百五十五生目 降参
ライブラの氷盾を無効化し砕いた。
こちらはまるで大地から生えぬいた槍をまとっているかのよう。
このまま魔力を纏った突進だ!
全部の攻撃に"無敵"をつけるたり放ち続けるのはもはやクセのようにしているが……
こういう神相手だとなかなか通らない。
どんどん力を見せていかないと。
「おおぉっ!?」
大きな岩槍と光がライブラの身体に深く突き刺さる。
相手は支えきれずそのまま後ろへながされ……
私と槍を切り離すと同時に地面へ落下。
そのまま地面に縫い付けた。
「これでどうだ!」
「ぐあっ……!」
今までと違い芯を抜いた攻撃かつ私の神域内。
相手はうまく逃れることもできずあがいている。
耐久値も目に見えて減ってのこり3分の2くらい!
これで終わらない。
私は地面に降り立って距離をつけ……
勢いよく駆ける。
私の頭部に土色の光が宿り牙が特に強く輝く。
脚にも光が宿って大地を踏みしめるたびに後ろに盛り上がり去ると崩れる。
ここで武技……
「"地魔牙砕"だ!」
大きく飛びかかり地に伏しているライブラに喰らいつく。
ドライ任せの衝動的な噛みちぎり。
大地の力が深く牙を刺す。
口の中に大量の紙が混ざる。
その下の肉なのか鉱物なのかすらわからないものも深く噛み付いて……
口の中の不純物を出来うる限り無視して貪るように噛み砕く。
「グルアッ!」
「ガアッ!?」
そして効果時間が切れる直前で食いちぎりながら飛び上がり離れ地面へ降り立つ。
ペッペッ!
「ぐああああっ!」
どうだ!?
相手は痛みで叫んでいる。
これで耐久値は半分を切った。
大地の槍をライブラがいくつかの魔法をぶつけどかす。
さらに少しだけ自分の結界を展開した。
簡易的ながら大地の神域に干渉してさっきまでの室内がもどってきた。
これで本が戻ってきたわけで。
さらなる本爆撃が可能に……
「や、やめろ、やめてくれ! もうかんべんだ……!」
「……えっ」
さらなる追撃を与えようとしね。
ライブラが慌てて手で静止した。
……まさか"無敵"がちゃんと効いた?
戦いはライブラの棄権で終わった。
「わたくしは知の神だ、逆転の一手もない状況に陥りこんだのに、泥仕合を続け、他者の神域でじわじわ削られるなど、したくもない……!」
「う、うん」
ライブラ側は特に引けない理由もなく。
暇つぶしだったのに戦意は叩き折られ。
しかも相手は神本体同士。
どちらかが死ぬ……幽霊が死ぬというのも変な話だが砕かれはしちゃうので耐久ゼロになるまで争う意味なんてない。
あまりにも妥当な戦いの降り方なんだけれど……
あまりにもまともすぎてビックリした。
もっとしつこいかと。
そもそも絡んできた理由が弱かったし引き際もわきまえているようだ。
「まったく……ただの退屈を楽しみで満たしたいだけで身体を潰されてはかなわんよ」
「全くデス、ライブラサマ」
「そうデス、大人しく死ねば良かったのデス」
「絶対嫌だけど……」
そして今たくさんの幽霊たちがライブラを介抱していた。
ライブラ自身はその身体を元の部屋にあった椅子に預け色んな幽霊魔物が肉体治療を施している。
肉体はないけれど。
「それで、肝心のニンゲンたちは……」
「ああ、そうだったなぁ。どれ……」
ライブラは紙を自身の身体からちぎって見つめる。
紙に光がともってどうやら遠くの景色が見えるらしい。
「奴らは、そんなには遠くないがこの先に居るな。わたくしのこの書斎を通り忌まわしき光の部屋を抜け、その先の辺りで彷徨っている。まあ、我が霊たちの仕業なのだが」
「引っ込めてよ!?」
「僕らが勝手にやってることだー!」 「そうだー! ライブラサマは無関係
だぞー!」
「正直そのような言うことを聞かせる力はない。良くも悪くも彼等も魂で動いているだけだからなぁ……」
なんという困ったポイント……
つまり私が直接いくしかないと。
もうここも元の環境にもどったしライブラはほうっておいてよさそうだ。
「わかった……じゃあね」
「待て待て、貴殿は蒼竜の神使なのだろう? 少し頼まれごとをしてくれんか」
「えっ……いいですけれど」
蒼竜絡みの話とか……嫌な予感がすごくするんだけれど。
「露骨に嫌な顔をするなぁ……兎にも角にも、これを蒼竜に渡してくれ。渡せば向こうは理解する。絶対に開くなよ、貴殿では何が起こるかわからない」
「え……本? すごい拘束してある……」
渡されたのは1つの分厚い本。
鍵にチェーンそしてその上から札が貼り付けられている。
持つだけでなんだか異様な感覚がする……そんな本だ。




