百六十四生目 骨棒
各自冒険者たちはワープのために道具を置いていくことを決定。
ショートソードさんは大量の暗器が服の下からずらりと顔を見せた。
「うーん、そういうものなら、身につけているという範囲で行けると思う」
「おっけ、最低限みんなを守るものはいるしな。こっちは良いや、良くないけど優先順位だな」
ショートソードさんはその腰につけていたショートソードを捨てる。
まあそっと置くという感じだが。
当然実力にふさわしい逸品だが今は壊れしまっているから優先順位をつけたか。
腰の服装にさしている剣ゼロエネミーにそっと触れる。
アレって剣的にはどうなのかな?
……なるほど。
ゼロエネミー的には当然といった感じか。
持ち主の邪魔になるのならば捨て置かれるのが最後の役目と。
シビアだねー。
それはともかくとして。
「はい、とりあえず歩けるまでは回復させました。しばらくはリハビリしたほうが良いけれどね」
「ありがとう、だいぶ痛みが引いたよ……っつつ」
リーダーが立ち上がり体を支えようとして痛みに顔を歪ませる。
ただ崩れることはなかった。
腫れはまぁまぁあるが骨はつながったようだ。
「リーダーさんは必ず医者に見せてください。どうしても単なる仮止めにすぎないので、少し無理すればまたバラバラになります……それじゃあ、私はかき乱してきます。頃合いになったら離脱するので、そちらは脱出をお願いします」
「もちろん。わたしがやるから失敗はさせない!」
「何から何まで済まない、街に帰ったら1杯おごらせてくれ」
「おいおいリーダー、それは誰かが欠ける流れのときにいう言葉だろう?」
「それは創作物の流れだろう、くだらない、そんなことで人の生き死には変わらん。朱竜様にしっかりと祈っておくことだな」
「なっ、このー!」
みな希望が見えてきたからか口数が増えて来た。
悪態すらもどこか笑顔で言い合っている。
よかった……状況が好転してきた。
「では!」
「お願い!」「いっちまえー!」
冒険者たちに見送られつつ駆ける。
角を曲がり奥へ行き……
ニンゲン風の格好をといて4足へ。
さあ……補助魔法をまずは全力でぶん回そう!
体力強化や炎属性の付与それに防御や力などの増加。
そこらへんをなんとかしてちゃんと収め……
通常時としては全力全開状態に。
そして私は扉を開けた。
「ウッ」
また"影の瞼"が自動的に降りる。
見るだけで嫌悪感を催す精神汚染の存在……
大量の腕と足を持つ塊……カツマゼ。
それは私をみるや否やまた骨棒を自分から引き抜く。
毎度埋め直しているのか……
相手は当然のように駆けてくる。
カツマゼを観た時に何も言語がわからなかった。
既存言語などではない。
彼に……言葉などはないからだ。
「ゴォォォッ」「ガァァ」「グゥゥ」
肉が蠢くことで奏でられる空気が気道を通る音。
それが顔の数だけ起こる。
あまりにも真っ直ぐな突撃がここまで不器用にされる故の恐怖。
私の考えよりも先に脚は動いていた。
(よし、行くぞ!)
ドライの身体操作先導で素早く距離を詰める。
相手の骨棒振り下ろしタイミングよりも早く潜り込み……
むしろ安全にすり抜ける。
そしてイバラを伸ばして勢いのまま駆ける。
背中……と言えなくもない側にイバラを叩きつける。
肉が裂ける音がするけれどまるで怯む様子がない。
そりゃそうだろうね。
自分から骨棒を無理やり刺しこんだり引き抜いたりしているだろうし……
肉に痛覚がないのか。
一応生命力が減ったものミリ減少だなあ……
寄生虫に本体にダメージを与えれれば良いのだけれど。
(そして振り向きざま1撃ッ)
おっと。
ドライの予測通りカツマゼは振り下ろした骨棒を振り向く勢いを利用してこちらに横薙ぎ。
ジャンプして避け……
縦回転しながら勢いをつけ頭……というか1番上の部分を光をつけ爪で踏みつけ。
そのまま勢いよく跳んだ。
カツマゼから距離を取る。
カツマゼはおそらく近距離がほとんどメインのタイプ。
ヒットアンドアウェイが大事だ。
そのまま横に駆ける。
カツマゼは自らの身体に腕の1つを突っ込む。
無理やり貫通させるようにねじ込むのはみている側が痛くなってくる……
何をする気かはわからないけれど行けゼロエネミー!
大剣化して分厚い刃で立ち向かう。
中に寄生虫がいるはずで"見透す眼"を使い中を探っているが……
気持ち悪い肉が見えるだけで寄生虫自体が見えない。
というか寄生虫なんて当然内部に潜みやすい形や色をしているから見たところで素人がわかるわけもなし……か。
大剣型なら甲殻の上から中まで衝撃を通せるからガンガン切っていこう。
そしてカツマゼは自分の肉内から何か握り引き抜いたようだけれどなんだ……?




