九十三生目 黄塊
赤の遺跡でどんどん下への道を開拓中。
最初赤の遺跡で下を目指すのは無謀かと思ったが意外になんとかなりそうだ。
攻略のヒントを見つけたからだ。
「走って!」
「うおっしゃ滑り込み!」
ジャグナーが泡の回廊にスライディングし全員入ったのをチェックして扉を閉じる。
よしよしこれで逃げ切れた。
扉の方からドンドンと音がするが扉は壊れる気配はない。
イバラでしめておけば突破される心配はないし……
なにより彼らは泡の回廊まで来ようとはしない。
これが重要な攻略要素のひとつだ。
「ふぅ」
[しばらく戦うと数が多くなるみたいだ]
「とりあえず今回、下がれるだけ下がれましたよね主」
「多分そう」
そしてこれはどこの建物でも共通だが……
建物で1つの進入経路で降りれる数は限度がある。
なんとなく法則は見えそうだがとりあえず赤の遺跡は多い。
泡の回廊は本当に暗くなってきた。
外のにおいだなんてわからないし音もこの中までは深く伝わらない。
不気味でいつ壊れるかわからずあまりいたくないところだ……
ただ逆に言えば……
「……そろそろ、底が近いのかな」
跳ねながらバローくんが言葉をこぼす。
まだ底は見えないがそもそも暗いせいで近くが底でもわからない。
ただひとつ言えるのはそれほどまでに下ってきたということだ。
赤の遺跡で一気におりれたからまた別の進入口探したいな。
泡の回廊を跳んではねて進んだ先は……
おっ……黄色い部屋。
ここは初めてだ。
「なんだ……? 魔物がいない部屋……?」
「初めて来ましたね……」
[ここはなんだろうか]
「ここは、黄の小部屋……基本的には行き止まり。けれど……当たり」
ここはこの部屋だけしかないという特別性がある。
もちろん階段もない。
しかしこの部屋は冒険者としては……あたりだ!
「どういうことだ?」
「主、あれは……?」
「うん。滅多にこれないこの建物にある、物がすごく貴重なんだよね」
奥にあるのはキラキラと輝く山。
この部屋から排出されたものと考えられている。
貴金属や鉱石たちの集合体だ。
[なるほど、金属でも代謝させると、そういう部分もいるな]
「……? どういう……あ、でもこれすごい、金も含まれていませんか?」
「そうかもなあ、お宝だなこりゃ、ニンゲン界だと確か高く売れるのも多いんだろう?」
魔王が言いたいことはまあなんとなくわかったから置いておくとして……
未精錬ながら迷宮素材のなかでもかなり高額になりそうなものが揃っている。
だからここの探索は冒険者たちの間でもなかなかやめられないと聞いていた。
詰められるものは詰め込んで……撤収。
泡の回廊に戻り……
「いやぁ、定期的にくれば大儲けになるんじゃあないですか?」
「いやあ……」
バローくんの気持ちはとてもよくわかる。
しかし……
泡の回廊を渡り終えまた赤の遺跡に戻ってくる。
全員身構え……
「……あれ? 後ろの扉が?」
勝手に完全にしまり……
なにか大きな音がする。
少しするとまた扉が開くようになり……
「泡の回廊のつながる先が……変わっています!?」
「よし、戻ろう!」
「お、おう」
[なるほど。うまい話はないわけだ]
赤の遺跡敵とは戦わず戻る。
そう。
残念ながら泡の回廊はつながる先がよく変わる。
そして黄の小部屋には1度いくとすぐルートを変えられまたは行けなくされてしまうのだ。
「ああ……一攫千金を何度もとは、楽には出来ないんですね……」
「バロー、オホンッ! お前子どものはずだがそんなに金はいるのか……? なにか、こう困ったことがあるなら、この私――」
「あ、いえ。研究をやるためのお金っていくらあっても溶けていってしまって、安定的なお金が欲しいんですよね」
「――そ、そうか」
アヅキはこんな調子でバローくんへなんらかのアプローチをしようとして……
ごく普通に対応され終わるということが多い。
確か種族的にいろんな他種族の男の子に興味が強くてアヅキは特にバローくんを気にかけている様子はある。
さっきもわざわざ後尾にして攻撃を防いでいたのはさりげなくバローくんを守るためだろうし。
ただまあ今の所空振りではある。
今バローくんは研究に夢中だから余計にね。
泡の回廊を渡り終えた先は……げっ。
青の水場じゃないか!
「ううむ、ここも下へ行く道はちゃんとあるのでしょうか……?」
「ピピイ」
「あっても浸水していそうだな」
「めんどうだけれど、進んでいこう」
凄く嫌なんだけれどいくっきゃない。 でなければまた水が向こうからやってくる。
私達はさらなる深層へと足を踏み入れた……