百三十一生目 土塊
赤纏のスドラウグがゾンリューというゾンビのドラゴンを呼び出してきた。
10体もいて厄介極まっている。
ただ……なんとかいけそうか?
全体的にそこまで強くはなさそうだが………
「はっ」
「ギャアアアァ!」
ゴウの放つ素早い矢弾が次々と放たれ1体2体と落としていく。
こっちも倒さなきゃゴウの方まで行けないか……
あっ! 1体が影にいて襲いかかっている!
「グッ……!」
えっ?
光をまとった突撃で物凄いゴウが吹き飛んだ。
血痕が空を舞う……うそっ。
特殊な感じになっているというのはもしやパワーか!
パワーだけが段違いに高い。
「みんな! 彼らの攻撃は避けるのを意識して! ゴウが吹き飛んだ!」
「うぐっ……まだ大丈夫です……!」
ゴウは頭を振り起き上がる。
血にまみれているが意識ははっきりしていそうだ。
すぐに光魔法"ヒーリング"を精霊に頼んで唱え光の珠として放つ。
光の珠がゴウに当たると狼のようなその顔が少しは調子良さそうになった。
まだ次くらった時死に繋がりそうだから継続回復。
こちらは目の前の1体と折り合いをつけないと。
また命知らずな特攻を空から仕掛けてくるので……
そこを両手から針を投げる。
さらに火魔法"フレイムガード"!
目の前に炎の大盾が現れ……
ゾンリューは1回針をかすり2つめに針がしっかり刺さってそれでもなお落ちてきて……
炎にそのまま突っ込んだ。
その身は一瞬にして業火に包まれる。
私が身を翻すまでもなく勢いが消えたゾンリューが横に落ちる。
全身が激しく燃えて……いきなり姿が崩れた。
どうやら土に還ったらしい。
イタ吉のほうは……わりと3匹で囲んで殴っている。
あっちはあっちで大丈夫だろう。
ならば急ぐのはゴウの方。
ゴウは目にかかる血を拭いつつ矢を放つ。
3本同時に放つ矢を何度も行える方も凄いがそれらを力技で弾きながら近づこうするゾンリューもゾンリューだ。
脆いし弱いしそこまで高い思考もしないがとにかくパワーだけは異様にある。
特攻するためだけに作り出されたものたち。
役割が明確なのは厄介だ。
ゴウが1体に近づかれ腕を振るうその時。
届けこの針!
爪が届く……よりも先に私の投げた針がゾンリューの頭を撃ち抜く!
わずか届かず爪はつちくれになり……
その場で崩れ去る。
「間に合った!」
「残り2体です、ここをすばやく制圧して行きましょう」
2体のゾンリューは空を舞う。
とにかく私達の頭上をとって迎撃を避けているらしい。
確かに打ちづらいわりに向こうは急降下して蹴ってすぐ浮き上がる。
防いでも結構痛い……!
ええと周りの兵あまり見てないな……良し。
針を次々投げてそれを全て誘導化。
軌道は無茶苦茶だが大量の針をゾンリューに"針操作"でお届けだ。
突如下からやってきた針たちに軌道が乱れ腕で必死に弾き。
弾いた瞬間に矢が何本もゾンリューたちに突き刺さった。
針に気を取られた時にゴウが素早くステップ移動し仕留めたのだ。
その2体も地面に転がって地面とひとつになる。
イタ吉のほうは……終わってこちらに向かってくるところか。
とりあえず私も"ヒーリング"で癒やしつつドラーグと合流しよう。
ええと今いる位置は……あそこか!
天空高くに飛び回っている。
スドラウグのほうは大剣ゼロエネミーに追われつつ自身の傷でも治しているらしい光を纏っている。
厄介だ。
早く戻らないとまた耐久値を削るイタチごっこに。
私はゴウや追いつくイタ吉たちと共に駆ける。
ドラーグがはるか上空にいることを考慮しすぐ降りてきてもらうよう"同調化"で伝え……
私達は一定の方向に走り続ける。
「どうだ?」
「結構ヤバそうじゃないか?」
「うーん……あっ、ドラーグが来る!」
イタ吉たちが口々に言う通り5体に追われているドラーグは飛べるし大きいとは言えゾンリューの力が強すぎて不安だ。
その不安が的中するかのようにドラーグが向かってくるその姿はすでに傷のあとが多く見られる。
一部血を空に流しウロコが舞う。
しかしそれでも致命打は1発も受けていない。
コロロも無事だ。
「ドラーグ!」
「ローズ様ー! みなさん、頼みます!」
「結構……突いた、あとすこし」
コロロが言う通りなら……
手からたくさんの針を生やしゴウは矢をつがえイタ吉たちが爪を鳴らし。
ドラーグが通り過ぎ……
5体の追尾ゾンリューが針と矢と爪が入れられて。
土塊として爆散した!
よし。耐久値を削っておいてくれたから無事倒せた。




