百三十七生目 霊体
生と死の狭間で反省会中。
こんなになにも出来ずに負けるとは……
少なくとも今後はゼロエネミーを常に腕輪やらチョーカーやらにしておくかな……
ただ感覚的にはゼロエネミーでも貫通されていた。
それほどまでにあれは規格外。
「やっぱり……もっと強くならないとねえ」
「でも、すぐにどうこうできる手段はないな。順に鍛えていくしかない、今後も油断することなくな」
「いや、可能性があるとしたらひとつだけ……今は無理だからやはりすぐには頼れないけれど」
"進化"だ。
やめておけと言われたが……
もちろん私もできうることなら別にしたい。
ただ"進化"をすぐじゃなくてもいい。
将来的にでもやれるようにしておかないと私は壁にぶつかる。
今までの経験上そろそろ相手も強いのが来ない……とかはない。
私の活動範囲が広がっているから相手する範囲も広がっている。
ならば朱竜みたいな相手までとはいかなくともまだまだ勝てない相手もいる……
少なくとも話し合いに持ち込めるぐらいの力がなければさきほどまでにしなくとゃいけない。
ううん……
これ以上考えていても仕方ないかな。
「"進化"を将来使えるにしても、本当に未来に考えるしかないな」
「そろそろもどろ〜」
「どこに霊体で復活するのかな……」
正直復活する場所がよくわかっていない。
こんなことになったのは初めてだし。
復活できるというのは感覚的にわかる。
ただ他の面々見ていてもややタイムラグがあるはず。
復活したら日がのぼっていそうだな……
とにかくやることはまず蒼竜への通話だ。
あの光に導かれている。
向こう側へこのまま行けば大丈夫だろう。
ああーもうどうしようかな……
いきなり殺されたせいでむしろ朱竜自体には恨みはない。
なんというか……聞いていた通り災害そのものだった。
あれはうらんでもどうしようもないし……そもそもドラーグの親だ。
朱竜との折り合いもだがマズイのがちゃんとピヤアを追えるかどうかだ。
魔王復活ではないだろうがどうやらまた大きな悪事を働こうとしているようにしか思えない。
それなのにこんなところで死んでいては話にならないな……
どうにかしないと。
私だけでどうにもならなさそうなら……みんなで。
よし!
気合い入れ直した。
「行こう!」
「おう!」
「やー!」
光に向かって私達は移動する。
歩くとか飛ぶの概念が無くそちらへ移動する意思が大事……のはず。
グイッと光へ近くに動いてゆき……
私達の魂がそこを通る。
やがて光だらけで何も見えなくなり……
次に現れた景色は。
「……ん……」
ここは……ちょっとだけ知っているベッドの上。
うん。間違いない。
国境付近の都市でとったホテルの部屋内だ。
おそらく前はここで休んだからか。
身体を起こしてみよう。
「ん……うん……!?」
お……重い……!
ひどい倦怠感と同時にまさに身体が弱って鈍っている時の感覚。
病にうなされている時みたいだ!
た……"鷹目"で私自身を見てみる。
そこには……私の知っている私はいなかった。
当然と言えば当然なのだが私の身体は半ば透き通っている。
確かに姿カタチは前の姿と同じ。
しかしほんの少し透けて見えるその姿はまるで分神のようで。
どこかしら不安にさせるものだった。
装着品も少し透けているしどことなく薄ぼんやり。
胸の石は無事に輝いている。
割れてはいないが少し透けているせいで私の内側が見えてしまいそうなそんな不安定感。
まあとにかく……ぼやいていても仕方ない。
身体……起きろ!
それ……!
結局数分かかっておきあがった。
こんなにかかるとは……
なんというか体の感覚が馴染むのにすごいかかった。
こんなに精神生命霊体というものが実体と感覚が違うとは……
なんというか私の肉体ないのですごくフワフワしている。
実感がおかしい。
自分の重みがよくわからない。
地面を歩いても浮いているような違和感。
熱に浮かされている時って確かこう。
分神状態よりも感覚的にはマズイかも……
ただ多分だが思ったよりは自分の力は下がっていないっぽい。
慣れかな……とにかく。
さて。
2足型に変化して姿を偽装。
最悪ちょっと見られるくらいならバレないだろう。
ベッドに腰掛け尾を膝上に載せ手で掴みながら"以心伝心"。
うんやっぱりだ。
掴んだ尾の感覚がなんとなく鈍い。
実体があるのか無いのかよくわからないものを掴んでいる。
これが今の私かあ……
どうしようこれ治るよね?
そりゃ治るよねとはわかるけれどそれとは別にすごく不安にかられる。




