百四生目 神域
いきなり周囲が水で覆われた。
私達は神力で保護して中和し平気なものの。
これは……
「主、一体何が起こったのです?」
「多分、敵の神域に私達が引きずり込まれた……」
「敵? 神域っていうとおそらく、この水中のことだろうが敵ってまさか……」
アヅキやジャグナーが察してくれている。
神域は神の結界内とか領内なども言われ神が作り出すひとつの異世界。
それは他と地続きだったり屋敷のようだったり。
ようは住んでいる場所のひとつでもあるのだが……
大事な拠点であり同時に自身の力をフルに発揮する場でもある。
そのため擬似的に再現した神域に相手を引きずり込むのは明確な敵意。
似たようなことは蒼竜もしたがあの時は単にコンテスト会場を作り出しにとどまったが……
今回はそんな優しいことではない。
完全に喰いに来ている……!
暗闇に囲まれた空間にキラリと輝く何か。
「テリアンコウがあっちから!」
「「うわっ!?」」
全員が慌てて泳ぎ避ける。
直線にテリアンコウが泳いで突っ込んできていた。
なんとかみんなギリギリ避けきる。
危ない……
「くそっ、こんなところまで!」
「な、何がなんだか……?」
「とにかく、テリアンコウは私達を敵と……むしろエサと認識したみたい。やらなきゃやられるから……こう!」
しかし私も相手の神との戦いは重ねている。
だから……神力開放。
前足を胸の石に当てて祈ると光が放たれ広がり……
世界が中和されていく。
この広い海中に比べればわずかなもの。
しかし……飛べるだけの空に走れるだけの地面。
で……できた。
世界に概念の色付け。
空間をなんとか普遍的にしただけで足元はあきらかにさっきまでの岩場が広く丸く出来ただけ何だけれど。
けれどこれで戦いの場が出来た。
「わっ!? ココは陸地!? ローズさんがやったんですか?」
「うん、構えて! 来るよ!」
「ようし、陸に上がればこちらは勝つし、向こうは何もできんからな、引きずり込むぞ!」
全員改めて身構える。
結構周囲は明るくなった。
これで範囲内だけだが見渡せるはず。
そして……キラリとまた光るものが。
一気に近づいてきて……
[来る]
水の境界を……突き抜けた!
……だけど。
「む、なんなのだあれは」
「水を纏っています!」
アヅキが飛びバローくんが指差す先。
テリアンコウはその全身を水で覆い……
更には浮かんでいた。
平然と泳いでいるしどうやら陸だから楽になる……とはいかないらしい。
「腹が、減った! ガアアアッ!!」
「ローズの剣も食べようとするし、俺らも食べようとするし、めちゃくちゃだな!」
「正気には見えませんね……!」
順番にやっていくしかない。
相手がどこを狙っているのかが直感的に理解できる。
神力解放して本来のパワーがもどったおかげだ。
扇状にテリアンコウが力をためたのを放ちそう……
"以心伝心"で理解共有しつつ一気にバラけた。
広い範囲にテリアンコウの口から水が放たれる!
水は当たった範囲を容赦なく押し流し……
地形が一部欠けた!?
そうか……神力の上書きをされたのか。
量はともかく質だけは恐ろしく良いからこういうことでさらに上書きをされてしまうと。
時間をかければ直るだろうがまずは攻めないと。
「主!」
「アヅキ、よろしく!」
「行きましょう!」
私は背から翼の針を生やし空を飛んでアヅキと合流。
そのまま雷を両者走らせる。
[スパークボルト ジグザグな曲線で雷撃を放つ。その時に自身も纏う]
「「ハアッ!」」
私達は互いに身を寄せ合いひとかたまりとして雷撃を纏い……
強烈な雷を放った!
放射された雷はギザギザに曲線を描きつつ………
テリアンコウのまとう水に直撃した!
海水は雷撃と相性が良い。
さらに独立した水なため雷撃は全てテリアンコウに注がれる。
何秒もガリガリと雷撃が走り……
私たちはその場を離れる。
「チッ、まだまだか」
「でも手応えはあった!」
分厚い水弾が吐き出されてくるのを解散して避ける。
テリアンコウはいまのを食らってもピンピンしている。
しかし生命力が削れていないわけではない。
ただやはり精神がおかしいのかまるで反応がない。
ただひたすらにこちらに攻め込もうと中身のない言葉を叫びさらなる水弾を放ってくる。
近づければ"無敵"で少しは正気へのきっかけをみい出せるかもしれないが……
「やります!」
[一緒に]
「うおっしゃ、行け!」
ジャグナーがフォウを担ぎながら走る。
さらにバローくんは降り注いでくるたくさんの水弾を避けつつ……
杖を輝かせ地面に軽く弾く。




