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百二十一生目 掌握

 周辺の探索と調査を依頼していたら、その地域の『掌握』が済んだ。

 な、なにを言っているか私もわからない。

 ただ部下の言うことはちゃんと聞いてた方が良いというのと、言葉で伝えてもその通りに通じるとはならないということだけはわかった。


「あ、ローズさん!」

「ローズ様!! 助けて!!」


 震えていたたぬ吉とドラーグが私を見つけ次第すっ飛んできて私の背後に隠れた。

 いやドラーグの方がはるかに大きいから隠れられてないのだけれどね。

 そしてこちらを見つめる目は200を越えていた。


 つまりは100匹以上の魔物たちが所狭しとこちらを見ている。

 ……私こんな膨大な数を数字カウンター器無しで数えれたっけ?


 正直空気はあまり良くない。

 ピリピリしている。

 なんだか少し落ち着いてきたところに私という異分子が流れ込んできて再び悪化したらしい。

 そこにアヅキが声をかける。


「この方が私の主であり、お前たちの仕える相手だ」

「えっ、なんでそんな話に?」


 私が困惑している声はざわざわとした声たちにかき消される。

 いや、実際はブギーとかグルルとか森の魔物たちらしい鳴き声たちなんだけれど。

 なんで彼等にスムーズに話が通じるのかと思ったら各種族に1つずつ万能翻訳機が置かれていた。

 いつの間にか小動物たちの街で市販品をいくつか買っていたのか。


 とりあえず私は片っ端から"観察"して自動で言葉を学んで行こう。

 騒ぎが起きている間にアヅキが耳打ちしてきた。


「実はですね、主のように言葉を交わしたり力で抑えたりと交渉し、ここら一帯の情報を渡して主に協力せよとやってまわったのですが。

 多くの魔物たちはやはりその主を見せろとゴネましまして……」


 どこの侵略者だ。


「と言うかまあ良くコレだけ集めれたね……」

「彼等はそれぞれの群れの代表だったり単独だったり様々ですが、実際はもっと多数います」

「ひええ……てかなんで仕える云々に?」


 ざわめきが次第に収まる。

 耳打ちタイムはもうそろそろ終わりか。


「私や他の者の実力や交渉を認めた者達は多いのです。私はシンプルに従うかどうかと最終的には宣告しています。分かりやすいですからね。

 なのでこの者たちも主に従うかどうかを判断したいのかと」


 ついには静けさが戻ってきた。

 アヅキが耳元から離れ周りの魔物たちからは視線。

 うう、他の仲間たちは狩りかなにかでいないのかな。


「え、ええと、私はケンハリマのローズオーラです。よろしくお願いします」

「おいおい! いくらなんでもこんなのに従えなんて!」


 狐型の魔物がそう吠えるとわあわあと魔物たちが騒ぎ出した。

 さすがに無茶振りがすぎるんだよ!

 今は気配を抑えているし舐められるかなと思ったらやはりだった。


 アヅキがイラッとしている。

 このままでは惨劇が起きかねない。

 力関係で話を聞きに来た魔物たちが多いようだけど……

 少しこけおどししてみようか?


 周辺を見渡して一呼吸。

 くっと気合を入れて意識して自身の力の気配を出す。

 殺気はいらない、純粋な力の気配。


 隠されていた力が一気に開かれ少なくともこの場を包んだ。

 その途端に一瞬にして静寂が包む。

 ど、どうかな?


「主、お言葉をどうぞ」

「う、うん。えー、改めて。私たちはここにきてまだ日が浅く邪魔者かもしれません。それでも仲良くやれる相手とは共に協力したいなと考えています。

 すぐにまた移動するかもしれませんが私たちはその先で自分たちの居場所を作りたいのです。そのために……」





「素晴らしいお言葉でした」


 なんだかしばらくアドリブで話していた気がするがぼんやりとしか覚えていない。

 なんだか途中から大口叩いていた気がするような……


「ええと、そんなわけで、よろしくお願いします」


 取り敢えず再び気配はまた弱く見せるように抑えておく。

 その途端あちらこちらで身体を崩す音が聴こえた。

 極度の緊張から解き放たれ身体が一気に力が抜けてしまったかのようだ。


 よく見たら背後のドラーグやたぬ吉もだった。

 カムラさんやユウレンはなんだか私を睨みつけているしインカとハックは何故かはしゃいでいる。

 なんだこの状況。


 森の魔物たちは口々に何かを言おうとしているが言葉になっていない様子。

 うーんもしや強そうな気配のハッタリ効かせすぎたかな……

 ……あれ?


「何か背後から来ている……たくさん?」


 10、20じゃ済まない。

 今度は何!?


 "鷹目"で視界を飛ばし見てみるとそこにはこれまで倒してきたはずの魔物たち。

 全員ではないが50匹程度いる。

 先頭は尾が管になってる犬と狼を足して割った魔物のドルイコだ。


「強い方! 前戦った強い方よ! どうか私をお供に加えてもらえませんか!?」


 そう先頭のドルイコがいいつつ走り込んできた。

 さらに背後もどんどんと似たような事を言いながら詰め寄ってきて私を取り囲む。

 もはや私を含めてあっけに取られるしか無かった。

 互いに種族が違うと言葉が通じていないせいで同じような事を何度も聞くハメになっている。


「え? え? 一体何!?」

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