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百三十四生目 暗雲

 イタ吉たちが自分たちの傷に布を張りつつ何か話している……

 やがて私達に気づいたらしく聞いてきた。


「なあローズ、なんで"ヒーリング"じゃあだめなんだっけ?」

「ああそれはね、"ヒーリング"はあくまで生命力を高めるだけで、つまりは元気を前借りしているだけなんだ。緊急時には使えるけれど、常に使ってしまうと後で元気のツケを払わなくちゃいけない。だから今はこうして、別の方法で治しているわけ」

「なーるほどなあ」

「いまのでわかったか?」

「いや分かるだろ俺」


 イタ吉の同士あれこれ話している。

 彼らは一応別個体で……

 思考も脳3つ分でズレると聞いたなあ。


 それはともかく私は今回の戦いうまくいって良かった。

 事前情報をだいたいわかってメンツを揃えれたのが強かった。

 落としまくってくれたゴウは今回一番の大打撃を食らったためあとで精密検査を受ける予定。


 そうでなくても血が足りないだろうからゆっくり休んでもらっていた。

 ふう……この後あれこれ報告してついでにこの今いる側の国に活動許可もらってと……


「……ん?」


 何か兵たちが慌てだした……?

 と思ったら。

 突如警鐘音が鳴り響く。


「な、なんだ!?」

「これは……ただごとではないようですが」

「伝令ー! 伝令ー!」


 ひとりの兵がこちらへと駆けてくる。

 かなり急いできた様子だが……


「どうしたの?」

「し、朱竜様が観測していた方向から突如こちらへっ、今すぐ避難お願いします!」

「「ええっ!?」」


 朱竜が突然こちらへ?

 聞いている周期的にここにはまだ数ヶ月こないはずだ。

 私は神力を使っていないし……


 ってあれ?

 ドラーグとコロロはどこへ?

 いつの間にかこの場からいない……いた!


 あんな遠くまで飛んでいっている。

 しかもあちらは確か朱竜がいるほうじゃないか?


「みんなは先に避難してて! 私はドラーグを呼びに行く!」

「お、おう」「わかったぜ!」

「借ります」


 イタ吉やゴウは私から(くう)魔法"ファストトラベル"を"率いる者"で借りてもらう。

 何か知らないけれどドラーグの様子がおかしい。

 早く追いつかないと。










『ドラーグ、ドラーグ? どうしたの?』


 "以心伝心"での念話がつながらない。

 さらには"同調化"が弾かれる。

 しかし"観察"しても異常は見られない……


 だいぶ国境から離れてもう私もニンゲン偽装を解除し翼の針を展開して空を飛んでいる。

 もうちょっとでドラーグの高度にたどり着く……よし。

 やっと並んだ。


「ドラーグ、コロロ、止まって! 朱竜が近くまで来ているよ!」

「パパ……行きたいんだって」

「ローズ様ごめんなさい、どうしても、こっちに行かないといけない気がするんです。本能から来る衝動みたいな何かが……」


 ど……どういうことだ?

 むりやり止めることはできるだろうが……

 それはしないほうが良いのかな。


 ドラーグの目は本気だった。

 コロロは困惑をしつつもドラーグに従う様子。

 私は……


「わかった、それなら私も付き合う。ちょっと朱竜自体も見てみたいしね」


 すぐ逃げる準備だけはしておいて。

 朱竜とご対面してみよう。

 一体この地を燃やし続ける神は何なのかを。


 灰が降りしきる中飛んでいく。

 明らかに前よりも灰の空気中濃度が上がっている。

 この灰の向こうに……いるのか。


 私は魔法を使ってみんなの防御性能を固める。

 何があるかわからないからね。

 朱竜が聞く限りならば出会い頭砲撃されてもおかしくはない。


 やがて灰で雲の中のような景色に変わる。

 もう流石にわかる。

 隠す気のない猛烈な気配。


 圧倒的な力の権化。

 朱竜そのものの気配。

 神力もパワーもあの時魔王の乗り物と対峙した以来の感覚。


「……着きましたね」


 ドラーグの声にも緊張が走る。

 ただ本来のドラーグならば真っ先に逃走を提案するような相手。

 それに対峙しているとは思えないほどにドラーグは落ち着いていた。


 灰の暗雲のりこえたその先に。

 こちらに向かっていたはずの相手はただしずかにその場で飛び待っていた。

 漂う赤いオーラが灰を弾いてむしろここは景色が良い。


 それはまさに魔王の乗り物と比較できるような巨大な存在。

 なおかつ静止しているだけでそれがあまりに雄大な自然そのものだと理解させられる。

 まさしく全身朱に染まったウロコはこの大地を思わせる。


 全身が活火山のように溶岩がめぐるのが表面に見え……

 それが文様として全身をきわだたせる。

 何よりもその身体は単なる生物とは違いまさしく火山と一体化しているかのような錯覚を覚える程に神のドラゴンとして完成していた。


「朱竜……これが……!」

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