九十四生目 海底
青の水場もさらに深く進んでいく。
狭い通路……流れる水場……沈む扉。
開かない扉に翻弄され水が入ってきて沈みかけて。
ひーこら言いつつやっと下に行きつつ別の建物へと移動した。
泡の回廊を通り……今度はねじれ廊下。
「なるほど……主、この迷宮は大変ですね?」
「うん。今私もかなり実感しているところ……」
「力でゴリ押しできれば楽なんだがな、ローズの魔法もうまくいかねえみたいだしなあ……」
当たり前だが空魔法による"ミニワープ"を含む移動は考えた。
しかし……うまく行かない。
生きている金属の壁をうまく乗り越えることはできなかった。
まあこうして歩いて探索する楽しみは多いので良いのだ。
水がなければもっといいのだが。
ねじれ廊下は道がわかったときが面白い。
こうして私達はドンドン進んでいく。
次に赤の遺跡。
そうして緑の植物園。
その次に青の水場が来て……
その先の泡の回廊にて。
「あ! みんな、見て!」
「なんだ? お、まさかここは!」
[宝石剣反応が近いね。つまりはここが底だ]
ついにはたどり着いたこの地。
こんな光すら届かないところに海藻が下から立ち並び荒々しい岩石に植物のように生えている魔物もいる。
今跳ね跳んでいる回廊の外は陸の上にいる者からすれば死の世界。
「で、宝石剣って具体的にどこらへんにあるかはわかるのか、フォウ」
[むむむ。はっきりとはわからないが、ここのもっと奥にある。建物を経由して進むのは難しいかもしれない]
「じゃあ海中遊泳か……」
ジャグナーは腕を組みつつうなり飛び跳ねる。
魔王が両手を伸ばし探っている方向にあるらしいが……
その方向に何も見えない。
きっとあの暗闇の向こう側にあるのだろう。
"千里眼"て探ってみるかな。
「そうだみんな、水中には普通に行くことは出来ないからね」
「そうなのですか主?」
「色々難しい事はおいておくこととして、普通に出たら私達は多分水に潰されて死んじゃうから」
「水に潰される……あまりイメージがわかないが、それほどに重いのか、水が」
「だいたいそうだね」
アヅキやジャグナーは特にわからないだろうからここらへんの話は大事だ。
ここが海の底だとして果たしてどこまで負担がかかるのか……
想像がつきにくい。
「ええっ、ではどうやって行くんですか? なにか戻って準備を……」
「いや、こうなったときの為の準備はしてきているよ。いつ水中に放り出されるかわからないし」
「え、そうなんですか!」
バローくんの言葉を聞きつつ扉前まではね終える。
扉の奥にはいかず……
空魔法"ストレージ"から必要な品を次々と出した。
「うわあ、凄い! 水の中に僕たちが浮いている!」
「よし……うまくいった」
私達は"ミニワープ"で海中に飛び出す。
ただし私達が濡れることはない。
とうぜん潰れることも。
様々な材料を使い作った海中移動用の箱。
四角く透明できらめいているこれは一種の強固なシールドだ。
もちろん普段水中で活動するためのセット……酸素補給などは別でかけておいて。
この中ならば私たちは水に潰されることはない。
通常の光魔法"シールド"とは違い水圧と内圧を均衡化する力もあり様々な細かい要因をクリアしてくれている。
さらに推進力としては私が"獣の賢者"で念力を使う。
ようは操縦関係を私頼りになるので集中しないと……
攻撃もかなりしにくいからね。
物理系はだめで魔法系はギリ大丈夫。
破壊されたら死ぬので試すのはやめたほうがいい。
近くを生物が通るだけでヒヤヒヤする……
「お、おお……ほんと全部他者に任せるしかないってのは、すごく居心地が悪いもんだな……」
「ジャグナー、別にお前は待機で良かったのだぞ。俺と主だけで問題はない」
「何いってんだ、的と耳は多いほうが良いんだろう」
ジャグナーの言う通り私が動かすのも含めても数が多いほうが良い。
接敵イコール死でもないし接敵発見と攻撃分散が重要。
……それにしても念力で動かすの大変。
まだまだ私が慣れていないのもあるけれど念じて物を正確に動かすというのが苦戦する。
なんというか手で1つ1つ意識せずに行えることを一回一回考えてやらなくちゃならない。
さらに形がなくて魔力粒子の操作になるから推進方向に動かすために力を動かすというのが難しい……いや?
そうだ。
もしかして前に粒子を運んでいくよりも……
後ろに回転させながら排出するようにすればいけるか?
念力を掴んで動かすのではなく……
水流の方に干渉して……と。
お……結構速度出せそうだ。




