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百二十五生目 不足

 国境をまたいで赤纏(せきてん)のスドラウグは暴れているようだった。

 当然あちら側にいる時はこちらの兵士は手を出せず……

 逆にこっちにいる時は向こうの兵が手を出せない。

 出したら宣戦布告みたいなもんである。


 それでどちらの管轄かでも揉めるし討伐も困難で普段の業務もあると。

 そこに冒険者が呼ばれるのはなんとなく納得な気がする。

 許可さえあれば国の線をまたぐ戦いも出来るのが冒険者だ。

 

「さらにだね。最初に2つ名持ちを観測したのがこちらだからという理由で、相手は全責任はこちらにあると主張している。自然物にどこが責任とか、ナメとるとしか思えん」


 ああなるほど……

 あの山積み資料の中には国境警備大隊長をイラつかせるような向こう側の言い分が書き連ねたものもあると。

 不機嫌そうな理由もわかった。


「なるほど。その点冒険者ギルドならば機転が利くと」

「そうだ。それに確かに我々は組織としては対立気味だが、それだけで現場が回るわけではないことぐらい、なんとなくはわかるだろう」


 なるほどね……

 それを言われるとピヤアと組む共和国冒険者ギルドの姿や政府側もピヤアと組んでいるのを思い出してしまって複雑な心情になるけれど。

 果たしてピヤアはどこまで入り込んでいるのかな……


「ええ、まあ。それで、私が向こう側と交渉して、それから戦闘にあたって欲しいという感じでよろしかったですか?」

「ああ。ただ……ギルドへの通達は、相当な腕利きをよこすように頼んでおいたはずだが……本当に大丈夫なのか? 貴殿はどうみてもパッとせんが、2つ名持ちの中でもかなり強い個体だぞ」

「そこは……大丈夫です! 仲間たちが強いので」


 フンと彼は鼻を鳴らす。

 まあ信用は仕事で勝ち取ろう。








 国境をまたぐにはいくつか準備がいる。

 私の身元保証書……ようはパスポートのほうはもちろん持っている。

 国境を渡るための橋で手続きをして……


 向こう側に渡ると今度は入国手続き。

 共和国で色んな認可が降りているのを見せてこちらの立場をアピールして。

 少し特殊な入国滞在許可証を貰えた。


 さてここから。


 これをもってこちら側の大きな建物へと向かう。

 向こうもある程度は事情がわかっていようですんなり通してくれた。

 そして1階の入り口で。


「こんにちは、冒険者なのですが活動許可を得に来たのですが……」

「はい、どのような……ああっ!」


 私がみせた討伐または撃退依頼書を見て案内の人もすぐに合点がいったらしい。

 すばやくどこかに念話を繋げているのか頭に手をやる。

 念話時はみんなのクセが見受けられるので個性が浮き出るよね。


「少々お待ち下さい……」

「はいー」

「………………はい……はい、大丈夫です! 申請が通ったので、その魔物の討伐時に多少暴れてもらっても大丈夫だそうです!」

「ありがとうございます、早速いってきますね」


 やっぱりこっちでも困ってるんだろうな……

 おえらいさんと繋いですぐ通るあたりある程度裏で話も合わせてあったんだろうなとも。


 私は諸々の処理をその場で終えて……

 表へ出る。

 赤纏(せきてん)のスドラウグがいるところのデータなんかも2ヶ国から少し貰えていた。


「場所は……あっちか」


 まず戦うにしても斥候してちゃんとデータをとりたい。

 暴れても良いとは言ったもののこんなところで全力出して暴れるわけにもいかず……

 そもそもいきなり対面戦闘じゃなければ先にデータとって対策するのが戦闘の基本。


 私もさすがに2つ名持ちに余裕な気分はもたないからね……

 まず基本的なスドラウグ情報から。

 ドラゴン族でゾンビのようなアンデッド風味ながらその身には輝かしき光の力を放つとされている。


 古代の時に祀られていた遺体が今になって蘇った……とも言われている。

 ドラゴンとしては生前とは別個体でちゃんと意思を持ち活動するという記録があった。

 その代わり生者への恨みが大きいとされ生きている相手は徹底的に叩く……としているんだけれど。


 ドラゴンってそもそもがだいたい破壊的でごく一部以外強そうなものに勝負を仕掛けて狩っていくからなあ。

 正直それが原因ってだけな気はする。

 それはともかく。


 国境から少し離れたところまで歩んでゆき……

 山あり谷ありなここらへんの地形でうまく隠れるようになっている洞窟へ進入。

 情報どおりならここから赤纏(せきてん)のスドラウグの住処までいけるはずだ。


 洞窟内は普通にコウモリの魔物やら蛇の魔物やらと複数いる。

 当然のように襲ってくるので……そうだ。

 針の練習をもっとしよう。


 私の全身から生やせられる針。

 これを鎧やイバラに変化させているわけだが……

 針単体での使い方にもっと工夫を持たせられるはずだ。

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