百三十生目 息吹
赤纏のスドラウグは頭の宝石を抑えうずくまる。
今のドラーグ連撃はクリーンヒットだったらしい。
私達も後に続いて地味ながら傷を増やしていく。
「クワァコロロ!」
「……うん」
ドラーグが飛び上がり思い切ってコロロを投げる。
勢いに乗ったコロロは槍を構え……
光を纏った大きな1撃として落下ごと打撃を与える。
「グオオォッ!」
その首に舞い降りた刃は見事に大きく1撃が入った。
深く突き刺さりコロロは反動をつけて引き抜く。
毒になることはあまり狙えないけど毒自体が深い打撃を与えるのに一役かっているようだ。
次々私達が切り裂きいい調子で生命力を削っていたらさすがにスドラウグが持ち直す。
大きく身体を開き上を向いて……
「ウオオオオォォォ!!」
「わっ」「ひゃっ」「くっ」
思わずこちらが怯むほどの咆哮。
耐久値の残りは半分ほどなのに!
赤い輝きがもとに戻りまた全身に纏う。
それだけではなく一気に高く飛び上がり……
近くの高い建物の上へと飛び乗る。
うわぁアレは大変……壊されないようにしないと中には重要品やニンゲンたちが。
「調子に乗るな! あまり使いたいものではないが……貴様らが悪いのだぞ」
「あれは……みんな離れて!」
ドラーグの回復をしようと思っていたらスドラウグが大きく息を吸い込みだす。
これは来るぞ。
"リターンブレス"が!
全員あわてて退避すると……
彼が近くの地面へと黒と白の混じった摩訶不思議なブレスを吐き出す。
すると地面に広がってゆき……
「「うわあぁ!?」」
「あんなところに兵が……!」
改めてドラーグを治療しつつ目線を向けていたら兵たちが何名かブレスに巻き込まれる。
まああれを食らっておそらくは死なないけれど……!
やがて光の煙が収まると地面から何か土が盛り上がっていく。
それはやがて小さな竜の形を取り……
色も整えられまさしくドラゴンゾンビとして姿を得た。
小さいとはいえ2メートルはあるのが10体はいるぞ!
「グオオォ」「ガオオォ」
「う、ウボァ、た、助けて……」
「俺らはぁ、味方だよぉ……」
そしてそれに紛れている小さな姿。
ニンゲンがまるで半ば腐ったかのような姿をしている。
あんな瞬時に血の気がなくなり半ば腐敗しているかのような姿になるとは……目の前にしてみると恐ろしい。
というか砦の中にいる兵たちがどうするべきかかなり悩んでいる。
このままじゃあ槍を突いて外に落としそうな勢い。
「おーい! その人たちは時間がたてば治るよー!」
ここで光神術"エコーコレクト"を使う。
遠い場所への相手に音を直接お届け。
ちゃんとたまに使い方を忘れないように訓練しててよかった。
届いたらしく武器を避けて距離はあけつつも砦の中に引き込んでいる。
よし……彼らは大丈夫だろう。
急がなくちゃいけないのは10体のドラゴンゾンビか。
ドラゴンゾンビたちはスドラウグの指差しと共に一斉に飛び立つ。
様々な軌道を取りながらこちらへ襲撃してきた!
純粋に数的有利がひっくり返されてこれはつらいな!
[ゾンリューLv.50 比較:弱い(一部特殊値あり) 異常化攻撃:なし 危険行動:ドラゴンダイブ]
[ゾンリュー ドラゴンのゾンビとして生み出された存在。僅かな時現世に蘇った存在として全力を主人のために尽くす]
「ギャオオオォ!!」
特に言語がなく意味もなく吠えているだけのようだ。
ただその気合は十分。
こちらに襲いかかってきた。
ドラーグに5体私達に5体か。
イタ吉たちもいつの間にかこちらにやってきたようだ。
ドラーグには時間稼ぎで逃げるように"同調化"と"以心伝心"で指示出しして……
こっちの5体をなんとかしよう。
ゼロエネミーにはスドラウグの方へ向かっていってもらっている。
追加で生産されたら適わないし。
目の前の相手に後ろステップしながら針を投げる。
2mは目の前に迫れば十分巨体。
しっかり頭部に当てていく。
腕振りの光で一部弾かれたが……
それ以外はヒット!
逆方向へと大きく吹き飛んだ。
今の手応え……もしやかなりの大打撃が入った?
「ほいっ」
「そらっ」
「もいっちょ」
イタ吉たちはいつもの3体コンボ。
空振らせ尾刃で斬り痛みを忘れさせる。
……って思ったら追撃で爪をふるった。
そういうパターンもあるのか。
なによりそのパターンで1体のゾンリューが吹き飛んでいた。
殲滅速度優先かな。
少なくともまだ2体とも立ち上がってきそうだし3体は上空を回りながらゴウの矢を避けつつ近づこうとしている。
ここで時間をかけていられない!