百四十二生目 火薬
元々武装とかを使ったスキルは異例だったとフォウから語られた。
そこに職の力量が絡んでくるのかな。
「元々はなかった……って、みんな今は普通に使っていますよ?」
[まるで初めからそうだったかのように動きが出来ているが事実はまるで違う。そもそも種族人間が出来たのは歴史的にはかなり後だ]
「そうなんですか……!」
星の歴史となると明らかにそうなるだろうね。
私の知っている前世でもずっとあとの方に現れた。
たまに創造神ぽくなるな……
[戦いという歴史が研ぎ澄まされ、より高度な技術を求めていくことで、一部が共感し種族人間等の魔物と共に新たなる技法を作り込んだ。それが職業の力量だ。職業の力量では主に技量が要求され、より高度な技術が可能になる。なぜか現代は職業の力量が無しになり他の能力に溶け込んでいるが……これはあまり得ではないかもしれない]
「あれ、聞いている限りなんだか煩雑なのを簡単にしてくれたみたいにも聞こえますけれど……」
職業レベルは技術のレベルか……
今の流れでなんとなく得にならない理由は推察できそう。
確かに一見楽なんだけれど。
「もしかして、職業の力量も特別な能力値を得られるの?」
[そうだ。使える先がひどく限定的にはなるものの、それでも力量の限界を超えて多く強く便利に楽になる]
やっぱりスキルポイントが別で手に入るんだ!
うわあ……それは確かに。
一気にあるとないとでは話が変わってくるじゃないか。
「ええっ、結構差が出てしまうじゃないですか?」
[そうだ。だがこの世界はそれが消えても安定して回っているように見える。その代わり通常の力量で得られる能力値を持って技術を鍛えることになるため、生涯をかけて1つの技術を鍛えることになる。かなり生き方が限られる可能性は大いにあるな]
それは……たしかにそう。
得意武器得意分野にスキルが依存することになるために後で思い切った変更が効きにくい。
一応スキルポイントをやり直す方式もあるらしいけれど大変なうえ実質ニンゲンの文化がなければ無理。
私はマルチ型だし特化型との違いに確かに時折歯がゆい思いはする……
それに文化的なあれこれにも本当は手を伸ばしたいんだけれどね。
「やっぱり、どうにかして職業の力量を復活させたいなあ……」
[これは前も話した通り、どうしてこうなっているのかがわからない以上、どうすれば復活するかも自分はわからない。ただ、可能性があるとすればだ]
「えっ、まさか何か心当たりが?」
ドラーグがフォウの周囲をグルグル飛ぶ。
フォウは一拍置いて……
[神話の時代が終わりを告げ、魔王と勇者の戦いが終わることで、彼らもこの地を去ったのかもしれない。不完全な残し方をして。おそらく不完全化しているのは彼らが意図しないなんらかの不具合が起きているからだ]
「不具合……もしそれがわかれば……」
[可能性は低いが自分もそれは探ってみよう。一応、こちらしかできない探りの手は残されている]
うーむこういう時のフォウは頼りになるのと同時に少し怖い。
どんな手なのか……
「それは任せるけれど……もう一つの方、神力の濃縮とか圧縮とかのほうは?」
[これはあんまり個体ローズオーラにも利用しては欲しくなかったのだが、どうやらそうとも言っていられない様子らしいな]
フォウが薄目で私の方を見てくる。
顔の真剣さもそうだが……
まるでその奥を見透かしているようだ。
「うん。今は少しでも強くなる道を見つけなくちゃいけないんだ」
「そちらもお願いします! 僕はできないけれど、ローズ様に必要なんです!」
[もちろん。まず神力とは通常神が持ち、肉体や精神に宿る力だ。これは龍脈に流れるエネルギーとほとんど同じながらそれぞれの神色に染まっている。故に通常の段階では扱いにくい事柄も起こせるようになる。種族人間などはそれを、奇跡と呼ぶこともあった]
なるほど……私が"進化"に少しだけ利用していた龍脈の力と親戚か。
それほどまでに膨大な力とは。
「ええっ、龍脈ほどの力なら、なんでも出来ちゃうんじゃあ無いですか?」
[そうでもない。そもそもエネルギーの物質としてあまりに小回りがきかない。それは、兵器の火薬で灯りをともそうとするようなものだ]
「あっ……ドカーンと……」
なるほどちょっとわかった。
実際に龍脈の使いみちもだいたいは別エネルギーに変換して使っている。
なんでもかんでも上位互換できるわけではないよね。
[何でも使い道というものがある。そして神力も自身の格を、存在としての次元を引き上げ、この世界の常識すらも上回る。そしてここからが重要だがこれはただ単に自身の次元を引き上げるだけではない。圧縮して高めることでより効果的な使い方ができる]
神力……全然分からずに本当に雑に使っていたなあ。




