百二十一生目 刺毒
戦いの始まりだ。
ドラーグとコロロの戦いだが……
実質上コロロの戦闘を磨くためのもの。
「クワァコロロ!」
「……うん。竜上槍、展開」
コロロの背負っていた槍は小さいものに見える。
しかし取り出し構えると槍のギミックで折りたたまれていた本体が展開してゆき……
最終的に身の丈を大きく越える長い棒が生み出された。
先にだけ小さな刃がついている。
ニンゲン種の中でもコオニという種族であるコロロは……
見た目は単なる小柄な女の子だが、その外見からは想像もつかない怪力を持つ。
今までは鍛えてなかったせいでまるでその気配が見えなかったが少し鍛えただけで今は恐ろしく力を身に着けている。
いくら初心者用かつ土の加護で手に馴染むように加工したとは言えちょっと前まで練習用でゆらゆらしてしまっていたとは思えないほどしっかりとした手取り。
騎乗中なため片腕で持ちもう片手でドラーグの鞍を掴む。
そして……跳んだ。
ドラーグの上を素早く飛び移り……
「おらおら、どうしたどうした!」
「まだこっからだぞー!」
「わけのわかんないこと話してんじゃ、ねーぞ!」
3羽がこちらを煽ってきている中コロロは落ち着いて懐から物を取り出す。
マニキュアを塗る道具に似たそれを……
刃の上にまるで爪のように光を出しながらサッと塗る。
塗ったのは私の使う毒だ。
だから容器もハケも実は単なる化粧品じゃなくて耐毒特性品。
彼女がドラーグと相談して決めた新たなスキルのひとつがこの特殊な化粧らしい。
サッと塗られただけのはずだった槍は刃の部分が変色し……
まるで別の色と変わり果てた。
これで腐ったり溶けたりしないのもこのメイクの特徴。
コロロはドラーグの上からそのまま張り付くように走り……
「……傾いて」
「こうかな!」
私からスキルを借りて"同調化"を使っている2人は息を合わせ……
ドラーグが傾いて鳥魔物との距離が一気に縮まった瞬間に槍が突きつけられる。
鳥がちょうどすれ違い光とともに思いっきり当たった。
「グガッ!?」
「うおっ、届いた? 大丈夫か!」
「うお、お……! 大丈夫、持ち直した」
斬られた相手は少し体勢が崩れるもののすぐに復帰する。
まあまだまだ弱いコロロの1発程度ではこうなるだろう。
ただしその毒刃はしっかりと入ったのだが。
「おらっ、ナメんな!」
手すきの2体がドラーグの方へと飛んでくる。
ドラーグが突っ込んでくるのを避け動くのに合わせちゃんとコロロも落ちないように動く。
とはいえとある理由でドラーグの身体に急角度でもひっついているけれどね。
「あたらないよ!」
「……ん」
「おっと!」
コロロが背中側から急接近してきた1体を見つけた。
ドラーグが"同調化"のおかげで気づき"防御"。
腕をクロスして光の壁で受けなんとかしのいだ。
あいつは最初に食らった奴かな。
「よし……なんとか!」
「ちっ、完全に入ったと思ったんだがな……」
「だったらどんどん攻めるだけよ!」
「……パパ、こっちも攻めよう」
「わかった!」
コロロが何度か素振りしつつ感覚をたしかめる。
どうやらいい感じの当て方を多数確かめているらしく毎度攻撃方法を変えている。
ただ攻めに転ずると言うことは……
「「オラァ!」」
「いくよっ」
鳥たちはドラーグが攻めてくるのを嫌がり上へと回り込み……
一斉に背中から風の刃を放つ。
ドラーグはすぐに体勢を切り替えして風を迎え撃つ。
一瞬翼を全面に回して光を帯びながら急加速。
風の刃を蹴散らした。
「「はやっ!?」」
「……やっ、はっ、えいっ」
翼が開かれ頭の上にはコロロ。
逃れようと3方向に展開して行く鳥たちを……
斬る。突く。投げる。
「「ぐえっ!?」」
投げられた槍は鳥に当たった後に抜け落ち……
ドラーグが急降下してコロロが受け取る。
丁寧な試合運びだ。
「っさっきからチクチクチクチクと、いい加減上に乗ってるやつうぜえな!」
試合1番最初に切り裂かれた1体が怒りの突進。
ぐんぐん軌道を変えながら光を纏って突撃してくる。
「……パパ、あれはもう大丈夫」
「わかった、あと2体だね」
「どこへ行くーっ!!」
ドラーグはそれを受けずに大きく上昇。
追いかける1羽。
しかし……
その速度は急激に落ちていく。
やがて完全に失速し。
「な……なにが……うげえ……」
落下した。
私はそっと移動をして……
毒沼近くまで落ちてきた彼をキャッチ。
治しておこうっと。
"鷹目"で上の戦いは様子が見られる。
何かわーぎゃー言って互いに近接で斬り合っているようだ。




