百十八生目 意識
講座の続き。
講座では入力と出力の話をしている。
とりあえず入力に効果がなくなったらと記入。
「えー、この技術はこの場合、[効果がなくなったら][同じ魔法を唱える]としています。このやり方はすごく基本的なもので、とてもやりやすい組み方になります」
「あの……先生! さっきからすごく気になるんだけれど……」
「はい?」
話をしていたら生徒から質問が。
もしかしなくともあの話かな。
「さっきからたまに光ってなんらかの魔法が先生を覆っているのってもしかして……」
「お、誰かが言ってくれるのを待っていたよ。そう、私はこれを今まったく意識せずにやっているよ。これが見やすいがために夜やっているのもあるんだよね……この基本的なルーチ、ではなくて今黒板にある技術でね」
「「おおー」」
ルーチン組んであるとかわけのわからないことを口走りそうになった。
そういう講座じゃないんだってしっかりしろ自分。
「じゃあ話ばかりもなんだし、実際やってみようか!」
全員で何もない空き地に移動した。
まあ青空教室は自然に周囲には何もない配置にしているらしいけれどね。
「それじゃあ――」
1つめの行動。
頭の中に箱と箱を出しそれを線でつなぐ。
これははっきりと念じておく。
2つめの行動。
使いたい魔法や武技を片側に。
使うきっかけをもう片側の箱に入れる。
このさいの流れは自分の感覚が一致している方向にすること。
左から右でも逆でもよく上から下でも逆でも良い。
その3。
流れを念じる。
入力である動きのきっかけから……
結果的に発動する魔法まで。
この時に大事なのは身体に染み込ませること。
慣れればあれこれ付け替えられるが慣れないうちはそんなことに手を出さず……
ひたすら効果が切れたらまた唱えるというのを意識。
これはもちろんただ思うよりも実際に発動させながら行ったほうが良い。
でないとだんだん意識が遠のくだけ。
これは受け身の訓練とも似ているかも知れない。
緊急時にでも考えるより前に身体が正しい受け方をしたほうが良いのと同じ。
というよりそもそも脳はちょっと上下の位置が変わるだけで混乱して瞬間的に役立たずとなる。
そもそもこの今回の講座もバタバタして忙しい時にわざわざ考えたり常に意識する手間を省くための技として教えている。
もはや思考のさらに底へ落とし込まないと意味がないのだ。
そしてここからが大事だが。
「みなさん、多分今すぐできる方そしてできない方がいるとは思われますが一旦ストップで!」
「「はーい」」
「今はできる方できない方がいるのは当然で、しかも実はそこまで大きな差はありません。大事なのはここから。なにせ、本来やる時は無意識にやる必要があるんです。頭の中にある箱の流れをスムーズに」
かなりこの部分は重要になってくる。
やっぱり意識すれば多くの魔物たちはなんとなくできる気配があるが……
真の価値は無意識下でできるかだ。
「まあそうなるよな……」
「忘れちまいそう」
「さらに、この工程はもっと複雑化したり[効果がなくなる何秒前から]という始まりにして、効果が切れている時間を無くすように調整することもできますが……それらは今の基本ができてからです! なので、また1週間後に見たいのだけれども、その間身につけるために……」
私は近くの箱から荷物をとりだす。
中身は小袋たち。
トゲなしイバラで次々と配る。
「これは……?」「うん……?」
「あ、きのみだ!」
「これは、行動をやれるたびに少しずつ食べていってね。習慣づけとして大事だから」
この豆みたいなきのみは食べると行動力の回復を促す。
単なる習慣づけなだけではないのが特徴だ。
あんまりやりすぎりとこれだけでお腹がいっぱいになるのであくまで少しずつだが。
「おいしそー」
「やる気出てきたな!」
「みんな! 大事なことがあるので一旦もどってねー」
教室にもどった私たち。
みんな近くの魔物とさっきまでの話で盛り上がっているようだ。
さて。
「えーとそれじゃあ、再開しますね。先程はあえて省きましたけれど……こうすることもできます」
私はさっきの図を使い真ん中の線を一部消し……
そこに新たな四角を描いた。
「これは……もしかして、さらに始まりを増やしたんですか?」
「うん、たぬ吉。これでふたつの発動条件を整えられるんだ。みんなにはこれも意識してほしい」
私は黒板にある中央箱へさらに[行動力残量半分以上なら]と書いた。
これでひとつのかたまりができあがった。
これがないと私はともかく一般的な生き物だと尽きるまで使う羽目になるからね。