百七生目 受身
フォウが作り出した生命力回復薬を背負ってもらっているジャグナーにかけた。
「フゥ〜っ、生き返るぜ」
ジャグナーの生命力がみるみる回復していく。
みんな傷は多く持つものの生命力そのものは高く保ったまま。
攻撃の見切りが出来るようになったからだ。
「あれは……細かい方の水きます!」
「こざかしいな」
バローくんが警告した通りテリアンコウはその纏った水からたくさんの水弾を撒き散らす。
ただ回避は難しいもののあれは威力が低い。
事前に理解して離れさらには"防御"を固めた私たちにとってそんなに恐ろしくはない。
飛散してきて足場に穴を開けながら私にも飛んでくる。
しかし事前にグラハリーの鎧を分厚くして私の前に切り離し置く。
そこに私自身をエアハリーのように小型化して隠れ潜んだ。
水弾が当たり弾ける衝撃そのものはとても強い。
しかしこうやってつながってさえいなければ……
当たってもその衝撃が私に伝わることはない。
当たったらある程度吹き飛ぶし使い捨てになっちゃうけれどね。
みんなもそれぞれの方法で防ぎつつ。
私は長剣ゼロエネミーに今暴れているテリアンコウに攻めるように念じ……
今高く飛び上がっている刃が。
水弾を切り払いながら……
ただまっすぐに加速して落ちる。
光と共に大きく切り裂く。
斬撃のキレイな音が鳴り響き……
一枚の大きな鱗が跳ねた。
「ウオアアアッ!! 強い、力……! 取り込む!!」
重い音をたてウロコが地面に落ち……
テリアンコウからは血が吹き出た!
すぐに止まるがこの流れは良い。
テリアンコウが叫びながらゼロエネミーに食らいつこうとしているがテリアンコウに捕まることはない。
そもそも抜け出せるしね。
テリアンコウが気を逸れればその間攻撃のチャンスが増える。
「そこっ!」
私も攻撃参加。
イバラをガンガン伸ばして……
空から水の剥がれた場所へ"猫舌打ち"。
"無敵"も重ねテリアンコウの正気化を狙う。
"猫舌打ち"でイバラたちが細分化しつつ相手の皮をひん剥くようトゲが生え。
何度も打ち込んで行く!
敵の頑強さを落とす能力がある"猫舌打ち"はかなり便利だ。
こういうチャンスには打ち込んで行く。
打ったところに下がるような光が見えたら能力降下の合図。
そして"拷問払い"だ!
これは相手が能力低下している時により強力な力を発揮する。
光が輝きイバラが唸る。
ただそれはそれとしてテリアンコウが体の向きを変え……
口から水を放出した。
放射された水は枝分かれして細めに多数の方向から攻めてくる。
「ウッ!」
鎧に合わせ弾かれ吹き飛んでその先でも水のビーム。
光の纏った水は鎧に合わせると抉られ吹き飛んで……
それを各部位に合わせて次々防ぎきって……
最終的に地面へ叩き落される。
転がって背後に飛ばされるが……
受け身は取れた。
1撃も直撃を喰らっていない。
全てを鎧でしのげた。
まあ……痛いしボロボロだけどね!
自分の生命力を回復するため光魔法"ヒーリング"しつつ自身の毒を"疲れ知らずの魔毒獣"で還元し自身を回復。
その後追撃の水弾を飛んで避けて再度高速飛行。
ゼロエネミーはその間も斬り込んで行く。
やはり神力すら持っているかなり強く硬いテリアンコウみたいな相手はゼロエネミーでも切り裂きに苦戦する。
回転させると連続で入れられるけれどどうしても軽くなって先で弾かれやすいんだよね……
ちゃんと学んでやっておいて良かった剣の動き。
鱗は当然刃が滑る。
回転は先を刺しこむのが前提だからなあ。
1撃にちゃんと比重を置かないと。
すぐ私自身も戦線に復帰してどうにか近接戦闘のスキを探さないと。
まずわかったのはあの水をまとった姿は大きな攻撃で一部を砕け……
テリアンコウが水の中に帰ることで復活する。
つまりはテリアンコウができる限り水に帰らずにまとった水をどんどん壊さなくては。
水をまとっていると傷が治るらしく生命力が回復していくのが何度か見えた。
ただそこそこ欠けると自然治癒が消える。
そうこうしている間にせっかく接近しようとしたのに水の中に隠れられた。
大変だな……生命力は残り半分程度なんだけれどまた治されてしまう。
そして水の中に行ったということは。
「暗闇に隠れたぞ! どこから来る?」
「……あっちだっ」
アヅキが指した方にきらりと輝くもの。
額の鉱石みたいな部分だ。
勢いよく突っ込んでくるから……直線が危険。
全員が転がるように攻撃ラインから逃れた近くをその巨体が泳ぎ来る。
もはやトラックかなにかが100キロ出して突っ込んできたかのような恐ろしさ。
全員食われてないね……よし。
テリアンコウはさらに水の中へと飛び込んだ。




