百二生目 撤退
魚影が砂場でて私達を丸呑みしようとしてきた!
「な、何が!?」
「やべえ! とにかく逃げろ!!」
[宝石剣はどこへ行ったのだ]
砂場から出てきたあまりに巨大な魚影。
それは私達を丸呑みしてあまりある。
口がひどく大きく下顎が発達している。
恐ろしい牙が口内に何重にも並び食らいついたら離さないだろう。
宝石剣かと思っていたものは彼の頭に刺さっている。
むしろ生えているのか。
なんだか重い気がしていたよ!
暗い色の魚がこの暗闇の中潜んでいるとは……
しかもこんな神の力を発しながら!
"観察"!
[テリコウアンLv.33(+37) 比較:かなり強い 異常化攻撃:目眩 危険行動:踊り吸い込み]
[テリアンコウ 深海に潜む魚の魔物。色んな相手を誘い出す力を発し何でも飲み込む。メスの個体のほうが大きい]
完全に誘い出された!
これは……早く逃げなければ!
[そうか、動いた形跡はこの個体が動いたからか]
フォウも驚きつつあれこれ言っているが……
なるほどと思うと同時になんでだ。
なんでこれがフォウも惹かれたんだ。
「フォウ! 反応はどこに向いている!?」
[あの個体だよ]
「ええー、どうして! そんなふうに見えないのに!」
「やべえすぐそこにくるぞ!」
なぜか宝石剣の反応そのものはあのテリアンコウから出ていて……
そのテリアンコウは私達を飲み込もうとしてくる。
だいぶ近くにいるからとにかく振り切らなくては。
剣ゼロエネミー!
横から飛んでいってほしい。
そうして巨体に刃を突き立てるんだ。
剣ゼロエネミーが変化してゆき大剣になり……
その重量を生かして横から殴りかかる。
相手も気づきすぐに旋回。
こちらの方が早い!
横っ面に刺さっていく。
「うんっ!? 硬い……!」
だが深くは刺さらない。
こちらも水適性のあるゼロエネミーだから威力減衰していないのに……
さっき"観察"したさいもレベルに謎のプラス補正があった。
効果的な1撃を与えれず抜けてしまった。
何か……何かがおかしい。
「アアア……! 喰われろ!」
言葉がわかったのは良かったが……
え……? 方向転換をした?
どちらにというと。
「なんだあいつ、諦めたのか?」
「いえ……あっちは……ローズさんの武器が!」
大剣ゼロエネミーの方に。
しかも攻撃ではなく大口を開けて食べようとしている!?
まずい!
「間に合えっ」
もどってきてゼロエネミー!
小型化しつつ水を切ってゼロエネミーを逃走させる。
時間は稼げている今だ。
「全員密着させるよ!」
「[うん]!」
剣ゼロエネミーを全力逃走させつつ……
私達は別方向で接触するように固まる。
テリアンコウ結構速いな!
かなりの勢いで剣ゼロエネミーに迫ってきている。
素早くはないが速い。
とにかく小回りを利かさないと。
こういう時に空魔法"ファストトラベル"って意外に時間かかるよなあって実感する。
この待ち時間が1番の厄介さ。
何度もテリアンコウの噛みつきをゼロエネミーが避け……
「ココオォ!」
「うわっ!」
追いつかれた。
そして噛みつかれる!
ガッチリと剣が牙に挟まり……
ズルリと形が変わって液体のようになり抜け出す。
これが強いんだうちの相方は。
「ングッ?」
「よし……そろそろ!」
剣ゼロエネミーを手元に呼び戻し……
振り返ってこちらに来るテリアンコウ。
大口を開けてくるところで……
「わああぁー!」
「間に合えっ!」
「離れるなっ」
「飛ぶよ!」
空魔法"ファストトラベル"!
「ッはあ!」
私達は"シールド"の箱ごと陸に放り投げだされる。
転がった後に……
崩れ去って消滅した。
ここはピヤアの基地内。
急いで飛んで来たがちゃんと全員いるようだ。
もちろんゼロエネミーも無事。
「はぁ……はぁ……よかった……」
「逃げ切れたか!?」
「はあぁ、なんとか陸に来ましたね……」
[距離、離れたまま。見失っていると思われる]
とにかく全員に治療やら休憩回復を急がねば。
ただとにかく気になるのは……
「なんであのテリアンコウという魔物が、神の力を放っていたんだろう……?」
「主、その神の力というものは普通の魔物は持っていないものなのですか?」
「うん……よく観たけれど、なぜか神ではなかった気がする」
神かと思ったけれど……
よく文字を読み返したけれど神ではない。
神使らしさもなかったからな……
そもそもなんだか理性がトンでいたというか……
ただ野生な魔物と言うには変な感覚だった。
タガがハズレているようにも見える。




