百四十八生目 浴室
全身からトゲを飛ばす!
イバラではなくトゲならば。
蛇幽霊のサービートは必死に尾と首に光をまとって武技"蛇の構え"で落としてくる。
ファンターたちは針をいきなり飛ばされ……
しかも炎をまとっている。
なので。
「「ギエエエ!?」」
思いっきり刺さって引火。
これでファンターたちは止められた。
まだ倒せてはないけれど。
サービートに対しては火魔法"フレイムボール"!
青い炎球が2発飛び……
サービートは反撃で毒の牙っぽい光を飛ばしてくる。
互いの攻撃は火花散らしながらすれ違い……
私は撃った反動でよけきれず少し当たる。
「ッ……」
脚を噛まれたが……まあちょっと痛いな程度。
光とにおいから察するに猛毒を仕掛けてきていたが私自身の耐性を上回らなかったらしい。
そしてサービートは。
「ウギャアアア!?」
凄まじい炎。
単純な魔法ゆえにその威力を高めやすい。
さすがにここまでの威力へなるにはなかなか難しいけれど。
威力不足も懸念したけれど"二重詠唱"でダブル撃ち込めて文字通り火力は問題なかった。
炎が消えたところにサービートはまさに文字通り伸びて倒れていた。
「ヒエッ」
「に、逃げ?」
「逃げえええぇ!」
ファンターたちも私の魔法能力を見て逃げていった。
よし……そろそろ魔法能力ダウンも戻りそう。
まずはサービートを治療してついでにちょっと古い霊蛇のウロコあたりをもらうかな。
サービートは治療したあと慌てて逃げていった。
まあもらえるものはもらったので良しとしよう。
正直アノニマルースにお化けまで勧誘する余裕があるかどうかがわからない……
改めて……この棚木から葉っぱをいただこう。
棚の部分からいきなり幽霊たちは飛び出してきたが……
実はこの棚は引っ張ると途中で止まる。
本来は棚ってだいたいひっこ抜けるはずなのだが中途半端に止まり……
無理やり引っ張ろうとするとすごい力強く閉まる。
下手に手を出した相手を喰うかのごとくだ。
中には色んなものが入っていておそらくは誘導のためとも言われている。
こんな場所に住む物好きいるのかなと思うが魔物は結構多い。
幽霊魔物を倒すことが多いだけで。
鉢植え風の葉たちを何枚か……もらってと。
冒険者組合規定の木に残す葉の割合を守って採取。
残すもの残さないと枯れちゃうからね。
この葉をまだまだ集めなくてはいけない。
作業としては地道だが結構根気がいりそうだ。
その後洋館の廊下を駆けつつ廊下を抜け部屋を入り遭遇戦しつつ奪取と採取を繰り返し……
たどり着いた部屋は。
「おや……バスルームだっけか」
鼻につく湿度に雰囲気が先程までと雰囲気が違うタイル床に壁。
ここは幽館の迷宮で少し珍しい部屋だ。
通称バスルーム。
その名の通りここはあちこちに水が通っている。
というか場所によってはシャワーのように空から水が大量に降り注ぐ。
しかもなぜか天然水かつきれいなためここで水の補充が行われやすい。
ただ問題としてバスルームなのに水しか出ないということと……
「……うわっ、広っ!」
少し進み角を曲がると現れるのは巨大な水施設。
お風呂とはなんだったのか……むしろプールではないか。
また明らかに利便性や使用感が無視されており水に入らないと進めない箇所やらなぜか定期的に空から降り注ぐシャワーなどがあり……
まさしく人外がニンゲンの生活施設を真似て作った異様なものといった様子。
ただここに住む者たちには好評らしくプールの中には魚がいるし降り注ぐシャワーたちを浴びようと鳥霊の魔物が飛び交う。
ただ……もちろん私の侵入を良しとしてない魔物もいるわけで。
水中から突然5つの影が飛び出す。
"観察"!
[ヌメサラマン Lv.37 比較:少し弱い 危険行動:波洪水 異常化攻撃:毒(無効)]
[ヌメサラマン 完全水性ながら陸にも上がれ後ろ足に毒を持つ。水にいなくとも場の水を扱えるため意図的に洪水を引き起こして外敵を排除する]
なんだか顔は非常にのんびりした感じで後ろ足で低めに立ち上がり全身粘膜の身体をゆらす。
大きなトカゲのようなその身体からは背筋に沿うようにトゲが生えていてなんだか親近感がわくが……
相手が水の使い手なら今この場では相容れない!
「ハハハ、あいつ、およげなさそうだな!」
「手はず通りにやれ!」
「うーん、柔らかそうな肉……」
「通してはくれないわけだね!」
「おっと、喋った!? まあいい、やることは変わらないからね」
ヌメサラマンたちは私の正面を塞ぐように移動する。
ここからどう突破するか……




