百六十三生目 着替
カツマゼを倒さないとここから出られなさそうだった。
リーダーの骨折を治しつつ話を聞こう。
「この迷路から歩いて出られない、というのは?」
「まあもちろんひどく迷わされるというのもあるんだけれど……」
「まったくもって腹立たしいのは、ここが袋小路だからということだ。実は近辺を既に調べてもらったが、道らしき道はつながってない」
「まあ、正直かなり困っている状態ですね」
「ああ、またあのカツマゼの前を通って道を探さないと…… 」
5名の冒険者たちは久々にちゃんと食べれたのか私が持ち込んだ携帯食たちをあっという間に平らげた。
救急セットを使い各々の傷をきれいに清めつつ傷口にあてる。
真面目に医療知識は時代的なものや魔法の存在もあって冒険者たちでは雑だったり変なところもあるのでその都度なおしていく。
それにしてもこのままではかなりまずい。
カツマゼは別に神ではないのだ。
神力解放は基本的に許可されていない。
さらに冒険者たちの目もある。
思いっきり戦うのは難しい……
どうにか彼らだけ少し待っていてもらわないと。
「ねえ、私が余力あるから、あのカツマゼと直接当たってくる。それで乱すくらいはできるから、集中してワープの道を確保、できた瞬間に飛んで欲しい。私はほどほどで自力脱出するから」
「おいおい、危険すぎるぜ! それならわたしも……」
「いや、ワープできる瞬間はきっと僅かだから、固まっていてほしいのと、守りがいるからここで待っていて」
「うっ……そうなのか?」
ショートソードさんが参戦しようとしてくれたけどそれを止めて。
ショートソードさんの言葉を聞き両手杖さんは静かにうなずく。
ショートソードさんは仕方なしといった様子で腰を下ろした。
「そっか……なら待つしかないな……まあ、たしかに今の武装だとこころもとないたいというのもあるしなあ」
「僅かなスキをついて飛ぶなら……みんな、荷物を最小限にするよ。小さな搬入口を無理やり作ることになるから、脱出用にここで集めた物とかも諦めよう」
「ううーん……しゃーない!」
「さすがに我ら5人分荷物を任せるのは、負担が大きすぎますからね」
リーダーの言葉に一様うなずく。
実は私いけるんだけどね……!
後で回収しようかな。
各々バックの中身などを整理しだす。
ワープというのは色々条件があるもののわかりやすいので積載量というものがある。
あんまり多くの物を同時に運べないということだ。
リーダーは依頼用の品だったらしい密封されて印がつけられた品々を置いていく。
かなり苦渋の決断らしく顔がしぶい。
まあ当然依頼失敗でここまでやって無報酬化だからね……
ナックルさんは魔力の媒体となりうる繊維や使い捨ての魔力石をいくらか廃棄している。
冒険者たちは上級になればなるほど自身の力と環境の差をどれだけでも埋められるように用意しておく品は多い。
そのうちの使い捨て可なものだろう。
ダブルナイフさんは採取していたらしい品々や魔力石それに何かの石も落としていく。
あれは……石だ。
びっくりした。
まさかの単なる石。
いやでも……理解はできる。
小石って実は冒険中使いみちがいくらでも広がりやすいもの。
使いやすい形のものをその場で集めることは多いが……
彼はふだんから集めておくタイプだったらしい。
代表的な例は集団の中1体だけ注意を引く際に投げたりスリングショットを使って放つ。
そして両手杖さんもやはり魔力媒介と……
わずかにあった非常食やら少し高価そうな服なんかも捨てていく。
あの服たちってもしかして。
「うわ、高かったんですよねそれ? 捨てちゃうんですか」
「うん。自分から捨てるように指示したんだから、率先して荷物を破棄しないと示しがつかないし、背に腹は代えられないよ。確かに早着替えで纏う服たちをなくして、どこまで戦えるようになるかはわからないけれど……ああ、あの時必死にみんなで素材集めて作ってもらえたこれも……うーん……えいっ」
効果そうなブレスレットが彼女のかばんの中から捨て放たれる。
うわあ……本物のハイマジックキャスターだ。
魔法術早着替えというものを駆使してその魔法の特徴にあった服に対して瞬間的に着替えるという行動を取り大量の魔法を使いこなすまさしく上位的魔法使い。
私も本来魔法を使うときはああ言うのを見習わないといけないのだが……
高速で服を変える魔法って実は広く知られていない。
その資格を得た魔法使いだけがこっそりと知り得るとか。
そしてショートソードさんは服のどこにそんなにしまっていたのかというぐらいあちこちから物がボロボロ出てくる。
結構魔物由来品が多いから効率良く奪取していたのだろう。
そして。
「なあ、わたしのコレらってどうしたらいい?」
更に大量の暗器が出てきた。
うわお……良くしまえている量だなあ……




