百三十六生目 獄炎
目の前に炎が迫って空魔法!
[ロングワープ より長い距離を移動できる。指定先の景色を一部覗き見ながら決定可能]
ミニワープよりも大きく移動が出来るこの魔法を使う。
ドラーグと共に……朱竜もいない誰も邪魔なものが近くにない場所へ。
目の前に炎が迫り……
次の瞬間には景色が切り替わっていた。
よし……一応逃げれたか?
迫ってきてないと良いが。
「ドラーグ、まさか朱竜の子だったんなて……」
「ごめんなさい、隠している自覚はなくて……」
「……パパ、まだ、くる」
「えっ!?」
コロロがドラーグを引っ張るように警戒を促す。
さすがにまだ来ると言われたら私も警戒心高まる。
ドラーグがぐるりと飛行をしようとして。
「……来な――」
そう何もこないはずだった。
なんの気配もないはずなのに……
先程使った魔法転移の跡……もちろんすでに空間としては完全に閉じられたはずのものが。
無理やりこじ開けられるように私の前で開いた。
まずい間に合わない空魔法"インターラプトル"!
私の身体が業火に包まれる前に。
どこかへワープした。
もともと近くにはなにもない空中だったからドラーグたちと離れたぐらいで変なことは。
……嘘だろうまた同じように反応が!
"防御"するしかない。
針を変化させた鎧をまとって……
空間を裂いて現れた炎が一瞬で私まで届き……
朱竜の言葉を思い出す。
特に蒼竜の雪はいらないと。
私だけを執拗に狙う炎……!
それは私を一瞬で飲み込む。
赤より深き朱い炎。
"防御"の光が瞬時に溶けて。
私は"四無効"で火魔法が無効で上位でも耐えられるはずなのに。
それすらも私を貫いていく。
「……あっ」
「ローズ様ー!!」
ふたりの声が聴こえたのが最後で。
炎は私の全身の毛皮を焼き払い。
痛みよりも先に胸の石が砕け。
そこで私の気は失われた。
……
…………
………………あっ!
この空間は……そうかまた私死んだのか。
どことも言えない不可思議な空間。
光り輝く渦まく光がどこまでも続いている。
死と生の狭間。
もちろん私はここで諦めるわけにはいかない。
「いやあ……あれは無理だな」
「ドライ」
「ツバイ〜あれはもうあわないほうがいお〜」
「アインス……そうか、この空間だからか」
私と別の魂であり同じ魂……
別の意思であり同じ意思のふたり。
ドライとアインスだ。
別に存在として見えるわけじゃなくて視覚的には光が浮いているように見えるだけだ。
目が無いのに視覚もなにもだが。
「この後"私"たち肉体は無いとはいえ復活するだろう? そこにも炎来ないか?」
「どうなんだろう……言葉を届けろと言っていたし、ワープだからないとは思う」
「うーん、こーなっちゃうのは初めてだから、ちょっとどうなるかこまるよね〜」
神の本体を撃破して霊体での復活をさせたことはいくつかあるが……
なることは初めてだ。
そもそも死にたくないし。
幸いなのは本気の火力で燃やされたせいで私が酸欠の中死んだりとにかく半端に燃やされてじわじわ死んだりはしなかった点か……
いやそれだとそこから展開を取り返せるからやはり最悪だ。
「さすがに蒼竜に相談するしかないよねえ……」
「そーだんしてどーにかなるー?」
「ならないだろうなあ」
「何もならなくても、まあさすがにあそこまでやられたら報告義務があるというか……あと……将来のこと」
正直油断してたかといえばしていなかった。
油断なしで回避の手も全部潰された上で1発でかっちり殺された。
魔王の乗り物はあの朱竜を殴り倒したのかな……いや。
きっと朱竜は負けた後にあそこまで鍛え直したのだろう。
そうじゃなかったら色々困る……
そして私自身の将来について。
改めて思った。
やはり私はこの界隈で生きていくにはいまだ脆弱すぎる。
一般的には強くとも神やそのぐらい強い相手にはすごく後れをとる。
蒼竜にも勝てるはずはない。
当然朱竜にも勝てるはずはないが……
ここまで一方的だなんて。
どうやればもっと強くなれて……
それでみんなを守り。
そしてみんなで生きていけるのか。
私はまだ無力だ。
今もあの炎がドラーグたちを狙わなかったから良かっただけで。
悪意のある相手ならばドラーグとコロロを狩っている。
ドラーグ自身がどうにかできる可能性がなきにしもあらずだが……
他者に頼りすぎるのはよくない。
もちろんこちらが神力開放しておらず神の炎への対抗が間に合わなかったというのはあるものの……
敵はわざわざ毎度待ってくれない。
結局速攻されたら終わりというのが浮き出されただけだ。




