辺り一面に暗闇が広がっていく!
一瞬で場が黒く染まる。
ここにいるのは私とカツマゼのみ。
双方だけがまるで宇宙に浮いているようになっている。
互いのことだけがくっきり視認できる……
ここは……祖の骨が作り出した神域だ。
今までとは比べ物にならない全力が来る!
「ッ!」
黒いオーラに肉体が伴いいくつもの鉤爪のついた手が生えたように変化。
危険を察して跳ぶように駆けると次々と私めがけて腕が飛んでくる。
地面へと振り下ろされた腕は外れると霧散しまた黒いオーラへと戻る。
む……強い魔力!
魔法が来る。
大剣ゼロエネミーにとにかく斬らせて私は駆けて避けるのに集中だ。
魔力反応が爆発的に増す。
魔法が発動したんだな。
どこだ……上か!
身をひねるようにして慌てて空から降る黒い玉を避ける。
いくつもくる!
とにかく避けまくらないと!
右へ跳び左へ転がって後ろへ飛ぶ。
勢いをつけたまま着地し一気に駆ける。
背後にどんどん落ちる……!
黒い玉たちは次々と空へ飛び上がり……
光を放ち黒く大きく震える。
……うわっ!?
「体が、吸い取られる……!?」
重力か何かか!?
足を踏ん張って駆けても……
別の所にも重力が!
まずい……どれかから逃れればどれかに吸われる。
背中針翼展開!
空を飛ぶ。
「う、ぐ、ぐ、ぐ……」
行動が制限されている今何されてもまずい。
大剣ゼロエネミーは必死に手を斬り落としては手に殴られてを繰り返している。
だったら……空魔法"ミニワープ"!
空高く私は移動する。
黒い玉は皆地上にあった。
ならばここで耐えれば……!
まだ吸引をしてくる……
けれど!
魔法が成立した……これで終わるはず。




