百四十七生目 棚木
幽霊な魔物ファンターとの遭遇戦。
ファンターたちはほとんど物理的な攻撃は効かないが……
炎をまとえば彼らを直接叩ける。
それを彼らも理解しているから一斉にこちらへと襲いかかってきた。
「「仲間になれー!」」
ここで私の隠し技。
いきなり身体からイバラを生やす。
トゲの亜種だが逆に言えばこれも火魔法"フレイムエンチャント"で炎をまとっている。
相手はブレーキが間に合わない。
高速でイバラを振り回す!
「やあッ!」
まるで武技かのようにイバラたちを振るう。
たくさん生やしたそれらで周囲をメッタ打ち。
ムチが空を斬る音と共に5体のファンターが吹き飛ばされた!
「「ヒャアアア!!」」
「仲間募集はよそでやってね!」
イバラによって彼らの肉体が燃えていく。
炎が燃え移ったのだ。
レベル差のある私の連撃はかなりきつい。
相手の生命力……ならぬ耐久値はまだあるものの3分の1。
あちこちに飛び込んで炎を消してやっと落ち着いて……
「に……」
「逃げろ」
「ニゲロニゲロー!!」
「「ヒャアアー!」」
幽霊らしく壁の中へとファンター5体が消えていった。
よし……もう気配はないから不意打ちは喰らわないだろう。
ただあとは肝心のものだ……
「あるかな……」
彼らが暴れていたあたりを探る。
においがするものはここらへんに……
あっ!
飛び込んだ壁の近くに物が落ちている。
これは霊魂のかけらかな。
半透明な物質のかけらが落ちているのでちょっとシュール。
まるでゼリーみたいなこれはさわるとひんやりする。
とげなしイバラを使って拾いさらに空魔法"ストレージ"で亜空間から容器を取り出す。
慎重に入れて……と。
「よし、依頼の品ゲット!」
地道な作業だけれどこれが奪取。
ひとまず容器いっぱいあつめないと。
合計10個くらいかな。
まだ残っているかもしれないから探そうかな。
さて……
その後も何度か戦闘はしたが情報さえわかっていればなんとかなるものが基本だった。
今度は採取依頼もこなしていこう。
この洋館内に採取依頼というのも変な話だが迷宮なので変わったものがたくさん取れる。
よく何かが落ちているのも特徴だ。
さっきなぜか毒除けの力があるスカーフが落ちていた……なぜ。
そういうものでなくともキノコやコケがまず採取するものとして多い。
どちらもこの洋館でしか取れない品種がある。
オバケナメタケとかバケアカゴケとかそんな名前のものらしい。
ただ今回の依頼の品は……
「あ……! あったあった!」
洋館らしく置かれている棚。
この上に置かれている植木鉢ぽいもの。
実は植木鉢ではない。
これは……木だ。
正確に言うと棚風幹の上にある植木鉢風太枝から少しだけ枝先が伸び葉をゆらしている。
この薄暗い洋館では当然日光は望めないため少しだけ出ている葉は何らかの意図があるのだろうとは言われているとか。
この葉っぱを数枚いただこう。
魔術研究の貴重な材料となる。
……あっ。
「うわっと!」
「ケケケ!」
棚から幽霊たちが飛び出してきた!
"観察"!
[サービート Lv.38 比較:少し弱い 危険行動:丸呑み 異常化攻撃:毒(無効)]
[サービート 自身よりも大きく巨大なものすら丸呑みにする蛇の幽霊。生前過食で死んだ想いが浄化しきれずに魔物となった]
私よりも大きな半透明の蛇が自身の身体を積んでとぐろを巻く。
さらに3体のファンター。
ファンターたちはいきなり突撃をかましてきた。
「わっ! っと」
「ケケケケー!」
「なっかま、なっかま!」
しつこい仲間勧誘はともかくとして軽く頭突きやらはたきやらを喰らって後ろに吹き飛ばされた。
……うん!?
あっ私の能力が落ちている。
一時的な魔法能力のダウン。
さっきのファンター"観察"時に書かれていたやつか。
確かに今感覚的に魔法で与えるダメージが浅そうなのが理解できる。
ただまあ……
火魔法"フレイムエンチャント"!
そしてイバラ。
先程より火の威力は弱いもののこれなら問題は少ない。
一気にイバラで攻める!
「させるかっ!」
蛇幽霊のサービートがそれに反応して自身の身体を浮かして尾に光をこめて弾いてくる。
かなり的確に弾いてくる……あ。
これ私も使う武技"蛇の構え"か。
防御と攻撃を一体化させた構え。
このままだと弾かれるだけか。
一回イバラをしまって駆ける。
このまま走って……と。
周囲からファンター3体がゆらゆらと飛んできている。
爪をギラつかせ……くる!
でも私はイバラだけじゃないからね!
全身からトゲを飛ばして攻撃だ!