百五十七生目 迷路
幽霊たちがハチャメチャな迷路を作っていた。
あんなのニンゲンに突破させる気がない。
というか私も油断すれば迷いそう。
もちろん神力は前の戦闘後封じている。
ここでは使えない……
適当に駆けて進んでいるものの脳内地図がアテにならない……
脳内地図は言ってしまえば私の5感を元にした地形図だ。
そこに記憶やら魔法やらで追記できるとはいえ……
いつもみたいに探った! わかった! とはいかない。
そもそも5感が正確なのが前提だからね。
地図も常にズレを直すしか無いわけで。
「うわっと壁!」
目の前はたんなる廊下の空間……
……に見えてここで壁のにおいがした。
駆けていておもいっきりぶつかるところだった。
危険というかもはや悪趣味。
まあ幽霊たちに悪趣味を説いても喜ばれるだけだろう。
とにかく私はこの広大すぎる迷路の中から……
目的のニンゲンたちを探し出す必要があるわけだ。
実は奪取も採取も規定数はとっている。
まあそれ以上にとってももちろんいいんだけれど。
採集品を探しつつニンゲンたちを探索だ。
とは言ってもひたすら広大な迷路ってだけであまり普段とは変わらない。
誘い込まれたのならともかく突撃しているからね。
こちらの元気は万端で目的もはっきりしている。
この壁は……ニセモノだ。
このまま歩いてみせれば壁にぶつかることなくすりぬける。
向こう側に音が通るから変だと思った。
いくら冒険者たちが優れていてもこれでは絶対迷う。
早く助けてあげなければ!
来た道をもどったら別の場所にたどり着くトラップはさすがに陰湿だと感じた。
あんなの探知するには意図的にかなりの魔力解析がいるし……
おっと!?
ここは床があるように見えてまるごとないッ!
こういうときは。
「ハッ」
勢いをつけ……
壁を駆ける!
一気に走り抜ければこのぐらいはウォールダッシュできる。
だいたい距離にして10mくらいか。
あっさりと渡れた。
もちろん空間が壁を作っていないかもチェックして走ったので大丈夫。
もしこの穴にニンゲンたちが落ちたら……
と思ったがどうやらこの先も別のところに飛ばされるらしい。
調べるためには行かなくてはならないがそうなると私が迷子になる。
道が見つからないわけではないのだからやめておいた方が良いだろう。
ミイラ取りがミイラになる。
さて……この先にはっと。
おっ!
こんなところに棚木が。
ついでだし葉っぱの摂取をしておこう。
割と何度も戦闘を重ねた。
しかしまあなかなかいないね冒険者たたち!
一応聞ける相手には聞いているものの見たと見てないが半々。
ただ情報を聞く限り方向はあっている。
おそらく入り組んだところに行ってしまったのだろう。
私自身も何度か転移しているしそろそろ……
このマップ埋めで役に立つのはやはり地形データ。
こうしてみると周囲には多く移動できるが……
少しずつしか中央側へ行けていない。
さらに未探索ながら探知はできた地域はたくさんあるが探知すらできていないのも中央側に偏っている。
つまりゴールは中央側にありニンゲンたちもなんやかんやそちらに向かっているのがうかがえた。
……むっ! このにおいは……
ニンゲンたちの痕跡っぽいにおいだ。
ならばこのまま進むことにしよう。
このめちゃくちゃな環境下で痕跡が辿れるのは奇跡だ。
近くにいるかもしれない。
急ごう。
おっと!?
「ケケケッ」
「通せんぼ、通せんぼっ」
幽霊のファンターたちが2体。
ここの濃い霊的瘴気の中ではファンターですら強い。
もちろん比較的にだから私は勝てるけれど。
火魔法"フレイムエンチャント"の継続時間は大丈夫。
全身から棘を飛ばして先手必勝。
炎の棘が相手の体に突き刺さっていく。
「ウグゲゲッ!」
「まだだよーん!」
しかし効いてはいるもののちゃんと針を振り払って再度攻めてくる。
まだ余裕そうだ。
ふいに2体の姿が消える。
幽霊しか存在できない次元に身を隠す行為……らしい。
死霊術師の教えで習った。
そして次の行動は……
「ここっ!」
いきなり背後に現れながらの強烈な爪攻撃!
向こうが隠れている間はこちらにも危害が加えられない。
単純かつ効果的なのは現れた瞬間背後をとっての大技。
私はテンポよく離れつつ針を飛ばして迎撃。
相手は爪でそれを弾いた。
爪は不気味な闇のオーラを漂わせている……
「アリャッ?」
とりあえず相手の攻撃はスカらせれた。
さらに踏み込んでいこう。
イバラを伸ばしてファンターたちを追撃。
ファンターたちはゆらゆら動きつつ爪で迎撃。
イバラとのはじきあいだ。




