百十生目 水底
帯電したイバラで頭を石ごと"縛り上げ"!
激しくバリバリと電撃が流れ……
ウロコの上をギリギリと縛る。
正直全然トゲが刺さらないのですごいつかみにくい。
ヌルヌルする……!
けれど動きがガタガタと動きつつもこちらのイバラからは抜け出せないらしい。
感電させるのは思ったよりも効果的だ!
そしてもちろんこうした理由は。
"無敵"を叩き込む!
「そろそろ……おとなしくなって! そして出てきて、飲み込んでしまった神の武器……多分宝石剣!」
「のみ……こむ……ぐ……だ……出さなきゃ……! いらない、こんなの、うが、ぐ……わたしを、のっとるチカラなんて、いらない……!!」
少しずつテリアンコウの声色に正常な範囲が見られだしている!
また飲まれる前に急いで"無敵"を追加で!
「みんな! 今だよ!」
「吐き出させてやる」
アヅキたちが一斉に攻撃を仕掛ける。
"同調化"による息を合わせた攻撃。
アヅキが魔法で放電し……
「それっ!」「はあっ!」[いくよ]
バローくんが植物を地面から生やしていたものに魔力をさらに与え花が咲き……
そこに光が集まってさらには光線が放たれる。
そしてフォウが今度はひとつの長棒に発火するもとの魔力油を合成。
燃え盛る長棒をジャグナーが持って勢い良く投げる。
それら3つが合わさってひとつの大きな攻撃となり……
テリアンコウの横腹に大きく当たった!
テリアンコウは少し勢いに押され……
身体が多少凹むと何やら様子が変わる。
これは……
「ウゴ、ガッ……き、気持ちが……悪い……!」
「思いっきり吐き出して、その邪魔な力!」
「あ、アアッ……!」
テリアンコウの身体が大きくうねり……
私が思わず振り払われ離れると。
待っていたと言わんばかりに大きく震えて。
「ゴオォウェッ」
吹き出るかのように口から多くのものが飛び散る。
その大半はゴミだ。
なにかの食べかすや本当になんで飲み込んだのかわからない無機物まで。
剣ゼロエネミーも飲もうとしていたし神の力で変な誘導をかけられていたのかな……
そしてゴミの山より大事なもの。
それはひと目見て神力の塊だと理解できた。
それに……
「ああっ、宝石剣じゃない!?」
[残念。だけれども、こんなところにあったのか]
バローくんが指しフォウが目を細める。
その先に有るものは……1つの槍だった。
アンコウと細めの肉で物理的に繋がっている謎のそれは。
作り出された槍と言うには生体的で。
吐き出されたというには神々しく。
白く細身の柄に何本もの枝分かれした刃が角のように生えている。
それを武器というには難しく。
なにかの一部だとすればそれはツノなのか。
しかしだとすればきらびやかな飾り付けをされた刀身がむしろ違和感を増殖していた。
武器としては前世ではありえないほどの飾り気で使えないだろうが……
この世界は違う。
この武器のように恐ろしいほどのエネルギーを秘めたものほど強い……!
[水底穿つ剣]
フォウはどこか懐かしげにそれを見た。
間違いなく宝石剣ではないが何か知ってはいるらしい。
とりあえず……"観察"!
[神海創槍ミフソホ 古代神の武器であり肉体の一部。様々な伝承がここから生まれた武器のひとつで、振るえれば陸は裂け海になるとされている]
なんだろうこういうのあんまり言いたくないけれど……
"観察"したさいに出るデータに若干の濁しを感じる。
もちろん私の観た結果なので色々と違いはあるのだろうけれど……
それ以上の作為を感じた。
これは魔王がフォウを名乗ったさいのソレに似ていた。
まあ言わないけれど!
『飲み込め……全てを……力が足りない……力を持っと……!』
「て、テレパシー!? こういうの苦手なんだよ! 最近いつもの奴らは慣れたけどよう!」
「この声……さっきまでテリアンコウが言っていたことに似ている!」
「本当の親玉登場ですね」
ミフソホ槍から念話が流れてくる。
しかもなんというかとてもうるさい。
神力を持つ私達ですらこうなのだからこれを体内で聞き続ければ……
おそらくは乗っ取りすらもこの槍がテリアンコウを誘ったのだろう。
この強烈な力への渇望思考の渦はかなり危険だ。
改めて思った……こう言うのはちゃんとしたところに管理したほうが良い……!
「ぐ、ぐうぅ……!」
「わっ!」
テリアンコウが苦しんてきたと思ったら……
突然動き出して光を纏った攻撃を放ってきた!
なんなんだ?
やたらと苦しんでいる様子……まさか。
あの状態でも操られているのか。




