百一生目 埋没
探索続行中。
海の中ではなかなか探索速度が上がらず……
地形が入り組めばそれだけでかなり時間が取られる。
フォウが指し示すのはあくまで方角のみ。
道は私が見つけるしか無い。
"鷹目"に"千里眼"そして"見透す眼"や"絶対感知"をフル活用。
私の脳がフル回転して情報をあさり……
念力で動かしていく。
魔法で作られる酸素を高速で消耗してゆき携帯食をむしり食べながら進む。
いやあ……なかなか疲労がすごいね!
「主、そろそろお休みになられますか? もうかなり長い間こうですよね」
「ああ、大丈夫大丈夫、楽しんでやっているから一応」
「そうですか……」
アヅキが困惑していたがしょうがない。
私がかなり必死に作業しているのを見ているからね……
そもそも場所が悪い。
なんで海中なんだ。
水中には嫌な思い出は多い。
それで否が応でも緊張感を高める。
「もう何分、何時間たったんだ?」
「ちょっと……わからないですね」
「暗闇が時間間隔も狂わすんだね」
「なんだそれ、嫌らしいな……」
「夜とは違い、目慣れしてもまるで光が拾えませんね」
[カラスなのに夜の目慣れをするのかな]
「下っ端たちは難しかったが、俺レベルとなるとそのぐらいはこなせる。ただのカラスではないからな」
[なるほど]
何気ない会話をしつつ……
たまに魔物と出会い……
そして私や誰かが食事をとり水を飲むだけ。
さすがに気が滅入ってくるね……
魔物が襲ってこなければまだどんちゃん騒ぎしていても良いのだけれど。
そうもいかない今日このごろ。
さて……そろそろピンチ以外の変化がないととてもやり続ける気力感覚を保たせられないぞ。
[んん]
「うん? どうしたのフォウ」
[いや。断言はできないけれど、もしかして距離が近づいたのかもしれない]
「そりゃあ、ここまでずっと来ていて距離が縮まらなかったら、そりゃ嘘ってもんだろ……」
[そういうことではなく。なんだろうか、説明をしづらいがそういうことがあったとだけ、とりあえず報告した]
「うーん……? なんなんだろう」
「まあ、ゴールが近くなるのは良いことですよ、主」
まあそうかなあ……
アヅキはアヅキで明らかに気を使ってくれている。
みんな体力をかなり削っているからね。
そして。
私を含む明らかに全員ダレた頃に。
フォウが突然ガタリと立ち動いた。
「……ん? どうしたの?」
[これは、近い。すぐそこだ]
「なんだと!」
全員フォウの言葉に飛び起きる。
箱たちはみなボロボロになっていてここまでの運行を良く助けてくれた。
やっとゴールだ……!
明かりが照らした先は……崖。
けれど近いということは……
"絶対感知"!
お……この先にいけそうな洞窟。
横穴があるな。
この先に有るものはなんなのだろうか。
細い横穴を通って行き……
枝分かれした道の先へ。
その先に見えたものは……開けた場所。
おそらくは崖の向こう側か。
ここのどこかにあるはず……
「フォウ、どこにあるかわかる?」
[方角はあっている。もう少し]
「ん? んー?」
「おや、主……あれは」
私達が行く先。
そこに見えだしたのは……
砂に埋もれし何か。
わかるのは輝く宝石のような鉱石部分と……
輝く光。
何よりも。
「すごい。こんなに神の力が……!」
[凄まじい力。本物の宝石剣かもしれない]
「よっしゃ! 早速回収しようぜ!」
ゴールとなればみんなテンションが持ち直す。
何せこれでやっと拝めるのだから本物が。
まさかこんなに輝いているタイプの宝石剣があるとは。
「全体はどんな感じの剣なんでしょうね!」
「主のイバラすら潰す水圧にも耐えうる剣……なるほど、探し求めるものなだけある」
「よし、ひっこ抜こう」
私が少し近づき念力の力をこめる。
宝石剣を引っこ抜くように……!
[疲れた]
「ずっと方角を示し続けてたもんな、おつかれだ」
「お、もう少しで引っこ抜けそうです……!」
「ようし、もう少し……!」
念力でゆっくり慎重に抜いていく。
結構重いな……!
水圧の影響か?
宝石剣がゆっくりゆっくり砂場から出て……
刀身がキラリと輝き……
……
「ん!?」
「待った! 何が――」
「「わああああああ!?」」
砂場が急速に持ち上がる。
その範囲がやたら広い!
デカイ……!
とんでもない質量がどんどん持ち上がるのにいまだその全貌が見えない。
緊急退避!
一気に私達は距離をとり……
埋もれている宝石剣だと思ったものは……
なにかの体の一部。
急速に開いてくる口が吸い込もうとしてくる。
大きな魚影が私達を襲いこんできた!