百六十五生目 歯砕
カツマゼが自分の中から何かを引き抜いた。
肉の部分と甲殻の部分がうまいこと入り交ざっていて見た目のグロテスクさとは別に弱点を突いて攻めにくい……
カツマゼは掴んだ何かを……思いっきり投げつけてきた!
「なっ、わっ!?」
キラリと鈍く光ったそれをなんとか避けつつ身体にカスり"防御"と鎧化針で防ぐ。
内部に響くけれど刺さるよりはマシ。
弾かれた弾の正体は……
歯だ。
あの取り込まれた生物の歯なのか……
牙やらなんやらが固まってある。
ちゃんと光をまとっているので油断できない。
身体に当たったどこか生々しい感覚がまだ残っている……
遠隔の攻撃手段もちゃんとあると。
こちらも反撃だ!
土魔法"Eスピア"そして精霊に頼んだ分を少し遅らせて"ソールハンマー"!
同時だと魔力がまざりあったりかち合ったりして別物になってしまうためほんの少しズラすのはテクニック。
まずは大剣ゼロエネミーの刃が振り抜かれ出す。
重たい刃でも剣を持ってないのだから動きに制約が少ない。
凄まじい速度で連続振り下ろし。
大剣ゼロエネミーの刃がカツマゼの甲冑に当たって響いていく。
光で中にまで威力が響いていく。
まったくひるまずたくさんある脚や腕で雑に防ぐだけなのが困るが。
そして"Eスピア"!
土槍が床から生えてカツマゼの足もとから串刺しにしようと迫る!
カツマゼの甲冑に刺さり突き上げ……
"ソールハンマー"によって土塊の槌が生み出され。
思いっきり頭上に振り下ろした!
骨棒や腕で受けるが……
下に刺さったままの土槍で上から土槌で叩くわけで。
何度もなんども何度も!
当然下に圧がかり……
鈍い音と共に肉へ深く突き刺さる。
さらに"二重詠唱"の効果でもう1本の土槍!
ひとつの槌がこわれて……でももう一つある!
やがて双方ともに砕けやっとカツマゼは解放される。
それでもやはり深く生命力の減少は……
やはり異様にタフなのか。
実際構え方に変化は見られない。
こちらが距離を取るせいで回避困難な歯投げを何度もしてくる。
武技"蛇の構え"で多少は防ぐが……
カツマゼは骨棒を担ぎあげてこちらを狙っている。
まだ距離があるから歯を投げつつ来るかな……
……うん!?
同じ姿勢で迫っている!?
複数ある脚を使ってまるでスライドするように移動。
あれを使われると動体視力がいい私みたいなタイプじゃないと気づかないぞ!
「やっ!」
跳んでギリギリ避ける。
私の背後に骨棒が地面を叩く音。
さっきからスレスレだ。
結構技術力がある行動もさっきからしてくる……
単純に見えて結構やっかいだ。
まさしく何体も同じ身体にしてきたゆえの磨かれたものなのだろうか。
かなり……嫌だね!
動きは重々しいのに瞬間的に素早い。
気をつけないと私の骨が持っていかれる。
「ヴォオオオォッ!!」
「ウッ!?」
今度は何やら叫ぶように身体を揺らすと……
何かを吐き出した!
早さに対応しきれず少しかかってしまう。
強烈な酸臭と共にかかった左前足に違和感。
強烈な粘り気と皮膚を焼くような感覚。
これは……毛皮を溶かしている!
素早く何度も地面に向かって転がり……
おまけに脚全方位から針を出し射出。
危ない……溶かされるところだった。
なんとなく不調が残ったもののすぐに消える。
おそらくは毒。
しかし私の毒とかちあって負けたのだろう。
4つある魔法枠のうち2つの魔法は補助周り……
2つが攻撃としているからこういうときもすぐに光魔法"ヒーリング"を精霊に頼める。
メンバーが多いのなら構成を変えても良いがいまはこれが安定だ。
大剣ゼロエネミーが油断なく攻めているおかげで相手がこちらのみに集中できずにいる。
身体はいくつもあるのに全部ひとつだからね……
骨棒もひとつだから攻防がゼロエネミーにしぼられがち。
私はあまり生命力を削れなさそうな針はやめつつイバラに切り替える。
直接攻撃はやめたい。
あのいくつもある腕たちに掴まれかねない。
こういう相手には……そう。
武技"龍螺旋"だ!
イバラたちが次々と姿を踊らせて……
一斉に襲いかかる!
"連重撃"をつけたイバラたちがゼロエネミーを防いでいるカツマゼの元まで届き……
強烈に叩きつけた!
そのまま掴まれぬように距離を……
「ワッ!?」
イバラを掴まれた!?
そのまま勢いよく引っ張られたので自切。
凄まじいパワーだったため一瞬でも引っ張られたがなんとか踏ん張る。
そして"龍螺旋"本当の力。
当たったところから次々と爆発が起きる!
しかも"連重撃"により連続だ。




