百六十六生目 頭上
連続大爆発が起きた。
武技"龍螺旋"により10本ほどのイバラを当てた光による爆発。
これはさすがのカツマゼもこたえたはず。
煙の中からその姿が見えてくる。
骨棒を振り煙を割いて……
その悍ましき肉体が無事だとアピールするかのごとく。
ただ。
次の瞬間にカツマゼは多数ある膝が崩れる。
そして……中から何かが飛び出してきた!
「うわっ!?」
穴という穴から大量の細長いミミズのような何か。
虫……なのか。
もしや大繁殖した寄生虫!?
だとしたらこの機会を逃す手はない。
火魔法"ヒュージフレイム"!
巨大な火炎玉を作り……行けっ!
大きな火炎がカツマゼの身体を包み込み……
激しく燃え上がる!
もうひとつ火魔法"エクスプロージF"だ!
カツマゼを中心に火の爆発が巻き起こる。
もちろん2連続。
虫たちがつぎつぎ跳ねていく。
あ……あれ……近寄りたくないな……
とにかくイバラを振るいそろそろ戻りそうな雰囲気を感じているので連続ではたく。
イバラの先に嫌な感触。
振り払うようにイバラたちを振りまくり……
トドメの1撃を入れた後自切。
本来なら引っ込めたほうが良いのだけれどなんか……虫が乗っていたら嫌だし……
急速にカツマゼ虫がカツマゼ体に戻っていく。
どうやら緊急避難が終わったらしい。
そして……何やら遠くにあった気配が消えた。
冒険者たちだ。
あの感じはワープに成功したらしい。
よかった……ちゃんとスキを突けたようだ。
さて目の前の存在はどんどんと異様な気配を感じるように。
生命力が3分の1ほど減ったが……
どうやらかなりお怒りのモードらしい。
肉たちが次々と姿が変わっていく。
ただ肉が練り変わっていくのではなく腕や脚が形を残したまま互いに繋がるように変わっていく。
いままで無造作にあるだけだった形がひとつの形に。
体が大きく広がり……
やがて6つの強靭な脚を持ち体を支える形態が生まれた。
体の中央は先程と違い空洞。
顔は円状の体にまんべんなく配置され……
1つの腕があまりに大きく目立つ。
その腕は骨棒を持ち全てを破壊せんと形となる。
腕と腕がまるで筋繊維のように繋がりそれ自体が1つの荒々しい存在感。
完全に殺意むき出しのモードだ。
「ゴォォォッ!」「ガアァァッ!」
「ッそうか!」
上に伸びていた腕が振り下ろされギリギリ気づいて転がるように避ける。
光の余波を食らったが直接当たるよりはマシ。
先程まで広かった室内はカツマゼの巨大化で一気に狭まった。
そしてカツマゼの腕の大きさはちょうどこの部屋の端まで届く。
さらに脚はガチャガチャと素早く平行移動をし先程までの機動性より格段に上昇。
上半身の腕と下半身の脚が完全に別稼働している……
凄まじく腕と骨棒を振り回しつつ部屋ごと破壊するかのようにこちらへ振り回してくる。
まるで縄跳びするかのように必死に避けている。
きっつい……!
「うわっ、やあっ、わああっ!」
さっきまでとまるで動きが違う!
こんなにキビキビ殺しに来るか!
さらに脚が落ちているイバラに近づき……
脚を使って中央の空間に放り込むと。
勢いよく体が縮んだ。
ギュッとイバラを潰した後……肉の間に取り込んでいる。
うわっ。
イバラ吸収!?
あれが取り込みか。
取り込まれたイバラはカツマゼの体の一部から垂れ下がりトゲをあやしく輝かせる。
尾みたいになっている……
イバラそのものはたいしたことないが……
肉体そのものがああされたら大打撃だ。
弱っているときにされたら取り込まれてしまう。
絶対弱っている姿は見せないようにしよう。
そう考えている間にも壁際をガタガタと走り回り腕を振るってくる。
私の方へ確実に腕を折り曲げ骨棒を当てて来るから結構厄介。
大剣ゼロエネミーは取り込まれないよう注意しつつ急ぎ攻め込んでいる。
正直私本体が余裕なさすぎる……
ガンガン腕や肩を斬り裂くが逆に弾かれる時すらある。
光同士の衝突がより激しくなっている……
私はうまく骨棒の直撃は避けつつ……
受け身をとって腕の上へ。
腕の上は思ったよりも温かい。
その温度がより一層気味が悪くて……
一気に駆ける。
腕たちは互いにしっかり結び合っているおかげで逆に引っ張られたりはしない。
持ち上がる腕の角度が急になりすぎる前により接近。
こういう単調なタイプ"無敵"入らないかな……と試してはいるんだけれど。
先程のように群生個体として存在していると"無敵"の対象がちゃんとしぼれなくて厄介なんだよね。
そろそろ敵の頭上。
大きく跳ぶ!




