百五十三生目 本爆
ライブラという本の司書幽霊神が現れた。
かなりやる気が高い。
前の相手したときが不服だったらしい。
「こんなところで争うと、本が傷つくんじゃない?」
「大丈夫だ、わたくし自身が本、その知識なのだからっ……」
彼の身体につく紙のページがいくつか剥がれると急速に魔力が高まる。
私の方は既に魔法による自己強化は済んでいる。
相手は魔法主体かな。
紙たちが光り輝くと共に雷雲が空に立ち込める。
雷の魔法だ!
いかずちが空から降り注ぎ……
「さあ、黒焦げになってもらおうっ」
私に当た……らない。
正確に言えば当たったように見えただろう。
しかし私の首にあるチョーカー……つまりはゼロエネミーに吸われた。
そしてそのエネルギーを私に還元。
元気満タン!
「どうしたの? 今度はこちらから!」
「むう、無効化されたか」
ゼロエネミーを長剣化して向かわせる。
私は全身から針を生やし……
その纏う炎ごと発射!
ライブラはまた新たな紙を用意するとそれらが剣に変化。
ゼロエネミーと激しい衝突。
互いに切り裂きあい……
「ほうっ」
「紙の剣じゃあ止められないよ!」
紙の刃を長剣ゼロエネミーが次々切り落とす。
そして私の針がライブラの全身あちこちに突き刺さり……
「あれ?」
「ハハハハ、こういうことも出来る」
針たちごと紙が剥がれ落ちてしまった。
紙の下にはまた違う紙が。
紙の残量切れを狙うのは少し賢くなさそうだ。
それでもゼロエネミーが最後の紙剣を切り落とす。
そのまま直接本体を狙う。
「フンッ」
あえて純粋な"防御"。
しかしこういう大きな者が使うと結構有効なんだよね。
全身が光のバリアで覆われてゼロエネミーが深く斬り込めない。
少しずつ傷は与えているが決定打にはなりそうもないな。
さらに相手はその間に新たな紙を使いだしている。
同時行動可能なのは厄介だな!
「これならば、お気に召すかな?」
今度は氷の魔法か。
空にいくつもの氷で出来たトゲトゲ結晶が生まれ……
私に向かって降り注ぐ。
これは痛いやつだ……とにかく駆ける!
1発目をスレスレで避け……
2発目に吹き飛ばされる。
「っく……」
おかげで3発目は逃れたが……
ここで"防御"。
4発目が私の頭上から降り注ぐ!
「ウッ!」
「これは良いようだねえ」
全く良くない痛みが全身に走る。
凍てつくともはや冷たいより痛いというのが優先というのは本当だね!
しかもトゲだらけだから刺さってくるし。
長剣ゼロエネミーは相手が派手に動かないことをいい事にガンガン切り刻んている。
私は氷が砕けると同時にまた脚を動かす。
こういう時痛いからって怯むと追撃技来るんだよねえっ。
というわけでさらなる追撃狙いが上に見える。
凄まじいエネルギーの集まり……
それがビームとして放たれた!
駆けていたのでうまいことステップを踏み避けれた。
危ない……!
「初対面相手にここまで殺意があるのはどうかと思うなっ」
「褒めてもらえて嬉しいねえ」
褒めてない!
ビームが焼いた跡は不思議と勝手に消える。
この部屋自体が彼の神域ということかな。
つまり私はここにいる限り勝ち目が薄い。
ちゃんと仕込んでおかないとね。
「さあ、よそ見している時間はないぞ。少し盛り上がってきたところだ、ここで倒れるほどヤワではないだろう?」
「これは……!」
ライブラが浮いて移動し高めの位置。
そして大きく手を広げると……
棚にしまってある本がいくつも飛び出してきた。
確か本爆撃とかいうのを"観察"して見抜いたけれどこれか。
ゼロエネミーにライブラを追わせるのを止め手元に寄せて大盾化。
自分に光魔法"ヒーリング"をしつつ身構える。
「さあさあ、どこまで耐えられるかなあ……!?」
笑いを抑えきれない嗜虐的な声で腕を振り下ろす。
本たちが次々と私に飛び込んできて……
あたると同時に炎が炸裂した!
「ウワッ!?」
次は氷が炸裂。
さらにいかずちが鳴り響き……これは急襲出来るから良いや。
そして水が強烈に弾ける。
これは……これは!
本ごとに魔法が炸裂する攻撃か。
大盾ゼロエネミーごしに凄まじい衝撃が伝わってくる。
「ううううぅー……!」
減衰している上で痛い。
休む間もなく次々降り注いでくる。
今私ひとりだけれど多数いる時はまさに絨毯爆撃みたいになるのだろうな。
うわっ土塊が爆発したっ。
大丈夫ゼロエネミーは土も吸収してくれる。
吸収と攻撃で結構ギリギリか……!
多分魔法属性を選べるわけじゃなく無差別連打なのだろう。
いったいどのくらいで止むのかこの爆撃は……!




